裁判上の和解には強制力がある [法律案内]
私たちが日頃扱う民事事件は、結局のところ、何らかの形で、そのトラブルを解決することを究極の目的とします。
どれだけ勝つにせよ、負けるにせよ、最終的には何らかの解決をして、トラブルを取り除くことが大切です。
「和解による解決」というのは、それなりに優れた解決の1つです。
事柄によってはどうしても判決で白黒つける必要がある場合もありますが、当事者が合意して解決するのが良い場合も多いです。
過去にも和解について記事を書いたことがあります。
http://h-m-d.blog.so-net.ne.jp/2007-11-08 裁判所が和解を勧めることのあれこれ~薬害肝炎事件のニュースから
さて今日は「和解」(「示談」というのも同じ意味です)について、種類があることをお話しします。
大きく分けて、
A 裁判外の和解 B 裁判上の和解
です。
どちらも和解なのですが、「強制力」に違いがあります。
ここでいう「強制力」というのは、和解に定めた内容に従わない場合に、
強制執行 … その人の資産(不動産、預金、現金、給料など)に差押えなどをして、そこからお金を回収すること
が出来る、ということを意味します。
ですから、本当に「逆さに振っても一文もない」という人に対してはやはり無力です。が、何らかの資産がある人に対しては、一定の効果があります。
A裁判「外」の和解の場合は、その和解だけでは強制力がありません。
普通の方法で「和解書」を作ったとします。
例えば、「太郎は次郎に対して、平成25年12月31日限り、金100万円を支払う。」という内容を書いて双方が署名押印をすれば、それが便せんに書かれたものでも何でも有効です。
ただし、その約束が実行されなかったときでも、その「和解書」があることでいきなり「強制執行」(相手の預金に対する差押えなど)はできません。
できるのは、「和解書通りに払ってくれ」という訴えを起こすことです。
訴えを起こして判決をもらって、判決が確定して、初めて差押えなどの強制執行が可能になるのです。
要するに、「和解書」があっても、実行されなければ裁判しなければならない、のです。
これに対して、B裁判「上」の和解は効力が違います。
裁判を起こした上で、その裁判の途中に、裁判所で和解する場合は、「和解書」ではなくて、「和解調書」を作ります。
これは、当事者同士が判を押してつくるものではなく、裁判所が作ってくれます。
そして、この「和解調書」がとても効力をもつのです。
「和解調書」は、確定した判決と同じく、「強制力」があります。
つまり、その「和解調書」という文書に基づいて、相手の預金に対する差押えなどの強制執行をすることが出来るのです。
つまり、和解内容が実行されなかったときに、再度裁判を起こす必要はないということです。
ストレートに、「和解調書」に基づき、差押え等をすることになります。
そういう意味で、たとえば、相手に対する請求金があって、相手がすぐに全額を用意できないと分かっている場合でも、裁判を起こし、裁判の中で「裁判上の和解」をしておくことは意味のあることです。
なお、「和解調書」のように、その文書に基づいて強制執行(相手財産に対する差押えなど)ができる文書のことを「債務名義」と呼びます。
「債務名義」には、
確定した判決
和解調書
のほか
仮執行宣言の付いた判決
仮執行宣言の付いた支払督促
調停調書
強制執行を認める文言の入った公正証書
などがあります。
訴訟(通常の裁判)ではなくて、民事調停を起こしその中で合意して「調停調書」を作った場合でも、同じ「強制力」を得ることができます。
公正証書を作成する方法でも「強制力」を得ることができます。
なお、逆に借金をする場合などは、上記のような文書を作成するということになると、返済できなければ、場合によって強制執行(差押えなど)される可能性があるということを知っておく必要があります。
村上英樹(弁護士、神戸シーサイド法律事務所)
どれだけ勝つにせよ、負けるにせよ、最終的には何らかの解決をして、トラブルを取り除くことが大切です。
「和解による解決」というのは、それなりに優れた解決の1つです。
事柄によってはどうしても判決で白黒つける必要がある場合もありますが、当事者が合意して解決するのが良い場合も多いです。
過去にも和解について記事を書いたことがあります。
http://h-m-d.blog.so-net.ne.jp/2007-11-08 裁判所が和解を勧めることのあれこれ~薬害肝炎事件のニュースから
さて今日は「和解」(「示談」というのも同じ意味です)について、種類があることをお話しします。
大きく分けて、
A 裁判外の和解 B 裁判上の和解
です。
どちらも和解なのですが、「強制力」に違いがあります。
ここでいう「強制力」というのは、和解に定めた内容に従わない場合に、
強制執行 … その人の資産(不動産、預金、現金、給料など)に差押えなどをして、そこからお金を回収すること
が出来る、ということを意味します。
ですから、本当に「逆さに振っても一文もない」という人に対してはやはり無力です。が、何らかの資産がある人に対しては、一定の効果があります。
