「運命の人」と秘密保全法制 [時事ニュースから]
TBSドラマ「運命の人」(山崎豊子さん原作)を見ています。
と、タイムリーに、私が兵庫県弁護士会で委員長をつとめる憲法委員会の関係で、政府が今国会に提出を予定しているとされる「秘密保全法制」(って、みなさん、そんなのが提出されようとしているのを知っておられました?)について、現時点での法制化に反対する(兵庫県弁護士会の)会長声明を出すということに関わることになりました。
「密約があることは・・・ ここに書いてあるじゃないか!」
という横溝議員(架空。ドラマ中の人。)の暴露から、
「だれがもらしたんやー」
ということになり、
記者と秘密文書を渡した国家公務員(女性)が訴追され、めまぐるしく展開…というのは、実話をモデルにしたドラマだけに、余計にエキサイティングですね。
それはさておき、今の政府が、
秘密保全法制 というのを作ろうとしていて、その土台となる有識者会議の報告書というのがあるのですが、
その内容は、現在の国家秘密の保全のための法の規定(たとえば、ドラマで「三木あきこ」や「弓成」記者が訴追されることになった国家公務員法。また、防衛に関するものでは、既に自衛隊法に色々定めがある)とくらべて、
「秘密」とする範囲が広くなる
処罰範囲が広くなる
「秘密」を取り扱う者について、活動歴の調査がされる
などの違いがあり、要するに、「表現の自由」や「知る権利」への制約が強くなる方向であることは間違いなく、さらに、「どこまで処罰の対象となるかが不明確になる」おそれもありそうです。
なので、憲法が保障する人権を守る立場にある弁護士会としてはこれに反対する、というわけです。
国家秘密といっても、「秘密」の指定の仕方によっては、
・ 本当は国民が知ったほうが役に立ちオープンにするのが国益に適う情報なのに、とりあえず時の政府に都合が悪いから「秘密」としてしまう
などの恐れがあります。
もちろん、「秘密」にしなければ国家が機能を果たさないという種類のことだってあります。
だから、国家機密を守る必要性というのはあります。それは当然のことです。
ドラマでも「三木あきこ」(真木よう子演)が、「弓成」記者(モックン演)に、秘密文書を渡したのは、公務員の職務としては悪いことに違いありませんよね。たとえ、内容が、沖縄返還密約であろうとそうでなかろうと。
ただし、「国家機密を守る」というお題目のために、表現の自由や知る権利の制約の度合いが大きくなることに対しては、基本的な姿勢として、私たち国民は警戒すべきものだとおもっています。
要するに、
国家機密を守る必要性 vs 表現の自由 知る権利
というのが対立している場合でも、もし、その社会で「表現の自由」「知る権利」が「死んで」しまったら戦前の日本と同じで国家そのものがとてつもなくおかしな方向に行く恐れがあることは忘れてはならない、のです。
なので、 国家機密 vs 表現の自由 知る権利 の一方に偏ることはできず、「調整」はしなければならないのですが、これは、とてもデリケートな問題として、丁寧に考えなくてはなりません。
表現の自由、知る権利 は、無制約なものではないけれど、 制約される場合でも最小限の制約である必要がある
というのが大事なことなのです。これは最高裁も言っていることですし、今の政治家でもこのことを否定する人はおそらくごく少数です。
というようなことを、私も、ドラマの御陰もあって、今の時期は自分なりに考えるきっかけができたなあ、と感じています。
ドラマを見ておられる方で、日頃、「表現の自由」について余り意識したことがなかった方は是非、
国家機密 vs 表現の自由、知る権利
について、意識して色んなニュースや文章を見て頂ければ、今までとは世の中が違ってみえる、ということがあるかもしれません。
どちらをどれだけ重視するか、法案への賛否なんかは、人それぞれでいいですから、ともかくも、こういう図式(国家機密 vs 表現の自由)を意識してみんなが考える、ということが大切だと思います。
(参考)
日弁連HP 日弁連会長声明
http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2012/120111.html
と、タイムリーに、私が兵庫県弁護士会で委員長をつとめる憲法委員会の関係で、政府が今国会に提出を予定しているとされる「秘密保全法制」(って、みなさん、そんなのが提出されようとしているのを知っておられました?)について、現時点での法制化に反対する(兵庫県弁護士会の)会長声明を出すということに関わることになりました。
「密約があることは・・・ ここに書いてあるじゃないか!」
という横溝議員(架空。ドラマ中の人。)の暴露から、
「だれがもらしたんやー」
ということになり、
