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いいこと言う!ホリエモン~夏の読書感想文 [読書するなり!]

 学生、生徒の皆さん。夏休みの宿題は終わりましたか?
 
 やはり、読書感想文、残っている人が多いでしょうか?

 さて、私の夏の読書感想文、これ。

 堀江さんの本を読んだのは初めてですが、実に、本質をつく記述が多く、(本当に意外にも、失礼、堀江さん)ためになりました。

 私からすると根本的な価値観が違う部分はあるのです。しかし、価値観の部分を離れて、それ以前の、物事の本質をストレートに捉えて、(いわれてみればごく当たり前という)論理的・本質的な記述をしておられるところは、本当に感心しました。


金持ちになる方法はあるけれど、金持ちになって君はどうするの?

金持ちになる方法はあるけれど、金持ちになって君はどうするの?

  • 作者: 堀江貴文
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2013/04/26
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



 で、私は仕事の中で「投資」被害などに関わってきたので、堀江さんが、Q&Aコーナーで、「投資」「資産運用」で回答しておられることを紹介します。

(引用)

Q よく「貯金はしない」とメールや著書等で述べられていますが、「一般人が貯金するお金で株などの投資をしてきた」ということでしょうか。もしそうなら、資産運用を始めた時期と、その時行った運用の種類(投資信託など)をぜひ知りたいです。

A 私が「貯金はしない」というのは、稼いだお金を意識的に貯蓄にまわさないということで、使い切れなくて貯金で貯まっているお金はもちろんありますよ。
 で、いわゆる普通の資産運用は大して儲からないので、基本的に手元流動性で必要な額以外は新規事業投資に全部まわします。新規事業は自分でやることもあるし、別の人に任せることもあります。これが一番期待リターンが大きいですね。
                                                        (引用終り。太字下線は村上による。)

 要するに、自分自身は、銀行や証券会社に任せて運用するという資産運用は基本的に得策と考えていない、というようです。

 自分で事業をやって増やす方が良い、という大変明快な考え方です。

 次いきます。

(引用)

Q 会社員35歳です。3年後に独立する予定です。現在の会社は10年在職しているので住宅ローンが簡単に組めますが、これから先は難しいということもあり、今のうちにマンションを買おうか悩んでいます。たまたま、都心に一人暮らし用のマンションが売り出していて立地的にも資産形成するうえでもメリットがあると思いますが、転職・独立という不安定な時期に住宅ローンを組むのはどうなのか?というのもあります。
 堀江さんは賃貸派かとは思いますが、現在のこの状況で買うべきか、買わないべきかアドバイスをお願いします。

A てか、そもそもなんでわざわざ不動産という固定資産に、現金のような流動性の高い資産からチェンジしようとするのかが理解不能です。おそらく、不動産は値上がりするとでもおもっているのでしょうか?ファンダメンタルズで言えば、高齢少子化日本では経済発展は見込めず不動産が大幅に値上がりする要素はあまりありません。
 そもそも資金力に乏しい個人が大手の不動産取引業者に勝てるはずもなく、本当の優良物件はあなたのような一介の個人のところにまわってくるわけがありません。
 お金を使ってしまうのが嫌で貯蓄したいのなら、普通に定期預金でもしていたほうがマシだと思いますよ。

                                                    (引用終り。太字下線は村上による。)

 全く同感です。
 
 金儲けの「極」にいるような堀江さんがこのようにズバッと言い切ってくれることは、大変心強いです。

 堀江さん自身は、金儲けOK(これは村上も同意)というのはもちろんのこと、そのための手段の選択について、私(村上)は間違っていると思うことでも「別にいいんじゃない」という感覚でこの本も書かれているように思いますから、私と価値観において大いに違いがあります。

 ですが、「金儲け」そのものについて、儲からないものは儲からない、とハッキリ言っています。その点で、誠実な方だと思います。
 ここが、普通の経済本と随分違うところです。
 「金儲け」社会の本質(おそらく堀江さん自身分かっているであろう、その「破綻した」あるいは、そもそもの矛盾を抱えた本質)に言及することにも、全く躊躇いがありません。
 
 
 投資被害、投資トラブルは後を絶ちません。(もちろん、ライブドア事件は大トラブルでした。)
 
 だから、資産をお持ちの方には、ぜひ、堀江さんの本を読んで、堀江さんの本音、堀江さんの語りから垣間見える「金儲け」社会の本質を知って、資産運用について考えてみていただければ、と思います。

 
 自分が投資しようとしているもの(株でも、投資信託でも、デリバティブ商品、仕組債…でも)が、

「本当に自分の得になる仕組みになっているか(なるはずがあるか)」

「誰か他の人が得をするようにできているのではないか(そういう風に設定されているのではないか)」

「内容をわかっているか」

「本当に買わないといけない必然性があるか」

ということを、じっくり考えて頂ければ、と思います。

 
 「いつ買うの?今でしょ」というノリに対しては、「そもそも、いつまでも買わないという選択肢がある」ことを忘れないで下さい。

 そして、ホリエモンおすすめは「普通に定期預金」であることを覚えておかれたほうがいい、と思います。


 その他でも、

「金持ちってなろうと思ってなれるもんじゃない気がする。お金持ちというのは、あくまで結果。」

「『文系だから知りません、できません』というのは単なる言い訳。」

などなど、本当にそうだなあ、と思う記述がたくさんでした。

                                       村上英樹(弁護士、神戸シーサイド法律事務所
 

「舟を編む」(三浦しをんさん著) [読書するなり!]


