「社会を変えるには」(小熊英二著、講談社現代新書) [読書するなり!]
タイトルに興味を持って買いました。
2011年の福島第一原発事故があって以来、以前よりずっとデモも盛んになりました。
ですが、私は、基本的には、議会制民主主義であれば、議員選挙を通じて活動するとか、議員への陳情を行うとか、そういう活動でなければ余り効果がないのではないか、とデモに対しては一歩引いて見ているところがありました。
そのことについて、この本を読んで随分考えが変わりました。
この本は、「こうあるべき」論を書いている本ではなく、民主主義の歴史や、運動の在り方などについて、色んな視点を詳しくわかりやすく解説されていて、今ある議会制民主主義も唯一完全の制度ではなくて、長所・短所を持った政体の1種類に過ぎないという位置づけがよく分かるものです。
そのことから、選挙を通じて多数派を形成するという筋道以外にも、民主主義を体現する手段を国民はたくさんの種類持っていたほうがよい、という風に思えるようになりました。
また、何かに目まぐるしく動く現代では、旧来の固定化した図式、たとえば、「資本家」対「労働者」とか、「右」対「左」とか、そういう枠を中心に物事を判断する方法が有効でなくなり、人の立場も流動的であるし、対立の構図で優劣を争う姿勢では社会を良く変える力になりにい。
立場の違いを超えてより良い考えを探求する(「弁証法」的とも言える)在り方がより重要ではないか、ということなど、なるほどと思えることが多い本でした。
速効で「社会を変える」ことができる、というわけではない、という感じの本です。(本当は、タイトルからそれをちょっと期待して買ったのですが。)
しかし、地道に、一歩ずつでも社会を変えることは出来そうな気がする本で、緩やかに明るい気持ちにもしてくれる本でした。
大変な時代なので、つい思考が極端に走ったり、一面的な見方になってしまったりしがちなものだと思います。それだからこそ、この本のように、価値観の多様性も大切にしつつ、冷静に一歩ずつ世の中を良くしよう、という考えを持てるのは大変重要なことだと思います。
どなたにもお勧めの本です。興味があったら、皆様も是非。
村上英樹(弁護士、神戸シーサイド法律事務所)
2012-11-12 19:03
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コメント(2)
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いま現在の日本の政治家を見ていると、選挙の時だけカッコいいこと言っていますが、当選したら国民のことなんて何にも考えていないのではないかと思わざるを得ない人が多すぎます。
社会を変えるには、政治家任せにしていては駄目だと思います。微力であっても何か行動するほうが、愚痴を言っているだけよりは増しだと思います。
by 心如 (2012-11-13 06:31)
心如さん ナイス・コメントありがとうございます。
同感です。愚痴を言っているだけでなく何か行動する、それに尽きますね。
maiさん shiraさん
ナイス有り難うございます。
by hm (2012-11-19 10:37)