A裁判「外」の和解の場合は、その和解だけでは強制力がありません。
普通の方法で「和解書」を作ったとします。
例えば、「太郎は次郎に対して、平成25年12月31日限り、金100万円を支払う。」という内容を書いて双方が署名押印をすれば、それが便せんに書かれたものでも何でも有効です。
ただし、その約束が実行されなかったときでも、その「和解書」があることでいきなり「強制執行」(相手の預金に対する差押えなど)はできません。
できるのは、「和解書通りに払ってくれ」という訴えを起こすことです。
訴えを起こして判決をもらって、判決が確定して、初めて差押えなどの強制執行が可能になるのです。
要するに、「和解書」があっても、実行されなければ裁判しなければならない、のです。
これに対して、B裁判「上」の和解は効力が違います。
裁判を起こした上で、その裁判の途中に、裁判所で和解する場合は、「和解書」ではなくて、「和解調書」を作ります。
これは、当事者同士が判を押してつくるものではなく、裁判所が作ってくれます。
そして、この「和解調書」がとても効力をもつのです。
「和解調書」は、確定した判決と同じく、「強制力」があります。
つまり、その「和解調書」という文書に基づいて、相手の預金に対する差押えなどの強制執行をすることが出来るのです。
つまり、和解内容が実行されなかったときに、再度裁判を起こす必要はないということです。
ストレートに、「和解調書」に基づき、差押え等をすることになります。
そういう意味で、たとえば、相手に対する請求金があって、相手がすぐに全額を用意できないと分かっている場合でも、裁判を起こし、裁判の中で「裁判上の和解」をしておくことは意味のあることです。
なお、「和解調書」のように、その文書に基づいて強制執行(相手財産に対する差押えなど)ができる文書のことを「債務名義」と呼びます。
「債務名義」には、
確定した判決
和解調書
のほか
仮執行宣言の付いた判決
仮執行宣言の付いた支払督促
調停調書
強制執行を認める文言の入った公正証書
などがあります。
訴訟(通常の裁判)ではなくて、民事調停を起こしその中で合意して「調停調書」を作った場合でも、同じ「強制力」を得ることができます。
公正証書を作成する方法でも「強制力」を得ることができます。
なお、逆に借金をする場合などは、上記のような文書を作成するということになると、返済できなければ、場合によって強制執行(差押えなど)される可能性があるということを知っておく必要があります。
村上英樹(弁護士、神戸シーサイド法律事務所)
2013-09-25 20:01
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コメント(7)
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「和解」っていうと何となくヌルい響きがするんですけど、裁判での和解は法的拘束力があるんですね。勉強になりました。
実は今日、某大学のAO入試を受ける生徒が練習問題として九州大法学部の小論問題をやってきたのですけど(出題形式が某大学に似ているので)、中身は賠償に関するものでした。hmさんのブログでいささか法律をかじっていたことが役に立ったことをご報告しておきます。ありがとうございます。
by shira (2013-09-26 21:36)
shiraさん
ナイス・コメントありがとうございます。
はい、「和解調書」というのは、名前のわりに(?)強力です。
小論の件、お役に立ったなら、うれしい限りです。
by hm (2013-09-27 11:52)
心如さん
ナイスありがとうございます。
by hm (2013-09-27 11:52)
まあ法人相手では、夜逃げされるか、相手が解散しちゃうかで泣き寝入りがオチかとおもえますが・・。
ただの絵に描いたもちならぬ紙きれのようで・・・。
by ayu15 (2013-10-23 08:31)
ayuさん
法人で引き当てとなる財産が全く無ければ、どちらにせよ回収は困難です。個人でも同様です。
相手に何らかの財産なり、収入なりがあり得るという前提でしか、回収と言うことは現実に考えることは出来ませんね。(お金が降ってくるわけではないので、当たり前といえば当たり前ですが…)
by hm (2013-10-23 09:33)
収入があっても「連絡なしに転居」されたらおわりです。
by ayu15 (2013-10-23 20:35)
初めまして。和解調書に強制力があることがわかりました。
知人の問題に絡んでおりまして、すこし疑問に思うこともあり質問させていただきます。
和解調書を結んだのですが、被告となった人物が誤りを認め、負担割合9:1ぐらいで、被告側が9割のところ、10割負担するので、ほんのすこし勘弁して欲しいところがあるので、示談したといいって、相手がそれを受け入れたら、和解調書が無効になりますか?
by kitokito (2018-07-27 18:55)