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センター試験廃止で競争軽減になるか [だから,今日より明日(教育)]

 少し前のニュースによれば、政府の教育再生実行会議が、センター試験を廃止して、高校2年の段階から年2,3回実施される到達度テストが代替する、という議論をしているそうです。

 確かに、大学受験は一発勝負ですから、受験生のプレッシャーはかなりのものです。私もそうでした。病気などが一番怖かったです。
 ですから、年間何回かのテストで見てもらえたらその方が楽かな、と高校生のときに思ったこともありました。
 
 大学受験競争の激しさを緩和するための方策が練られていること自体は良いことだと思います。
 
 ただ、このセンター廃止策が悪く作用すると、高校の置かれた現場がさらに競争に振り回され、じっくりとした学びが出来なくなるのではないか?という危惧も感じます。
 
1 中高一貫の進学校は有利。公立高校(3年制)の進学校が大変では?

 早ければ高2から大学入試の結果に直接影響するテストがはじまるとすれば…

 例えば、 「高3の夏まで甲子園を目指し、それが終わったら猛勉強して東大を目指す。」という旧き良き理想的な(?)高校生活スタイルは危機にさらされます。

 ですが、中高一貫の進学校は、その影響を殆ど受けずに済むでしょう。
 私の高校時代でも、灘校では高1の冬にセンター試験問題を「実力テスト」としてやった記憶がありますが、数学は満点が続出、英語も9割以上が相当な割合でいました。
 要するに、中高一貫では、中1からの6年間があるわけですから、6年中の、前から4年半くらいで、ほぼ高校修了過程までやってしまうことは難しいことではありません。(私は高1から入りましたが、それでも、まあ同じ学校に入ってしまえば、何となく追いつきます。)
 進学校では、別に、スパルタ式でがんがんやらなくても、生徒が退屈しない程度のペースで進めれば高2に入って少ししたくらいで、ほぼ高校過程が終わります。
 もともとそういうペースでやっていますから、センター試験が廃止され、かわりに高2から「本番」が何回かに分けて始まることに不利はなく、次に述べる通常の「3年制」高校が大変であることを考えると、相対的に有利になるともいえるでしょう。
 
 一方、公立校では、高1段階でスタートですから3年しかありません。
 高2の途中から、入試「本番」テストがはじまるとしたら大変です。
 まあ言えば、生徒が入学してから1年半くらいで「結果」を求められるわけです。
 早期に「結果」を要求してロクなことになることは少ないと思います。特に教育では。
 受験直前期にはそれなりに点数が取れるようにしなければならないにしても、できるだけ長い間「目先の得点には直結しないけど、考え方の基礎をつくるうえで大切なこと」をじっくりやらないと、「伸び」がなくなります。暗記で点は取れても、応用力が要る問題には手も足もでなくなってしまいます。

 たとえ、「3年制」で準備期間が少なくても、作戦次第で、「何回かの習熟度テストの点数を尻上がりに上げていく」ことを念頭においた受験作戦が取れれば、成功の確率はあがると思います。
 つまり、早い時期の「到達度テスト」での点数だけでなく、その後の応用につながる基礎力の充実(内容的な充実)、言いかえると、「勉強していて、腹にすとーんと落ちる感覚を確認しながら勉強していること」に重きを置く作戦です。
 知識にしても、「皮」程度の知識をやたら増やすのではなく、「肉」や「血」となる知識を重要度の高いものから積み上げることを重視するのが良いと思います。
 そのスタンスでいて、それで対応出来ない部分は、早期の「到達度テスト」で多少点を落としても良い、という割り切りができたほうが、最終的には伸びが期待でき、目標に届きやすいのではないでしょうか?
 と思うのですが、やっぱり、「本番」テストが目の前に迫ると、そうはいかない人が多いんじゃないかな、また、保護者も「結果を出してくれ」と求めてしまうんじゃないかな、というのが懸念されます。

