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生き死にの観点で,戦争と平和を考えること [くらしと安全(交通事故その他)]

 安倍官房長官は,首相になったら,新憲法を作る,という。平和主義を定めた憲法9条の内容を改めるという方針であることは,明らかです。

 私は「弁護士9条の会」に名を連ねている「護憲派」です。が,今日の記事では,9条を変えることの是非そのものを結論づける文章にはしません。

 ただ,この問題を考える一つの大事な視点を,私は考えていますので,そのことをお話ししたいと思います。

 護憲派のひとも,改憲派のひとも,どっちだろう?という人も一緒に考えてみませんか。本からの引用ですが、次の文についてどう思いますか?

 「戦後の平和教育には一つの盲点があった。つまり,それは,戦争を善悪という倫理道徳の観点からだけ眺めて,生き死にの観点でみることを忘れていた。」

 これを読んで,「『教え子を戦場に送るな!』と言って先生達が一生懸命やってきた平和教育を批判するなんて,右翼かタカ派か!軍国主義か!!」と怒る人もいるかもしれませんね。でも,そんなにカッカしても実りのある明日はない,と私は思います。

 この文章は,

太郎次郎社 「いかに生き,いかに学ぶか」遠山啓著

からの抜粋です。

 著者遠山啓氏は,私の算数の(心の)師匠であって,「水道方式」(私の過去の記事 http://blog.so-net.ne.jp/h-m-d/2006-06-22 参照)と呼ばれる指導法を研究された熱き教育者です。著者が,若者へのメッセージとして,老人と若者の手紙のやりとりの形式で書き下ろした本です。

 憲法9条について,簡単に言えば,次のような意見が対立します。

改憲派 「日米同盟,自衛隊は現実必要。北朝鮮の脅威もある。9条に書いてある通りにやれば,国防が出来ないではないか。」

護憲派 「9条を変えて戦争をするのは,殺し合いをするのだから,悪である。尊い平和をないがしろにするのか!」

 そして,改憲派は改憲派の書いた本ばかり,護憲派は護憲派の書いた本ばかりを読むことが多い。反対の立場の人の本を読むと気分が悪くなるから,精神衛生上悪い,というわけです。

 これで大丈夫なのでしょうか?という疑問を常々私は抱いてきました。

 そのことに一つの視点を明確に示すのが,上記の一文だと私は思います。

私たちの生き死にという観点で,戦争と平和を考えること

 これなしに,9条を変えるにしても守るにしても議論は不毛だ,と思います(もっとも国の根本原理を定めた「憲法」ですから,議論が不毛なままなら,変えるわけにはいきませんが)。

 上記の護憲派の根拠「戦争は悪である」というこれだけであれば,改憲派の人が,「護憲派の言う平和主義はオキマリで反吐がでる。聞く気もしない。」と言ったとしても仕方がないような気がします。だいたい,議論が噛み合っていないわけですから,どうしようもありません。

 「私たちの生き死にと9条」をテーマにしてみましょう。これなら,全ての人が噛み合った議論が出来るはずです。

 上記の本のなかで,上に引用した部分に引き続き,遠山啓氏は,概ね次のようなことを述べています。

(引用はじめ)

 日本は大昔から弱国であったし,これからも弱国でしかありえないことを徹底的に納得したうえで,弱国は弱国としてどう生きていくかを考え抜くべきだと思う。…

 弱国は必ず滅びるだろうか。…生物の世界でも,…リスやウサギも生きている。それらはライオンや虎のもっていない強さ…をもっている…。強いライオンや虎は,また,…弱さを持っている。国だっておなじだろう。

 そういう見方からすれば,戦争放棄を宣言した新憲法は深い意味を持っている。

 戦争放棄など感傷的な理想主義だ,だから,いずれは改めるべきだ,という主張がある。だが,ぼくはそれとはまるで反対のことを考えている。ぼくの見方から言えば,それは,世界の新しい動向を見とおしたうえで打ち建てられたかしこい現実主義なのだ。そこに弱国の生きる道が示されている。

 日本は資源がないということが弱国であることの原因の一つだが,それがまた日本は外国から狙われないという理由の一つにもなっているはずだ。…

 もし日本が狙われるとしたら,日本が強大な軍備をもってほかの国に脅威を与える場合だけだろう。

 日本は弱国である。しかし,…弱国として生きる道があるし,日本はその道を進んでいくのだ,ということが,少数の政治家ではなく,すべての国民の,心から納得した民族の知恵となったとき,日本には明るい未来が開けてくるだろう。(引用終わり)

 この遠山氏の記述について,鵜呑みにするのではなくて,私もじっくり考えてみたいと思っています。

 ポイントを整理すると

1 日本は弱国であるという出発点について,どうか。日米同盟の力を考慮したら,弱国ではないということになるのか,やはり弱国なのか?も含めて。強国アメリカは強いか,弱さはないか。

 日本の平和が脅かされる恐れは,日本が強大な軍備をもってほかの国に脅威を与える場合だけだと言えるか?その他の場合として,現実にどのようなことが考えられるか?