舟を編む

舟を編む

  • 作者: 三浦 しをん
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2011/09/17
  • メディア: 単行本



 久しぶりに、読書感想文です。

 この本、カバーがいいです。
 辞書風のカバー。

 内容は、新しい国語辞典を編纂するために心血を注いだ人たちの物語。
 「舟」とは国語辞典(「大渡海」という辞書のタイトル)のことです。
 うわ、地味ー、という声が聞えてきそうですが、辞書を作る人たちの熱い心や笑える日常がコメディタッチで描かれている、笑いあり感動ありの小説です。

 それますが、「大渡海」という辞書のタイトルも素敵です。
 数学の参考書も、私は、「チャート式」(チャートは「海図」の意味)が大のお気に入り(というか、チャート式が数学勉強のほぼ全て)でした。
 海、舟にちなんでいるのがいい。「世界に漕ぎだそう」という積極的な気持ちになります。

 この小説、映画化されます。間もなく公開で、主演は松田龍平さんや宮﨑あおいさん。GWあたりに観に行こうと思っています。

 私も、家庭の事情で、今年何十年かぶりに国語辞典を買いました。
 三省堂「新明解国語辞典」ですが、この辞典は知る人ぞ知る、面白い解説オンパレードの大変「癖のある」辞典です。
 この小説中でも紹介されますが、新明解の「恋愛」などは面白く、「特定の異性に対して他の全てを犠牲にしても悔い無いと思い込むような愛情を抱き、常に相手のことを思っては、二人だけでいたい、二人だけの世界を分かち合いたいと願い、それがかなえられたと言っては喜び、ちょっとでも疑念を生じれば不安になるといった状態に身を置くこと。」(確かこれは第7版。版によって多少違いあります。)とあります。
 辞書って面白いものだなあ、と思っていた矢先に、この小説の存在を知り買って読むに至ったのでした。
 
 言葉への扱いは、時代の進歩、特にネット社会の進歩のせいで、一般にはどんどん「軽く」なっている感じは否めません。
 が、一方で、言葉に対して物凄く思い入れのある人が活き続けている(小説中にも、現実の中にも)ことは、なんだかほっとさせられます。

 対して、私の仕事の日常。特に、「裁判」の場では、結構、「言葉」にとっては無慈悲な場面が多いです。
 つまり、ぴったりくる「言葉」を選びに選んだとしても、「そんなの関係ねえ」(もう古いですか…)とバッサリ斬られてしまう場面が非常に多く、言葉に対するみずみずしい感性を持ちつつ仕事をすれば、心痛むことがしょっちゅうです。

 それでも!言葉を使って仕事をする私は、言葉にとって無慈悲な現実のなかで感性を殺すことなく、やはり、丁寧に、よりふさわしい言葉を選ぶ存在でありたい、とこの本を読んで思いました。

                                  村上英樹(弁護士、神戸シーサイド法律事務所

「国語が子どもをダメにする」(福嶋隆史さん著) [読書するなり!]


国語が子どもをダメにする (中公新書ラクレ)

国語が子どもをダメにする (中公新書ラクレ)

  • 作者: 福嶋 隆史
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2012/08/09
  • メディア: 新書



 今年も最後になりました。
 今年一年、色んな方にお世話になりました。ありがとうございました。

 法律問題などと直接関係がないのですが、最近読んだ本の中で、この本が印象に残ったので、ご紹介します。

 私は弁護士になる前、関西のとある有名進学塾で国語の講師のアルバイトをしていました。

 自分なりに工夫して指導したつもりですが、真面目に考えれば考えるほど、置かれた状況の限界にぶち当たりました。

・ テスト問題を題材としたテキストで、文章の流れを黒板で図解する+何問かの設問を解く、というような授業がモデルとされているが、これで生徒の力を伸ばせるのか?

・ そもそも日本語を構成する力を自分で培う機会がないのではないか。それなくして、文章の正確な読み取りをするのも難しいのではないのか?(特に、小学3年や4年の低学年で、テスト問題を題材としたテキストで、普通に読解の一斉授業をして、一体どれだけのことが身につくのだろう?)

など色々。

 自分なりに、塾指定テキスト等のやり方をはみ出して、勝手に、記述指導のようなことを試みたこともあるのですが、毎週ある学習範囲を確認する「テスト」の点数に直結しないため、多くの保護者にも余り歓迎されませんでした。
 実際、成績によってクラスが変わり講師も変わってしまうため、私だけが独自の工夫をしても、かえって混乱を来すだけの状態でしたので、勝手にやった記述指導も長く続きませんでした。

