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他者と働く~「わかりあえなさ」から始める組織論(宇田川元一著) [読書するなり!]


他者と働く──「わかりあえなさ」から始める組織論 (NewsPicksパブリッシング)

他者と働く──「わかりあえなさ」から始める組織論 (NewsPicksパブリッシング)

  • 作者: 宇田川元一
  • 出版社/メーカー: ニューズピックス
  • 発売日: 2019/10/02
  • メディア: Kindle版



 良い本でした。

 いろんな場面で「対話」をすることがとても大切、と私はいつも思っています。
 
 その「対話」とは何か?
 どうすれば「対話」できるのか?

の最も大切な点を丁寧に教えてくれる本です。

 人と人には、

 上司   と 部下
 患者   と 医師
 相談者  と 弁護士
 市民   と 市役所の職員
 先生   と 生徒
 法務部門 と 営業部門

など、色んな関係性がありますが、相手が「分かってない」「何でそんなこと言うのか?」と感じるときにどうする?

 そこに「ナラティブ・アプローチ」という考え方を取り入れていくことが必要と筆者は言います。

 「ナラティブ」とは、誰しもが持っているもの。
 
 「ナラティブ」とは

   物語、つまりその語りを生み出す「解釈の枠組み」のこと

です。

 たとえば、医師と患者の関係性でいえば、

 医師の立場では、

   人命を預かった上で、患者を診断する対象としてのナラティブ で解釈する

 患者の立場では

   医師を、自分自身の身体の問題を正しく治療してくれる「先生」として解釈する

というものです。

 
 そして、よく起こるのが、

   自分側のナラティブに立って相手を見ていると「相手が間違ってみえる」

   相手側のナラティブに立って自分を見ると「(こちらが)間違って見える」

という現象。

 私が弁護士として、依頼者に対して、「感情は感情として、こっちの方が得策ですよ」と言っても、依頼者としては「それじゃ腹の虫が収まらないんだ!」と思っている、という状態もこれに近いわけです。

 「対話」というのは、

 自分のナラティブ と 相手のナラティブ との間に 溝がある

ときに

 その溝を見つけて

 溝に橋を架けていくこと

なのだ、ということです。

 
 一言でいえば「相手への想像力」ということなのですが、そういうときの「想像」の仕方です。

 相手の立場では、どのように感じているか? なども「想像」ですが、その洞察として、
 

 相手は、相手自身のどういう「ナラティブ」物語の中で生きているのか、物を考えているのか


に思いを致すことが有効、ということです。

 
 この「ナラティブ・アプローチ」において、重要なことは、「観察する」ことだと著者は言います。

 「観察する」のだけれども、この本を読んで「ナラティブ・アプローチ」とは何かを知って、そういう考えを頭に置けば、人を「観察する」ことも、解像度がぐっと上がりそうです。

 
 さて、政治の場面などでは、「劇場型」で、「●●を排除する」というような形で、相手のナラティブを敢えて無視するようなものの言い方をする、というのも一つの手法として用いられています。
 しかし、私は、「劇場型」は人々の注目を引く手法だとしても、それだけでは上手くいかず、やっぱり丁寧な「対話」が必要だと思います。
 そのためには、色んな利害関係者それぞれの「ナラティブ」を理解して、それを尊重して、丁寧に「橋を架けていく」ことができてこそ、多くの人の納得いく変革が可能だ、と改めてこの本を読んで感じました。

 この本を読むと、

実社会で 「この人は何でこんなことを言うのか?」 ということや

SNSでも 「この人のこういう投稿はいけ好かないなあ」 ということ

にまつわるストレスも軽減されます。
 この人のナラティブはこういうことなんだな、という理解ができ、「自分には違和感があるけど、悪いわけででも、理解できないわけでもない」という領域が広がり、人に優しくもなれます。

 冒頭にも言いましたが、とても良い本です。

 おすすめです。
 

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「成瀬は天下を取りに行く」宮島未奈さん [読書するなり!]


成瀬は天下を取りにいく 「成瀬」シリーズ

成瀬は天下を取りにいく 「成瀬」シリーズ

  • 作者: 宮島未奈
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2023/03/17
  • メディア: Kindle版



成瀬は信じた道をいく 「成瀬」シリーズ

成瀬は信じた道をいく 「成瀬」シリーズ

  • 作者: 宮島未奈
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2024/01/24
  • メディア: Kindle版



 
 本屋大賞受賞作「成瀬は天下を取りに行く」とその続編。
 一気に読んでしまいました。
 素晴らしい作品に出会いました。

 主人公は「成瀬あかり」 中学生~大学生 の時代が、「成瀬」の周りの友人、親そのほか様々な人の視点で描かれています。

 「成瀬」はかなり個性的であり、
・ 西武大津店の閉店前に、「夏休みを西武に捧げる」
・ M1予選に出る
を皮切りに、「自分がなすべきと思うこと」に真正面から取り組みます。
 周囲は、えっ!?と思うことも、本人としては至って当然のことのように行います。

 なぜか、自主的に「パトロール」を行って、地域の治安維持にも貢献していたりします。

 自分の好奇心からくる行動もあり、また、地域(大津)のためという使命感からくると思われる行動もあり。

 続編のタイトル、まさに「信じた道を行く」のとおりの人物で、読むうちにどんどんファンになっていきます。

 このブログでも、「他人との比較は幸福の毒」ということも書いたことがあります。
 他人との優劣を競うのではなく、「自分軸」で生きることこそが幸福・ウェルビーイングへの道だと思い、自分も他人もできるだけそうなれるようにと思って日々過ごしている私からみて、「成瀬」の在り方は「まさに」です。

 きっと、ここまで「自分軸」で生きられることへの憧れが、この作品がヒットした大きな要因でもあると思います。

 とにかく、爽快ですし、「成瀬」の歩みが気になって仕方なくなりますので、この本はどなたにもおススメです。

 
 また、文章表現の一つ一つが絶妙に面白く、作者の感性が私には「ツボ」である部分がたくさんありました。
 ネタバレにならず、読んだ人にはわかる範囲でいえば、
 「ぐるりんワイドの限界を感じた」
 「祝ってへんのか」
 「『はい、その気になれば、話せます』」
あたりです。

 最高のエンターテインメントであり、また、「好きに信じたままに生きていいんだよ」というメッセージもあり、元気が出る1冊(いや2冊)。

 未だの方は、是非、です。
 

 


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