3 たとえば、現在の軍備、自衛隊の存在は「強大な軍備」「ほかの国に脅威」なのか?9条を変えた場合にはどうなるか、同じか、それとも(今と違って、あるいは、今よりもっと)「強大な軍備」「ほかの国に脅威」になると思われるか?その他の意味も含めて、平和に役立つか、危険を招くか?

ということなどを,考えた上で,「私たちが生きる道」としてどうするのが賢いのかを考え,

安倍新政権の憲法改定(新憲法策定というべき?)動き,9条改定の動き

を放っておいて良いのか,反対の声を上げるべきなのか,国民ひとりひとりが自分の頭で考えなければならないと思います。

  


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robou

じっくり考えてみます。
by robou (2006-08-31 11:43) 

ゆう

はい、別の場所にも別の形で書き込みましたが、
国民はあまりにも国のこと・・とまで言わなくても、
自分たちの未来のことを国レベルであまりに考えてなくて、無知すぎますね。
という私もその一人ですが。
国はどうせなにもしてくれないからじゃなくて、勝手に政治家の思惑に、自分たちの国の将来をまかせっきりじゃだめでしょう。
せめて選挙には必ず行くようにしてます。選挙にも行かずして、文句は言えないかと、思ってるので。・・・話しずれましたが。
これも別の場所に書きましたが、
映像とか、規制が厳しい故に、戦争のむごさをリアルに知る機会があまりになさすぎ。
そうそう、生死の観点でね。
私は幼い頃、広島で育ったため、結構そういう話や写真に触れる機会は、多かったです。引っ越してきて、温度差に驚いたくらいですから。
うーん、日本人は穏やかなのが長所でもありますが、おとなしいよね。
先日、知床に旅行、遊覧した日に丁度ロシアの漁船銃撃事件がありました。
北方領土って、解決してないけど、もうどうでもいいんかなぁ
少し前にそう思ってたら、やっぱり今回のニュースで、小泉さんはそっちには興味がなかったとか言われてて、なるほどそういうことか、とも思ったものです。(そんな時点で、温度低い)
おかげでその問題にも少し関心が湧いて、ネットとか見てたんですが、
やっぱり諦めないで、北方領土にも声をあげてる人たちって本当にたくさんいて、
あの辺りを旅行してると、あまりに近くて、そういう空気を感じました。
拉致事件にしても、なんにしても、
国民が一体になって同じ問題を同じように捉えることが、本当ないよね。
関係のある人ない人、地域、で温度差がありすぎる。
こんなことを客観的に述べてる私自身どうか?ですし、
こんな空気の日本で、熱く叫ぶ知識も情熱もありません(少なくとも今は)・・矛盾してますけど。
ちょっと論点はずれましたが、
でも、少しずつ自分たちに考えること、出来ることはしていきたいものですね。
いかなる理由でも、テロ、戦争はだめです。
っていうか嫌です。←これでいいんじゃないの?「だめ」な理由を説くことはできんけど、嫌やもん!!そういう意思表示を、もっと声にしなきゃねぇ。

かなりずれて書きましたが、お許しを。
by ゆう (2006-09-03 01:52) 

hm

>robouさん ゆうさん

 コメント有り難うございます。
 ほんとうに,みんなが自分の思う在り方を大事にしてゆくことが求められている時代になりました。
 
 なぜ,普段余り「政治政治」と言わない私が,こんな話題を出すかというと,憲法というのは,国の根本を謳ったもので,もともとちょっとやそっとでコロコロと変える性質のものではないからなのです。(教育基本法も憲法に近い性質をもってます。)100年以上変わらなくてもその精神がまっとうなものであれば,それはそれでよい,という性質の法です。
 
 9条と戦争の話について言えば,例えばゆうさんのように,「いかなる理由でも,テロ,戦争はだめです。」「嫌です」という平和主義に忠実な在り方を大切に貫く考えをみんなが持ち続けられれば,戦争など起こらず,平和に暮らしてゆけるとおもいます。

 ただ,心配なのは,人の心とは弱いものだろう,ということです。「テロリストがいる,危険な国家が傍にある」と言われたとき,あるいは,「日本が独立国家であるために仕方ない」と言われたとき,「戦争をしない」という姿勢をみんなが貫けるか,といえば,ハッキリ言って,例えば過去の日本人の大勢は無理だったわけです。
 
 「生き死にの観点」を私が出したのは,例えば,イラク戦争にしても「戦争は確かに悪だ。だが,世界中に良からぬ輩がいる以上,テロの恐怖がある中で,私たちの生存確率を上げるためには戦争しなければ仕方ない。」という謳い文句で起こるからです。
 アメリカ人も,ひとりひとりは平和を愛する人たちが多数に違いないのに,大多数が,この戦争を支持しました。日本も協力しました。
 さて,しかし,その結果,私たちの生存確率は上がっているかどうか?アメリカやイギリスの人達の生存確率は上がっているかどうか?イラクの人たちは幸福になったのかどうか?
 「この戦争は正しい。」あるいは,「国民の利益に適う。」と開戦時に宣伝したブッシュ大統領や小泉首相の言葉について,果たして,本当だったのかウソだったのか。
 このような点について,私たち国民が鋭い目を持ちきちんと本当のことを指摘できなければ,戦争が嫌いでも戦争を止められない,というのが現実です。
 
 憲法の問題としては,憲法9条を変えて,軍隊を持ち,集団的自衛権を行使する(アメリカらと一緒に軍事行動をする)として,私たちの生存確率が上がるかそうでないか?また,私たちの生活はより豊かに安定したものになるかどうか?

