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予言書!? ジェフ・ホーキンスら「考える脳 考えるコンピューター」2005年 [読書するなり!]


考える脳 考えるコンピューター〔新版〕 (ハヤカワ文庫NF)

考える脳 考えるコンピューター〔新版〕 (ハヤカワ文庫NF)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2023/07/22
  • メディア: Kindle版




 著者のジェフ・ホーキンス氏は神経科学とAIの研究を行う会社の共同創業者です。
 2022年に出された「脳は世界をどう見ているのか」という本も、眠れないくらいに面白い本です。

 さて、この本はまたすごい。
 2005年に出された本ですが、今日まで約20年の人工知能の発展をそのときに予言したかのような内容です。

 そのとき「まだなかった」ChatGPTの技術や画像認識などについて、これこれこういう仕組みで処理できるようになる「はず」ということが書かれています。

 人間の情報処理を司る大脳新皮質の働きについて、「知能の本質は予測である」という観点から、詳しく述べられています。
 
 これを読むと、人間の脳が行っている情報処理は、自分の持っている世界のモデルのなかで、また、自分の経験に照らして、絶えず、「次に何が起こるか」を「予測」し、「予測」と「現実」のずれを調整し続けるというものです。
 五感(視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚)を通して得られる情報をもとに、そこから「パターン」を読み取って「予測」を行う、という、説明を読むと、改めて「人間の脳ってすごいなあ」と思います。

 なので、人間の脳が行っている情報処理を、コンピューターで代替するのは簡単なことではなく、また、できたとしてもとんでもないエネルギーを使うことだ、という感想になります。

 が、しかし、ホーキンス氏は、それでも人工知能技術の発展は「自分の予想も裏切る」めざましさがあるので、いずれ、人間の脳が行っていることのかなりの部分がAIによっても実現されるだろう、と予測しています。

 なので、やはり、「AI侮るなかれ」なのです。
 
 最近は「AIに仕事を奪われる?」ということが話題になりますが、その場合、「では『AIに奪われる』仕事とは何だろう?」を考えることになります。
 この文脈においても、この本を読むことは大いに参考になります。

 この本の解説は、「あの」東京大学大学院教授 松尾豊氏 です。
 
 松尾氏は「この本は私の人工知能研究者としてのキャリアとともにある本である」と書かれています。
 そして、解説の末尾でこのように述べています。
 「端的に言えば、新皮質は予測のための器官であり、AIによって実現し得る。」
 「一方で、本能や感情を司る旧脳、身体やさまざまな感覚は人間に特有のもので、コンピュータで実現することは不可能か、あるいは無意味だ。」

 
 この解説部分もとてもインパクトがありました。
 日本を代表する人工知能研究者の松尾氏は、人間存在を不要とするロボットを作ろうとしているのでは決してなく、むしろ、そんなことは「不可能か、あるいは無意味だ」と言い切っているのです。

 最先端の研究をする学者のモチベーションが、ただただ技術を高めて「人間存在を不要とする」ことを目指すことにあるのではなく、あくまで、「人間がより活きる」ためのツールの開発の研究にあることが分かります。

 
 先日、記号接地問題、今井むつみ氏ら著「言語の本質」について書いた感想と同じで、やはり、「人間に特有」のものの味わいを深くすることがますます重要だということになります。

 「AIに奪われる」部分は、「近現代に、人間が機械のようになろうと(涙ぐましい努力をして?)こなしていた」部分でしょう。
 とすれば、人間が、機械のようになることを余儀なくされるのではなく、より人間らしくある、そのためのツールとしてのAI技術の進化を喜ぶべし、と考えます。

 
 


 
 
  


 


 


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