記者と秘密文書を渡した国家公務員(女性)が訴追され、めまぐるしく展開…というのは、実話をモデルにしたドラマだけに、余計にエキサイティングですね。
それはさておき、今の政府が、
秘密保全法制 というのを作ろうとしていて、その土台となる有識者会議の報告書というのがあるのですが、
その内容は、現在の国家秘密の保全のための法の規定(たとえば、ドラマで「三木あきこ」や「弓成」記者が訴追されることになった国家公務員法。また、防衛に関するものでは、既に自衛隊法に色々定めがある)とくらべて、
「秘密」とする範囲が広くなる
処罰範囲が広くなる
「秘密」を取り扱う者について、活動歴の調査がされる
などの違いがあり、要するに、「表現の自由」や「知る権利」への制約が強くなる方向であることは間違いなく、さらに、「どこまで処罰の対象となるかが不明確になる」おそれもありそうです。
なので、憲法が保障する人権を守る立場にある弁護士会としてはこれに反対する、というわけです。
国家秘密といっても、「秘密」の指定の仕方によっては、
・ 本当は国民が知ったほうが役に立ちオープンにするのが国益に適う情報なのに、とりあえず時の政府に都合が悪いから「秘密」としてしまう
などの恐れがあります。
もちろん、「秘密」にしなければ国家が機能を果たさないという種類のことだってあります。
だから、国家機密を守る必要性というのはあります。それは当然のことです。
ドラマでも「三木あきこ」(真木よう子演)が、「弓成」記者(モックン演)に、秘密文書を渡したのは、公務員の職務としては悪いことに違いありませんよね。たとえ、内容が、沖縄返還密約であろうとそうでなかろうと。
ただし、「国家機密を守る」というお題目のために、表現の自由や知る権利の制約の度合いが大きくなることに対しては、基本的な姿勢として、私たち国民は警戒すべきものだとおもっています。
要するに、
国家機密を守る必要性 vs 表現の自由 知る権利
というのが対立している場合でも、もし、その社会で「表現の自由」「知る権利」が「死んで」しまったら戦前の日本と同じで国家そのものがとてつもなくおかしな方向に行く恐れがあることは忘れてはならない、のです。
なので、 国家機密 vs 表現の自由 知る権利 の一方に偏ることはできず、「調整」はしなければならないのですが、これは、とてもデリケートな問題として、丁寧に考えなくてはなりません。
表現の自由、知る権利 は、無制約なものではないけれど、 制約される場合でも最小限の制約である必要がある
というのが大事なことなのです。これは最高裁も言っていることですし、今の政治家でもこのことを否定する人はおそらくごく少数です。
というようなことを、私も、ドラマの御陰もあって、今の時期は自分なりに考えるきっかけができたなあ、と感じています。
ドラマを見ておられる方で、日頃、「表現の自由」について余り意識したことがなかった方は是非、
国家機密 vs 表現の自由、知る権利
について、意識して色んなニュースや文章を見て頂ければ、今までとは世の中が違ってみえる、ということがあるかもしれません。
どちらをどれだけ重視するか、法案への賛否なんかは、人それぞれでいいですから、ともかくも、こういう図式(国家機密 vs 表現の自由)を意識してみんなが考える、ということが大切だと思います。
(参考)
日弁連HP 日弁連会長声明
http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2012/120111.html
2012-02-22 18:15
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「国家機密を守る」というお題目のために・・中略・・警戒すべきものだとおもっています。
ほんとそうですね。
脱線しますが表現の自由とかはいろんなとこで問題になるようですね。
以前書きましたが
個人情報を報道したり、秘密暴露も報道側は言論の自由を理由にしてるようで。
自由をいう概念はいろいろ問題にされたり批判浴びるようにも思えます。
うちの個人的で漠然とした不安はなんか世論も法制度も
法人に甘く自然人に厳しく(特に少数派)感じられます。
報道の自由が保証されないととんでもないことになりかねないでしょうが、でも表現の自由・報道の自由が一個人の社会生活を簡単に壊してしまうことも。
by ayu15 (2012-02-22 21:30)
ayuさんありがとうございます。
国家権力 vs マスコミ の図式と
マスコミ vs 個人 の図式は、
大分考え方を変えてみなければならないところがありますね。同感です。
後者の図式の場合は、マスコミはある種の「権力」みたいなところがありますから。
by hm (2012-02-23 10:34)