 私自身は、落第した中学受験でも、合格した高校受験、大学受験でも、どれをとっても国語で苦労したことは一度もありませんでした。
 中学入試の国語の読解問題をはじめて見たのは小6の秋ですが、はじめから大体の設問には答えることが出来ました。
 これは自慢でも何でもなく、田舎育ちで、塾も周りになかったために、入試問題を解くという機会がなかったがために、別の形で、(時間も余るほどある中でじっくり)日本語の読み書きの力をつけていたから、そして結果的にはそれが良かった、ということだったと思っています。
 新聞の熟読したり、コタツに入って国語辞典、漢和辞典を眺め回したり、(テレビは1日1時間ルールというのがあったので結果的に)たくさん本を読んだりしました。
 田舎の学校でした。特に、小学1,2年はクラス10人の少人数でした。先生は、生徒の「書き」についても、相当丁寧に見てくれたと思います(その余裕があったということでしょう)。
 3年以降でも、家で「書きもの」をする時間も機会もたくさんありました。
 今思うと、今の都会の子より、日本語を使う力を培うという意味では恵まれていました。

 ですので、私が塾講師時代抱えていた矛盾は、自分が国語力を身につけてきたプロセス、大事だなと思う要素、と、塾での指導形態の違いでした。
 言ってしまえば受験の国語についても、「国語の入試問題に触れないで違うことをじっくりやるほうが、結局は早道なのでは」という思いです。
 まあそんなもやもやをかかえたまま大学卒業と同時に司法修習生になり、国語講師はそこでやめました。

 そういう経緯があるので、この本が書店にあったとき目に止まったわけです。

 かなり辛口な本ですが、著者の福嶋さんの言われること、私なりに理解したところを粗くまとめると、

・ 文の型を使いこなす基礎トレーニングを子どもがきっちりやる機会こそ大切だということ

・ 入試の国語問題には、読み書きの能力を正確に測ることとの関係で、意味が余りない、あるいは、邪魔になる設問が多いということ(たとえば脱文挿入や抜き出し問題などに多い)

・ 「国語力」というが、基礎となるのは、論理的思考力そのものであること

など、その通りだなあと思いました。
 読んでみると、私が国語講師時代に感じていたこととかなり一致するようにも感じました。  

 そして、日本の国語教育を変えたい、という熱い思いを語っておられるので、著者の福嶋さんには大いに期待したい、と思いました。
 私としては、これからの子供たちのことを思うと、中高大の国語の試験問題の出題者が、手っ取り早い「ふるいわけ」というのではなく、その出題を通じて(またその試験問題が教材となることも見据えた上で)生徒を伸ばすことを考えた設問を作るべき(これは一種の愛情の問題であるとさえ思う)、その視点で一から自校の出題スタイルを練り直して欲しい、という思いが強いです。

                       村上英樹(弁護士、神戸シーサイド法律事務所


                 


 

幸福と法(「と」です。) [読書するなり!]


幸せを科学する―心理学からわかったこと

幸せを科学する―心理学からわかったこと

  • 作者: 大石 繁宏
  • 出版社/メーカー: 新曜社
  • 発売日: 2009/06
  • メディア: 単行本



 神戸学院大学後期の講義を担当しています。
 ようやく終盤に入り、毎週授業のネタを準備するのに追われている状態も、ほぼ終りが見えてきました。

 先週は、

「法が人の幸せに寄与するか?」

をテーマに講義を行いました。

 そこで、第一の疑問が、

「幸せとは何か?」

ですので、冒頭に紹介した本の内容を参照していく、ということからスタートしました。

 この本は、人が幸せを感じることと関係ありそうな諸要素、つまり、


社会的地位
家族
結婚生活
健康
などなど

が、実際どのくらいのパーセンテージで幸せに繋がっているのか、ということを分析した本です。

 例えば、金、をとってみると、

一定水準までは金があることと幸福度にはストレートな関係がある。

しかし、一定水準を超えると、金があることによって必ずしも幸福度が大きくプラスになることはない。

などという分析がなされます。
 ここから、ごく単純に言えば、法が金の有無という点で人の幸せに寄与するならば、「貧困対策には法の手当がなされなければならず、標準以上に人が大もうけすることに法が手助けをしても仕方ない」という見方も出来る、といった視点も導かれます。

 そんなわけで、紹介した本は、諸要素別にアンケートによる幸福度の数値を分析したことを中心に、幸福と関係する項目について色々と考察した本なので、意外な発見があったりして面白かったので、「幸せって何だっけ?」(何だっけ、ポン酢醤油のあるうちさ♪って古いCMを思い出しました)ということに興味がある方にはお勧めです。

 中でも、まさに至言だなあ、と思ったのは、

他人との比較は幸福の毒 

でした。

 法との関係は直接的でなくなってくるかもしれないのですが、「他人との比較」をどんどん強要してくるのが現実の世の中であるという問題点を考えなければならない、と思いました。

 「わたしは今のままで十分幸せだよ」という在り方はなかなか許されず、例えば、

「この冬流行るコートはコレ!」といったあからさまな「他人との比較」で「負けない」ように意識づけする広告

「我が子を勝ち組にさせる方法」といったあからさまな「他人との比較」で「負けない」ように意識づけする雑誌のタイトル

などが溢れ、「個人の尊厳」(これは、「私だけ」の尊厳、「我が子」だけの尊厳を意味しません。みんな1人1人の尊厳です)を謳う憲法の精神とは全く矛盾したもので溢れかえっている、そこに我々青年は鋭く違和感を覚えなければならない!と言いたいと思ったのです。

