サラ金「グレーゾーン」金利~「グレー」というより「オセロ」? [消費者事件]
そういえば,アイフルのCMって最近見ませんよね?
アイフルについては,ちょっと前ニュースになったとおり,取立のやり方が違法であった等の理由で行政処分がされています。
さて,今,サラ金等の「(出資法上限)金利引き下げ」の議論がなされているのをご存じでしょうか。
「グレーゾーンの撤廃」等とも表現されています。「グレーゾーン」って何なんでしょうか?具体的には,サラ金の「29%」などの金利のことを指していますが,「グレー」の意味やいかに…。
私の所属事務所(神戸シーサイド法律事務所)のHPから抜粋↓
(弁護士による借金整理について)
サラ金業者は,利息制限法の制限利率(例えば30万円や50万円の借金ならば18%)を上回る利率を取っています。
弁護士による交渉により,同法の制限利率を上回った部分については,利息として認めないという主張を行って,借金を減額することを求めます。
10年くらいの長期の借金の場合には,残高がゼロになるだけではなく,払いすぎになっており,逆に顧客が業者に返還を求める額が,数十万円に上る例も珍しくありません。
http://www.kobeseaside-lawoffice.com/saimuseiri.htm
「抜粋」って,実は,この文章も私がつくったのですが,ここでいうサラ金がとっている例えば「29%」といった「18%を上回る利息」が「グレーゾーン」と呼ばれています。
ただ,法律において「グレー」というのは存在しません。「グレー」であるものを法律が許すということもありません。
「グレー」という言い方は正確ではない。私なら,「『オセロ』ゾーン」と名付けます。「白黒のオセロ」です。その理由は以下↓
なぜ「グレーゾーン」と呼ばれるかというと,
1 まず「民事」では…
50万円の借金の場合
利息制限法の上限金利は 18%
厳しい例外要件(貸金業法43条)を満たすもののみそれ以上とすることが許される,とされているが,多くの裁判例は,現状のサラ金の貸付についてこの例外要件を満たしていない,と判断する。「取りすぎは返せ」と判決がされています。
だから,「29%」などの金利は認められていない=「白」ではない,とされるのです。
2 「刑事」では…
じゃあ,利息を取りすぎている業者は処罰されるのか,の問題です。
出資法第5条2項は,「年利29.2%」を超える貸付を処罰する,としています。
なので,「29%」などの利息であれば,処罰されない=「黒」ではない,と言われるわけです。
1,2併せて,「白」でも「黒」でもない→「グレーゾーン」と言われるわけです。
しかし,私に言わせれば,この金利は,「グレー」ではなくて「オセロ」だと思います。つまり,民事上の「黒」と,刑事上の「白」との両面がある金利。
刑事罰の対象にならないという意味での「白」は「白」です,確かに。
でも,民事上その利息が認められないなら,「利息取りすぎ分は顧客に返さないといけない」ことも明らかで,その意味では利息を取ることが許されない=「黒」です。
繰り返しますが,10年くらいの長期の借金の場合には,借金はゼロになるどころか,それ以上に払いすぎになっており,弁護士の交渉により,逆に業者に対して数十万円の返還請求をする例も珍しくありません(俗に「過払い金」と言います)。これに当たるような人は是非一度弁護士に相談していただければ,と思います。
それにしても,「一体,何でそんなことが起こるの…?」って不思議ではありませんか。
生活するにもお金の足りない人たちは,考える余裕もないし,利息制限法などの知識もない。
一方,業者は,プロですから上のような法律があることや裁判所がどういう判断をしているかも承知の上で,貸し付けている。
で,結果,法律を知らない顧客が損をし,その分サラ金業者が利益を得ている,というのが現状です。
そこまでして,利潤を追求してきたサラ金業者の在り方そのものに厳しい規制をはめなければならない,というのが,「出資法上限金利引き下げ」の議論のもっとも大切な視点だと思います。
(利息制限法も裁判所も認めていない)年利18%を超える高金利については,「白黒オセロ金利」ではなく「(民事、刑事の)両面とも黒」だと出資法できっちり定めて,処罰の対象とするように法改正すべきだと考えます。
注:当初、「オセロ」の部分を「パンダ」としてこの文章を記しましたが、動物愛護の観点から良くない表現であると思い、改めました。ここでいう、「オセロ」はお笑いのオセロさんとは全く関係なく、オセロゲームの「オセロ」を比喩として使っていることを念のため付け加えます。
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