「親鸞」五木寛之著 講談社文庫 [読書するなり!]
最近読んでいる本はこれです。
親鸞上人(浄土真宗の始祖)の生涯がテーマです。
歴史小説としてとても面白いのですが、とても読み応えがあります。
親鸞は、高貴な存在として山の上にいる、というのではなくて、世の中のありとあらゆる人と関わります。
貧しい人、罪人、業を負う仕事をする人…
「清い」などという在り方からは程遠い人でも、懸命に生きているし、救いを求めていることを肌身で感じ、何をすべきか考え、行動する波瀾万丈の生涯。
また、五木寛之さんが描く親鸞像は、とても人間らしい部分が生き生きと描かれており、人が人を救わんとすることは、言うは易くとも、実際行うとなると捨て身で、ドロドロになりながらなのだ、と教えられます。
話は変わって、中学生などとお話しすると
「なぜ弁護士は悪い人を弁護するのか?」
という質問をいつも頂きます。
この問いと答えに通じるものを小説「親鸞」に感じました。
確かに、中学生の時は、「悪いことをして捕まったら終わり!」という感覚だったと思います。
私は刑事弁護がメインでないので、それほどの経験がありませんが、私の接した多くの人は、
罪を犯したくて罪を犯したわけではない(できれば罪を犯さず生きていたい)
し、また、
その人にとって、刑事裁判が終わりではなく、その後、如何に良く生きるべきかという課題が残っている
のです。
弁護士もそうですが、それだけでなく世の中全体が、「自分の意に反して、理想の状態から外れてしまった。」という人(罪を犯した人もそうですし、その他、社会的に弱い立場に立つことになったあらゆる人)に対して、排除するなどという態度ではなく、「その人がこれから如何に良く生きることができるか」という視点で関われるようになっていけば、と思わせられました。
ま、深く考えずとも、単純に、親鸞上人の「波瀾万丈伝」として捉えても大変面白い(史実との関係は詳しくは私には分かりませんが…)ので、あらゆる年齢層の方にこの小説はオススメです。
弁護士 村上英樹(神戸シーサイド法律事務所)
2015-05-01 17:46
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コメント(4)
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「人間らしい部分」に注目して読み直したくなりました…楽しみです♪
by シルベーヌ (2015-05-07 00:14)
悪とみなしたら人権なんてなく、徹底的に叩く(自分が第三者でも)という考え方や感覚が多いのが不安です。
そういう人は加害者(被疑者)を弁護する弁護士を嫌うようです。
ただし医療問題・環境問題になると加害者(被疑者)でなく被害者側の弁護士を嫌うようです。
by ayu15 (2015-05-17 21:44)
排除するなどという態度ではなく、「その人がこれから如何に良く生きることができるか」という視点で関われるようになっていけば・・・」
という思いは同感です。
そこで被害者心情との葛藤がおきます。
現行制度や思想??では天秤にかけることが多い気がしますが、どう思われますか?
日記で「被害者指数と加害者指数の乖離」シリーズで展開しています。
「恩讐の彼方に・ある抗議書・火の鳥 」http://life-ayu.blog.so-net.ne.jp/2010-04-27
これは罪を犯した人が題材になっています。
考えさせられます。
by ayu15 (2015-05-23 13:22)
シルベーヌさん
コメント有り難うございます。読み応えありました。
ayu15さん
ナイスコメントありがとうございます。
被害者心情との葛藤、そうなんです。
必ず、はっきりした答えの出せない、そういう問題にぶつかるのです。
でも、それが必要な「悩み」なり「迷い」なのだと思います。
一番しんどいところなのですが…
shiraさん
ナイス有り難うございます。
心如さん
ナイス有り難うございます。
by hm (2015-05-29 18:53)