 このような「他人との比較」をあおり売上げを上げようとする行為を「不正義」とか「不道徳」といいたいわけではありません。
 私が思う正義や道徳はありますが、まあ、正義や道徳は人それぞれであってよいかもしれません。
 ですが、こういう行為は人を「幸福になる」ことから遠ざける行為である、ということが、どうやら本質のようです。

 「法と裁判」の講義ですが、こういう話になると、

法で規制することの出来ない、社会の問題点

を示す内容となるわけです。「我が子を勝ち組にさせる」タイトルは、平等原則(憲法14条)の精神に反しているから、発行禁止!!なんてできるわけないですよね(これは、憲法21条、表現の自由)。

 が、実はこれが大切なところだと思っていて、法学部では、ややもすると、

法によってできること(「民法」「刑法」…の学習の殆どはこれです。「刑事政策」なると法で「できそうなこと」、少し範囲が拡大します。)

ばっかり勉強しがちになりますが、

法で解決できること+できないこと

に触れなければ、法の理解は本当のものとはいえません。

 
 法で何でも解決できる

の思い込みは、大変怖く、

 法律によって、自分のよかれとおもう価値観を押しつけること

などという発想にも繋がります。

 そうでなはく、

道徳やマナーの範囲  たとえば、電車内などで余り化粧をしないほうがいい



法の範囲         人の物を盗んではいけない

とには区別があって当然であり、法は、「最低限互いに守らなければ、お互いの権利や自由が傷つく。」というものに限って作られ機能すべきである、ということが大切だと思われます。

 つまり、

野球のショートは、ショートの守備範囲でしっかり守れば良く、たとえば、ライトの守備位置に走っていってフライを捕りに行ったりする必要はない

のと似て、

法は、守備範囲外にでしゃばらなくてもよい(でしゃばるべきでもない)が、法の守備範囲ではしっかり機能すべきである

ということも大切なことです。

 もちろん、「法の守備範囲外」のことは、法による規制ではない方法で、どのようにしたら自分や他人が幸福に暮らせるか、をみんな各人が考えなければ仕方ない、というわけです。
 例えば、法の問題ではなく、国の予算を何に使うかなどという政策の問題というようなことはこの例です。
 
 まとまらない記事になりましたが、ともかく最初に紹介した本はなかなかお勧めです。
 講義の参考にしただけでなく、私の日々の在り方についてもヒントを与えてくれた本です。

                                        村上英樹(弁護士、神戸シーサイド法律事務所





 

「社会を変えるには」(小熊英二著、講談社現代新書) [読書するなり!]


社会を変えるには (講談社現代新書)

社会を変えるには (講談社現代新書)

  • 作者: 小熊 英二
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2012/08/17
  • メディア: 新書



 タイトルに興味を持って買いました。

 2011年の福島第一原発事故があって以来、以前よりずっとデモも盛んになりました。

 ですが、私は、基本的には、議会制民主主義であれば、議員選挙を通じて活動するとか、議員への陳情を行うとか、そういう活動でなければ余り効果がないのではないか、とデモに対しては一歩引いて見ているところがありました。

 そのことについて、この本を読んで随分考えが変わりました。

 この本は、「こうあるべき」論を書いている本ではなく、民主主義の歴史や、運動の在り方などについて、色んな視点を詳しくわかりやすく解説されていて、今ある議会制民主主義も唯一完全の制度ではなくて、長所・短所を持った政体の1種類に過ぎないという位置づけがよく分かるものです。

 そのことから、選挙を通じて多数派を形成するという筋道以外にも、民主主義を体現する手段を国民はたくさんの種類持っていたほうがよい、という風に思えるようになりました。

 また、何かに目まぐるしく動く現代では、旧来の固定化した図式、たとえば、「資本家」対「労働者」とか、「右」対「左」とか、そういう枠を中心に物事を判断する方法が有効でなくなり、人の立場も流動的であるし、対立の構図で優劣を争う姿勢では社会を良く変える力になりにい。
 立場の違いを超えてより良い考えを探求する(「弁証法」的とも言える)在り方がより重要ではないか、ということなど、なるほどと思えることが多い本でした。

 速効で「社会を変える」ことができる、というわけではない、という感じの本です。(本当は、タイトルからそれをちょっと期待して買ったのですが。)
 しかし、地道に、一歩ずつでも社会を変えることは出来そうな気がする本で、緩やかに明るい気持ちにもしてくれる本でした。

 大変な時代なので、つい思考が極端に走ったり、一面的な見方になってしまったりしがちなものだと思います。それだからこそ、この本のように、価値観の多様性も大切にしつつ、冷静に一歩ずつ世の中を良くしよう、という考えを持てるのは大変重要なことだと思います。
 どなたにもお勧めの本です。興味があったら、皆様も是非。

                                    村上英樹(弁護士、神戸シーサイド法律事務所

 

夏休みの宿題~最後のヤマは読書感想文!? [読書するなり!]

 ブログの記事のアクセス数を見ると、ここ1週間くらい、なぜか突然、

夏の読書感想文!~オシムの言葉http://h-m-d.blog.so-net.ne.jp/2006-07-28

へのアクセスが急増しているではありませんか!