 逆に憲法9条はどんな役割を果たしているのか?もし9条がなかったらどうだっただろうか?もっと日本が安全だっただろうか?
 
 こういうことについて,表面的な政治家の発言に惑わされず,自分で考えていきたいものだとおもいます。

 今,私は,9条の戦争放棄について,これが, 「世界の新しい動向を見とおしたうえで打ち建てられたかしこい現実主義」だという遠山氏の本のフレーズについての意味に非常に着目して考えています。
 日本が,軍備によってではなく,この「姿勢」によって実際に守られてきたという側面がなかったかどうか…

 と,偉そうな文章になってしまい,すいません!
 ゆうさんとは知り合いなだけに,是非ちょっと突っ込んでお話ししてみようと思って書きました。
 みんなで考えるきっかけになれば…
 
by hm (2006-09-04 13:58) 

ゆう

hmさん、
私はhmさんほど、ご立派な知識も考えもなく、
人の意見をこうして聞いて、なるほどな!その通りや!という感じです。
確かに、アメリカの傘の下にいれるからの、この平和か?戦争放棄か?
と思うことも多々ありました。
そんな私でよければ、是非自分たちの国の大事な話、
語りましょう。
というか、hmさんの意見(語り)が聞きたいです!
by ゆう (2006-09-07 02:01) 

hm

>ゆうさん
 
 存分に語りましょう!!!
by hm (2006-09-07 12:14) 

たにま

遅くなりましたが、読ませていただきました。
少し、話がそれますが、とても分かりやすく、でもって深い洞察力。
言葉を知らないので、これ以上言いようがないんですが、感服いたしました。

私の意見は、ミクシィの日記で少し書いているので、ここでは、
私が戦争について考えるきっかけについて少し。

きっかけは人それぞれあると思いますが、
私は昔、なぜドイツ人はヒトラーを支持したのか?というテーマの
TV番組を観たことです。
この番組の中である実験をしていて、それは、部屋にスイッチが置いてあって、
そのスイッチを押してくださいと言われる。
そのスイッチを押すと、電流が流れて、隣の部屋にいる人間が軽く感電するというものでした。

結果、8割の被験者が感電する姿を見て、笑みを浮かべたそうで、
人間は、「人の指示」というかくれみのがあると、安心して残虐な行為に走ることができると結論づけていました。(他にも、沢山の実験をやっていたのですが、忘れてしまいました。。)

当時、私は中学生で、ゲッペルスや、アイヒマンが極悪非道な人間ではなく
どこにでもいる普通の人だったこと、自分も、アイヒマンになりうることに、
とても衝撃を覚えました。

私は直情型の性格であると思うし、基本的に好戦的でもあると思っています。
だからこそ、理性を保つため、冷静な自分なりの判断を下すため、
常にアンテナ張ってないといけないなと思っています。

なんか、うまくまとまらない。。
すいません。

今、日本のマンガとかアニメとか世界中で人気ですよね。
同じものを見て、感動したりできるってことは、言語、文化、宗教。。違いは
いっぱいあっても、根っこは一緒っていうか、分かりあえるとこは絶対あるって
思うんですよね。

北朝鮮のあの方を国賓として呼んで、浅草とか京都とか連れてったりする方が
迎撃ミサイル作るより、安上がりだし効果あるような気がするんですけどねぇ。

乱文、お許しください。
by たにま (2006-10-18 00:15) 

hm

>たにまさん

 書き込み,有り難うございました!!
 レス遅くなりました。
 ときに爆笑問題太田さんの本買ってみましたよ。わけわからない部分も,?な部分も,いっぱいあるけれども面白かったです。色んな考え方あるんやなぁ~という意味でも。
 
>当時、私は中学生で、ゲッペルスや、アイヒマンが極悪非道な人間ではなく
どこにでもいる普通の人だったこと、自分も、アイヒマンになりうることに、
とても衝撃を覚えました。

 思いますねー。私も,自分自身,アイヒマンどころか,「もしもボックスがあったらつい『もしも人類が滅んだら』って言ってしまうかもしれない」危険性を秘めていると思います。たぶん,だれでもそんなんやろなぁ~と思う。なりうる,という意味では。

>北朝鮮のあの方を国賓として呼んで、浅草とか京都とか連れてったりする方が迎撃ミサイル作るより、安上がりだし効果あるような気がするんですけどねぇ。

 浅草とか京都に連れて行ってみる,というのはいいですねぇ~。
 私は,本気で,「あの方」と1日ぶらり旅をして,色々話をしてみたいと思います。ぶっちゃけトークを。ぶっちゃけどういう立場で,どういう思いで過ごしていて,これからどんな風になったらいいと思っているか,聞いてみたい。
by hm (2006-10-20 10:48) 

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