 そんなわけで、今は、私立だけでなく公立でも中高一貫は人気ですね。その傾向にさらに拍車がかかるのではないか、と思われます。


2 抜本的に「点数序列主義」を変えられるのであれば…

 この点を含む大学入試制度の「改革」が、大学がずらっと偏差値で輪切りにされて並び、そこに、自分の点数を照らして進路を決めるという状態そのものを揺さぶり、変えることに繋がるならば意味がある、と思います。

 学力の到達度テストの点数は点数として一定以上は入学に必要だけれども、それだけではない、大学の特色、学びの内容と、生徒の志向・意欲がいかにマッチするか、そういう部分が重視される選抜方式が増えるのがこれからの在り方なのでしょう。
 特に、私大はそういう傾向が強まるでしょうし、それは自然でいいことだと思います。

 もちろん、「とことん数学や物理が出来る人が集まって、『実に面白い』研究をする」大学は魅力的な特色を備えた大学です。
 ですが、違う種類の『実に面白い』大学、学部の在り方もあって良く、それは在り方の違いであって、価値序列がつけられるべきものではないですから。

 そんなことは分かっている。本当は、みんな分かっているのだけれど、センターの点数表でずらっと上から下に並べられたのを見ると、なんだか、やっぱり…と思えてしまう。
 だから、「『せめて』関関同立には入ってくれよな」なんていう、世間の七方向くらいに向けて失礼な発言を平気で子にする親も出現してしまう、というわけです。(註:関西では、名門私大4校として「関関同立」といわれています。ふつう、「お前、関関同立ならさぞモテるだろ」と言われる大学名です。)。それだって、心底子の幸せを願っている親の思いなわけですが、そうだとすればなおさら、「価値序列表」が多くの人の頭にこびりついている、というしるしです。

 そんなわけで、教育再生実行会議が、どれだけ本気で、子どもたちの学びの在り方について、「目先の結果」に振り回される要素を極力少なくして、

即席型の「飲み込み」ではなく、「じっくり噛んで味わって食べる」ような勉強

ができる環境を整える提言をしてくれるか、今後に注目させていただきたいと思います。


                                村上英樹(弁護士、神戸シーサイド法律事務所
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shira

 大学入試センターは以前もセンター試験の年2回実施を提案したことがあります。いろんな理由をつけてはいますが、独立法人ゆえ経営面の都合は大きいみたいです。つまり回数が増えれば収入が増えるというメリット。今回のもその延長線上にあるんじゃないでしょうかね。
 センター試験にももちろん欠点はありますけど、その欠点をなくしてなおかつ長所を消さない方法というのは、まずないと考えるべきでしょう。私はむしろ、長く続いた制度は細かい改良をたくさん経てそれなりに練られていますから、あまり「抜本的」に変えない方がいいと思います。
by shira (2013-06-22 21:26) 

Ladybird

 私も同じことを危惧しています.高校時代はもっと自由であって欲しいのに,大学入試1回だけでなく,ずっと縛られることになるのでは?

 「点数序列主義」は諸悪の根源です.点数で人をタテに並べて,それが「評価」のすべてであるというようなシステムを,またそのシステムを無批判に踏襲した発想を,日本人は改める必要があると思います.
by Ladybird (2013-06-23 07:25) 

hm

shiraさん 
 ナイスコメントありがとうございます。
 確かに。一発勝負が過酷というけれど、生徒(や先生)とすれば過酷な勝負が2回3回になるだけで、誰が得するか?という話かもしれませんね。
by hm (2013-07-01 14:57) 

hm

Ladybirdさん
 
 ナイス・コメントありがとうございます。
 
 本当に、評価の機会が増えて細かくなればなるほど、自由が侵食される、という恐れがありますね。
 
 どうやって自由な学びの場を確保するか、それが(多くの人にとって)今後の課題だと思います。


 
by hm (2013-07-01 15:03) 

hm

あーちゃん 
 ナイスありがとうございます。

心如さん

 ナイスありがとうございます。
by hm (2013-07-01 15:03) 

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