 過去記事で、突然、アクセス数が増える現象はときどきあって、「季節モノ」があることがわかりました。
 
5月は、灘校文化祭関係の過去記事(灘校文化祭 http://h-m-d.blog.so-net.ne.jp/2011-05-06

だったのですが、ここへきて、上にあげた記事。

 きっと、夏休みの宿題が大詰めを迎えて、そして、最後に残りがちな、読書感想文というヤマを前にして、ともかくも「読書感想文」というキーワードで検索してみたお子さん、お母さん、お父さんが想像されます。

 大変申し訳ないことに、「夏の読書感想文!~オシムの言葉」の記事は、読書感想文の書き方を解説したものでもなく、また、たぶん、本当の「夏の読書感想文」を書くときの参考にもあんまり…

 ましてや、「最後の手段!!」とかいって、この記事そのものを丸写しで原稿用紙に書いて学校に提出した場合、その後がどうなるか…「グッドラック」と声を掛けることしか、私にはできません。

 ただ、何の参考にもならないかもしれませんが、ともかくも、「オシムの言葉」は良い本ですよ。オシム監督の代表サッカーチームがその後どういう風に発展するのかがもっと見たかった、という思いは今もあります。

 そういえば、最近読んだサッカーの本はこれです。 



 
宮本式・ワンランク上のサッカー観戦術 (朝日新書)

宮本式・ワンランク上のサッカー観戦術 (朝日新書)

  • 作者: 宮本恒靖
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2012/06/13
  • メディア: 新書



 元日本代表キャプテンの宮本恒靖選手(ガンバ大阪やヴィッセル神戸に所属、日韓W杯のときはフェイスマスクでプレーした)が書いた本ですが、面白かったです。

 サッカー選手の真価は、ボールを持っていない時間(1選手にとってみれば、90分のうち、2分だけボールタッチしていて、88分はボールを持っていないらしい)の動きにあるので、そこに注目したら、サッカーの見方が変わる、ということなどが書いてありました。

 なるほど、ボールがないときに、どういう準備をしているか、敵選手とどういう駆け引きをしているか…奥が深いんだなあ、と思わせられました。

 (ボールを持たない)88分の動きが重要、これはいろんな事に通じるんだろうなあ、と思いました。
 
 私の仕事で言えば、直接「事件」に関わるときに一生懸命やるのは当たり前ですが、それ以前の日頃の勉強とか、体調や感覚をよい状態に保っておくとか、自分だけでなく他の人が良い働きができるように何かする、とか色々。

 というわけで、今年の読書感想文は以上でした(私は、学校に提出しなくて良いぶん手抜きです。学校に提出する生徒さんたちは大変だと思いますが、まだのひとは、無理ない範囲で、できるだけなんとか仕上げて下さいね!)。


                                  村上英樹(弁護士、神戸シーサイド法律事務所

 

 

弁護士津久井進先生著「大災害と法」 岩波新書~夏の読書感想文 [読書するなり!]


大災害と法 (岩波新書)

大災害と法 (岩波新書)

  • 作者: 津久井 進
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2012/07/21
  • メディア: 新書



 今年の私の夏の読書感想文はこの本です。

 弁護士津久井進先生は、兵庫県弁護士会の先輩弁護士です。
 
 去年の東日本大震災が発生したその日から震災復興のため超人的な活動を続けられています。(さらにすごいところは、超人的な献身的な活動をしながら、私がたまに出会っても、すごく明るく、ジョーク満開で、日々の先生自身の大変さを微塵も感じさせないところです。)

 この本はタイトルの通り、「大災害」に対してどのような法律があるか、その歴史から詳しくまとめ、そのうえで、大災害に対して法は「どうあるべきか」までしっかりと書かれた本です。

 この本を貫く津久井先生の姿勢は、「はしがきに」にハッキリと書かれています。

(以下抜粋)
 壮絶な悲しみ襲われ、極めて過酷な状況にありながらも、人は日々の生活を送らなければならない。その生活上の悩みは多様であり、切実であり、また深刻である。そのような被災者の不安を少しでも和らげ、心配ごとから解き放ち、生活の再生への道筋を示すことは、法の果たすべき重要な役割である。
 法は人を救うためにあるはずだ。                                (抜粋終わり)

 この精神から、大災害と法との関係について、過去、現在とこれからあるべき姿を記した本です。

 日本の歴史の中で、災害からの復興は欠かせないことだったようで、

奈良時代の「悲田院」が被災者の救護施設として利用されていて、現代の避難所の原型になっていた

ことや

江戸時代になると救済制度の発展の跡があり、飢饉などに対する幕府の米の支給「御救米(おすくいまい)」が行われた

ことなどからはじまり、関東大震災、戦災、戦後の大災害(昭和南海地震、枕崎台風、阪神・淡路大震災、東日本大災害など)のことに関連して、「大災害」の復興に対する法が歴史と共に一歩ずつ整備されてきたことが詳しく書かれています。

 私は弁護士ですが、直接、今回の東日本大震災の復興関連に関する法務に携わったことは殆ど無いので、私が殆ど知らない法律や制度もたくさん紹介されていました。

 
 例えば、東日本大震災の復興法制の目玉として紹介される

「東日本大震災復興特別区域法」

は、復興のまちづくりのため、普通はできないような大胆な規制緩和を行い、例えば、すばやく公営住宅に人が入れるように、工場も復旧できるような工夫がなされ、また、復興のための財源の手当までつけた法律である、といったことが分かりやすく解説されています。

