民法改正されたら~法定利率は3%からの変動制 [法律案内]
近い将来、民法は全面的に改正されることになりそうです。
既に平成27年に、法制審議会で改正の要綱案が決定されています。
http://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900244.html
以前、私の日記で、法定金利が5%という破格の高率であることについて記事を書きました。
「金利年5%!!~民事法定利率の話」
http://h-m-d.blog.so-net.ne.jp/2012-07-06
特に、交通事故の死亡・後遺障害事案について、将来の逸失利益(その人が事故に遭わなければ得られたであろう一生の収入)の計算で、法定金利5%が被害者に不利に働いている、ということを書きました。
金利5%というのは今の経済情勢(長く続く超低金利、また、かつてのような経済が急成長する状況は考えられない)ことからして、余りに実情からかけ離れています。
また、それを前提に利息請求することも、また、死亡事故などで逸失利益の計算に「中間利息控除」として5%を使えば(5%分の金利を「天引き」して賠償額を決めると)被害者が大きな不利を被ることなどから、不都合があります。
このように5%は実情に合わないという共通認識から、民法改正では、
1 まず法定金利(契約で金利を決めなかった場合の貸金などの金利)を初期設定として3%とする。
2 その後、3年ごとに、過去5年分のデータ(正確に言えば、6年前~2年前の短期貸付の平均利率)をもとに、1%単位で見直しをする。
という変動制をとる方針が決まっています。
ただし、変動制について、細かい説明は省きますが、相当大きな実勢金利の変化がない限りなかなか3%は動かない仕組みになっています。
なので、民法改正後、当分は法定金利3%になる可能性が高いといえます。
また、民法改正要綱では、交通事故の死亡・後遺障害事案での逸失利益の計算(中間利息控除)でも、上記の通り定まる「法定利率」を使うと定められています。(現在の民法は、中間利息控除について「法定利率」でしなければならない、とは書いていません。最高裁判決は「法定利率で行う」としています。)
ですので、現在の法定利率5%で「中間利息控除」をして逸失利益(賠償金の大きな部分)を決めるよりも、3%のほうが被害者にとっては有利になります。
「中間利息控除」として減らされる金額が少なくてすむからです。
それでも、年利3%でお金を現実に運用することは出来ないので、「中間利息控除」が被害者に不利に働くという点が解消されるわけではありませんが。
なお、法定利率はあくまで、契約で金利を決めなかった場合の話です。
ですので、例えば「AさんがBさんに対して金100万円を貸した」場合に、
1 契約書に金利が明記してある(たとえば、10%、1%、利息なし、など)場合
→契約書に書かれた金利になります。
2 金利の約束がない場合(決めなかった場合)
→現在は 5%
民法改正されたら 当分は3%
となるということです。
民法改正は全面改正になりますので、この他にも、色々変わります。
民法というのは、取引上の基本ルールを定めた法律ですので、改正は私たちの暮らしに影響することがあります。
他の変更点についても、折に触れてご紹介していこうと思います。
神戸シーサイド法律事務所 弁護士 村上英樹
既に平成27年に、法制審議会で改正の要綱案が決定されています。
http://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900244.html
以前、私の日記で、法定金利が5%という破格の高率であることについて記事を書きました。
「金利年5%!!~民事法定利率の話」
http://h-m-d.blog.so-net.ne.jp/2012-07-06
特に、交通事故の死亡・後遺障害事案について、将来の逸失利益(その人が事故に遭わなければ得られたであろう一生の収入)の計算で、法定金利5%が被害者に不利に働いている、ということを書きました。
金利5%というのは今の経済情勢(長く続く超低金利、また、かつてのような経済が急成長する状況は考えられない)ことからして、余りに実情からかけ離れています。
また、それを前提に利息請求することも、また、死亡事故などで逸失利益の計算に「中間利息控除」として5%を使えば(5%分の金利を「天引き」して賠償額を決めると)被害者が大きな不利を被ることなどから、不都合があります。
このように5%は実情に合わないという共通認識から、民法改正では、
1 まず法定金利(契約で金利を決めなかった場合の貸金などの金利)を初期設定として3%とする。
2 その後、3年ごとに、過去5年分のデータ(正確に言えば、6年前~2年前の短期貸付の平均利率)をもとに、1%単位で見直しをする。
という変動制をとる方針が決まっています。
ただし、変動制について、細かい説明は省きますが、相当大きな実勢金利の変化がない限りなかなか3%は動かない仕組みになっています。
なので、民法改正後、当分は法定金利3%になる可能性が高いといえます。
また、民法改正要綱では、交通事故の死亡・後遺障害事案での逸失利益の計算(中間利息控除)でも、上記の通り定まる「法定利率」を使うと定められています。(現在の民法は、中間利息控除について「法定利率」でしなければならない、とは書いていません。最高裁判決は「法定利率で行う」としています。)
ですので、現在の法定利率5%で「中間利息控除」をして逸失利益(賠償金の大きな部分)を決めるよりも、3%のほうが被害者にとっては有利になります。
「中間利息控除」として減らされる金額が少なくてすむからです。
それでも、年利3%でお金を現実に運用することは出来ないので、「中間利息控除」が被害者に不利に働くという点が解消されるわけではありませんが。
なお、法定利率はあくまで、契約で金利を決めなかった場合の話です。
ですので、例えば「AさんがBさんに対して金100万円を貸した」場合に、
1 契約書に金利が明記してある(たとえば、10%、1%、利息なし、など)場合
→契約書に書かれた金利になります。
2 金利の約束がない場合(決めなかった場合)
→現在は 5%
民法改正されたら 当分は3%
となるということです。
民法改正は全面改正になりますので、この他にも、色々変わります。
民法というのは、取引上の基本ルールを定めた法律ですので、改正は私たちの暮らしに影響することがあります。
他の変更点についても、折に触れてご紹介していこうと思います。
神戸シーサイド法律事務所 弁護士 村上英樹
2016-11-28 18:40
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