 
 現行(東日本大震災後に出来たものを含めて)の法制を解説するだけではなく、復興の理念はどうあるべきか?ということを考えて、いまの法律に対し、厳しい評価をされているところもあります。

 たとえば、「東日本大震災大復興基本法」について、良いところは良いと認めつつも、法の基本理念の中にある、「豊かさ」を求めるような表現について、経済成長至上主義に繋がる点を指摘し、「最低限度の生活さえ覚束ない被災地の現場感覚からは懸け離れている」としています。
 
 災害復興という中で、経済成長と個々人の生活や尊厳を守ることとが衝突する場面があるとすれば、まずは、個々人の尊厳を守ることを最大限大切にしなければならない、という津久井先生の理念に私は共感します。
 「全体が右肩上がりで成長してリッチになればみんなハッピー」という時代は、大震災がなくても、とうに終わっている、という点も、おそらく、津久井先生と私とで同じ感覚であるように思いました。


 私がこの本の中で特に注目したのは、

「第9章 災害と個人情報保護」

「個人情報保護の壁」

のところです。

 個人情報保護法が2003年に出来てから、

「個人情報を個人の同意なく他人に伝えると、責任を問われる」

という意識が強くなり、逆にそれが問題を引き起こしていることが多々あります。

 大震災があり、自宅で孤立している高齢者がいても、個人情報保護の壁があって、そのような高齢者がいることさえ分からず、誰も支援できない、などが一例だそうです。

 著者は、

(引用)
 もし、「個人情報」を守ろうとするあまり、命や財産や救済手段などの「個人の権利や利益」が損なわれるようなことがあれば、それは本末転倒といわなければならない。
                                           (引用終わり)

と明言されています。
 これは、何も個人情報法護法を「破って良い」という主張ではなくて、個人情報保護法そのものをよくよく読めば、

個人情報そのものが第一だと言っているのではなく、あくまで、法の目的は「個人の権利利益を保護すること」にある 

と書かれているとのことです。

 だから、災害救助の場面など必要なときに情報提供できる条文もあるのですが、責任追及を恐れる意識が強いと、一種の個人情報保護の「過剰反応」によって、人の救済が阻まれるということがあるのです。
 こんなことはあってはならない、というのがこの本の述べていることです。

 この章は、特に、印象に残りました。
 著者が、まさに現場で、また、行政の窓口対応などの問題点に接して奮闘しておられるからこそ、特に設けられた章だと思いました。

 私の意見としても、

・ 個人情報よりも個人を守ろうよ!

・ 個人情報<個人の権利、利益 というのが、個人情報保護法の趣旨でもあるし、条文をよく読めばある程度柔軟に運用できるようになっているのだから、たとえば、行政の判断で、個人情報も、その個人の救済のために必要と考える範囲で柔軟に出してゆけばよい

と思います。必要以上に、個人情報を漏らしたことに対する「責任追及のおそれ」ばかりを意識するより、個人情報保護法が許してくれる範囲はもう少し広い、ということを考えて欲しいと思います。

・ ただ、実際には、窓口担当する公務員に、「おまえが法律を解釈して、個人情報を出して良いかどうか判断せよ」ということや、場合によっては「勇気ある決断」を迫るのは酷です。
 確かに、行政の公平性・適法性などは必要ですから、現場現場の判断で柔軟に、というのは、私のような(何でも言える立場の)一弁護士が考えるよりも実際には難しいことでしょう。
 
・ なので、やっぱり、津久井先生も述べられているように必要な法改正をして、誰の目にも明らかな形で「これこれこういう場合には、こういう形で、個人情報を提供してよい」という条文を出来るだけ整備した方が良いのは、現実の問題として間違いない

と思いました。


 弁護士など法律専門家でなければ読めないという本ではありません。
 
 専門外の人にも分かるように平たい言葉で書かれた本です。

 今後も大地震が予想される未来を考えると、1人でも多くの方に手にとってもらいたい、一部でも(気になるところだけでも)読んでもらいたいという本です。
 本当に、誰が読んでも損のない本だとおもいます。
 
 私もとても勉強になりましたし、法や法律家の在り方について、著者津久井先生の文章の、はしばしにほどばしる思いが伝わり、感じるところがたくさんありました。

 「法は人を救うためにあるはずだ」という著者の言葉には強く共感しますし、私の仕事でも、それを現実に結びつけていけるよう努力していきたいと思います。

                                     村上英樹(弁護士、神戸シーサイド法律事務所






 

「マインド・コントロール」弁護士紀藤正樹先生著 [読書するなり!]


マインド・コントロール (2時間でいまがわかる!)

マインド・コントロール (2時間でいまがわかる!)

  • 作者: 紀藤正樹
  • 出版社/メーカー: アスコム
  • 発売日: 2012/05/28
  • メディア: 新書



 オセロの中島さんの話や、オウム真理教などに関連して、私も関心があったことから、この本を買って読んでみました。

 紀藤先生については、かなり間接的にしか関わりが無かったのですが、この本は、とても大切な視点で貫かれ、かつ、マインド・コントロールの持つ魔力のようなものや、カルト宗教と宗教本来の在り方がいかにかけ離れているかという点について、大変分かりやすく書かれていて、とても勉強になりました。

 
 少しだけ抜粋します。

(同書より抜粋)

 オセロの中島知子さんの話題でもそうですが、「マインド・コントロール」の話が出てくると、「自己責任ではないか」とか「マインド・コントロールにも良いマインド・コントロールと悪いマインド・コントロールがある」といったマインド・コントロールの持つ問題性を矮小化する意見が、必ず出てきます。しかし、これらの意見は、被害実態や事実を直視しない意見です。前者は加害者の問題に目をつぶり被害者だけを鞭打つ理屈、後者はカルトのマインド・コントロールが質的に他のマインド・コントロールと異なる悲劇的な意味があることを看過した意見です。

 人が判断する前提には正しい情報が必要です。情報が不充分だと正しい判断ができません。「インフォームド・コンセント」とは、そういう理論です。「自己責任」という考え方は、充分な情報が提供され、自由な意思決定が満足される環境においてこそ生じるもののはずです。
                                                     (抜粋終わり)

 
 カルトのマインド・コントロールが実際にどのようなものかは、とにかく、この本を読んで頂くのが一番いいと思います。

 そして、上の「自己責任」論に関する紀藤先生の視点は、私も同感です。

 「自己責任」とは便利な言葉で、人を突き放すことを簡単に正当化してくれるように思えます。

 が、「自己責任」を問える条件がその人に整えられていたのか?という前提がよく検討されず、

「俺だったら、そんな馬鹿なことはしないもんね!」

とか

「ひっかかる方が悪いんじゃない」

とかいう気分で、「自己責任」論を言いやすい雰囲気があります。


 しかし、法的な見方、つまり「社会のルール」としての見方は決してそうあるべきではないのです。
 「自己責任」を問えるだけの十分な情報がない状態であったなら、形式的には、例えばカルト宗教に入るのも怪しい勧誘に引っ掛かるのも「自分で選んだ」ように見えても、その人の落ち度を強調して、その人を救済しないなどということは許されないのです。

 実は、悪徳商法の被害でもカルト宗教の被害でも、まず、出発点としては、既に、被害者は「酷い目に遭っている」のです。
 その後法的に救済されようがされまいが、そもそも、一旦「酷い目にあってしまった」こと自体が不幸です。

 その不幸は、残念ながら、事実としては、「(他の要素がからむにせよ、他人の悪意がからむにせよ)自分の行動の結果そういう不幸な結果に至った」ことが多いでしょう。
 いうならば、「自己責任」論のいうところの「自己責任」は、一旦「酷い目に遭った」時点で、自分が受け止めざるを得なくなっているのです。
 それで十分に、自己「責任」を負わされている、状態になっているのです。

 
 そこから後は、法的なものの見方、「社会のルール」としての見方になります。

・ 本当に悪いのは誰か。

・ 自己防衛という意味では「落ち度」があったとしても、被害者は何か悪いことをしたのか。

というものの見方になります。
 

 例えば、

 深夜ミニスカートをはいて路上を1人で歩いて帰宅中の若い女性が、通りがかった見ず知らずの男性から暴行され性的被害にあった

という事例があったとしましょう。

 「自己責任」でしょうか?

・ 自己防衛という意味では、そういう目に遭わないために、「深夜に一人歩きをしてはいけない」と、女性の親父さんは女性に説教をするかもしれません。「服装にも気をつけよ」とも。そして、その説教はある程度もっともかもしれません。

・ しかし、法的に見れば、犯人である男性が100%悪いことは間違いありません。
 深夜に一人歩きすることも、ミニスカートをはくことも、何ら違法でもないし、他人に迷惑を掛けることでもないからです。

・ だから、この犯罪について、女性がミニスカートをはいてようが、一人歩きをしていようが、悪性は少しも減りません。
  民事事件として、女性が犯罪をした男性に対し損害賠償請求をしたとき、たとえば「過失相殺」などと言って、女性がミニスカートであったことや深夜一人歩きしたことを捉えて損害賠償額が減らされる、などということはあってはなりません。
 そのことについて、過去にも「違法か否か、曖昧に出来ない一線」というタイトルで記事を書きました。http://h-m-d.blog.so-net.ne.jp/2008-03-19
  

 カルト宗教などによる「マインド・コントロール」の問題についても、例えば、「本人の心の隙」があるからこそマインド・コントロールのつけいる隙があるわけですが、「心の隙」があることが「自己責任」を問われなければならないようなことでしょうか?私はそうは思いません。
 そもそも「心の隙」がないひとなどいないでしょうし、割と「素直で真面目な人」がかえって引っ掛かりやすいというところもあるのですが、そういう性格は社会的に褒められこそすれ非難されるようなことではないからです。
 いずれにせよ、そういう性格の違いについては、一般的な「個性の幅」の中の話であって、そういう領域では被害に遭ったときに、「自己責任」論を言われるべきではありません。その人が悪い、わけではないのですから。



 以上のようなことで、著者の紀藤先生の法的なものの見方、その見方からのマインド・コントロール問題への分析、対処、現代社会への提言という内容のこの本はとても良い内容で、皆様にお勧めできるものだと思いました。

 あと、私は以前記事で、人身保護請求について書いた(http://h-m-d.blog.so-net.ne.jp/2012-02-09)のですが、例えば、カルト宗教問題の解決方法などとしては、無理矢理カルトから引き離すと、引き離した親などへの憎悪が募ったりしてうまくいかないという問題があるらしく、「人身保護請求は1990年代以降、カルトの解決手法としては使われなくなりました」(同書より抜粋)とのことでした。
 このあたり、私も不勉強でよく知りませんでしたが、勉強になりました。

                           村上英樹(弁護士、神戸シーサイド法律事務所

「おい、悪魔」 ~ 元阪急・福本さん → 元阪神・赤星さん [読書するなり!]

 変なタイトルです。

 「おい、悪魔」というのは、次の本に出てくる、「『戒め』の頭文字」なのです。


一瞬の判断力 ~ピンチをチャンスに変える53の法則~

一瞬の判断力 ~ピンチをチャンスに変える53の法則~

  • 作者: 赤星 憲広
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2012/02/15
  • メディア: 単行本



 悪魔など出てきそうもない本です。

 元阪神タイガースのスーパースター赤星選手(5年連続盗塁王など)がプロに入ったとき、元阪急ブレーブスの福本豊さん(世界の盗塁王)が赤星選手に贈った言葉が「おい、悪魔」です。

お おこるな
い いばるな
あ あせるな
く くさるな
ま まけるな

 なるほど。
 この戒めが大事だということは、私にはよく分かります。
 特に、プロ野球選手にとって、大事なんだろうな、というのは、まさに。

 心の持ちようの問題なのですが、プロ野球選手は、大抵、プロ入りするときは20歳前後の若者なのです。(赤星選手はもう少し上ですが)
 野球の技術は一定水準以上なのですが、人間としては、もちろん、周りの若者とほぼ同じ。
 「おこりやすい」「いばりやすい」「あせりやすい」「くさりやすい」要素をいっぱい持っているわけです。
 そのかわり、若いゆえ、情熱も大きいけれども。
 
 私も、弁護士になったときは24歳でした。
 というと、大学生気質に毛が生えたかどうかというくらい。
 「宴会の後は、朝までオールでカラオケでしょ」というノリの若者です。
 試験にはパスしたけれども、中に入っている人間はそんな若者。
 もちろん、調子に乗りやすいし、逆に、「おこる」「いばる」「あせる」「くさる」に陥りやすいし、そんなしょうもない感情のために、自分の成長の機会を逃してしまうような損をしたことがたくさんあったなぁ、とこの12年くらいを振り返りました。

 とはいえ、私の場合、「おい、悪魔」の戒めに反して損をした経験もたくさんあったからこそ、「おい、悪魔」を心から噛みしめることができ、その結果自分の成長のためにあるべき心の在り方に近づけるのです。
 その意味で、24歳の私よりも強くなっている、と考えることが出来ます(ただし、「朝までオールでカラオケ」はきつくなりました)。
 まだまだ仕事の「現役」人生も長いわけですから、失敗の体験だって力になって、十分元を取れる!

 それに対して、プロ野球選手は勝負できる期間が短いので、「おい、悪魔」に反して何年間か成長が思うようにいかなかった場合には、それで「終わってしまう」過酷さがあるのですね。
 だからこそ、の、福本さんから赤星選手への贈る言葉「おい、悪魔」。

 今家に、「おいあくま」と書いて貼ってあります(笑)

 雑念や邪念に惑わされず、自分のなすべきことを冷静に見つめてゆける人間になろう、と。

               村上英樹(弁護士、神戸シーサイド法律事務所

「阪急電車」読みました。和んだ。 [読書するなり!]


阪急電車

阪急電車

  • 作者: 有川 浩
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2008/01
  • メディア: 単行本



 今ごろですが、やっと「阪急電車」を読みました。

 私は、阪急電車大好きで、毎日阪急で通勤しており、梅田~三宮間の移動でも、JR、阪神、阪急と3つ選択肢がありますが、1人のときは必ず阪急に乗ります。

 阪急のまったりとした空気が良いのです。

 中学生のときは、神戸の高校に「阪急電車」で通学するため(そして、阪急電車内で出会って知り合うであろう丸顔で可憐な女子高生と恋愛をするため。但し、現実には妄想で終わる。)に、受験勉強に励みました。

 社会人になるとき、東京で仕事するか、神戸で仕事をするか考えたのですが、やっぱり、「阪急電車」に代表される神戸の空気を思い出すと、神戸で仕事し神戸で生活したいと思いました。

 
 小説の舞台となる「阪急今津線」は、塾通いの中3のとき、高校通学の3年間とずっと毎日乗っていた路線です。

 私にとってこの小説のようなドラマは殆どなく、ただひたすら「日常」の路線でしたが、この小説では、私にとっての「ただの日常」の路線が、ドラマのステージになっており、何とも楽しい気分にしてくれました。
 
 出てくる登場人物がどれもこれも、阪急文化圏らしい、いい感じで、和みました。

 やっぱり、この街で暮らしていて良かった。幸せだ、と感じました。(って、住まば都、なんで、ただの地元贔屓なのですが。)

 
 今後も、この街の笑顔を増やすことに繋がる毎日を送りたいと思いました。
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