原発事故・損害賠償マニュアル 日弁連編 日本加除出版(株) [くらしと安全(交通事故その他)]
http://www.kajo.co.jp/book/40438000001.html
昨日、注文していたタイトルの本が届きました。
神戸市に事務所がある私のところに、原発事故賠償の相談があるかどうかは分かりませんが、ともかくも、重要な、大変な問題です。
ぱらぱらと読んでいるのですが、内容が濃いようです。
「マニュアル」というタイトルがついていますが、単なる「マニュアル」ではなく、政府の指針をカバーしつつも、それを杓子定規に適用して答えを出すだけではなく、さらにぐっと踏み込んだ考え方まで解説されています。
可能な限り被害の実態に寄り添い、万全の賠償を得られるように役立つように、というスタンスで書かれています。
たとえば、野菜のいわゆる「風評被害」について、次のような問題について。
(引用)
Q77 A県産のホウレン草から暫定基準値を超える放射性物質が検出されたために、A県産の他の野菜(トマトなども)も売れなくなった。トマトからは暫定規制値を超える放射性物質は検出されていないが、損害賠償請求は可能か。
(引用終り)
ここでいわゆる「風評被害」について問題となるわけですが、この本の解説は次の通り、
(引用)
中間指針において指摘されるとおり、いわゆる風評被害という表現は、放射性物質等による危険がないのに消費者や取引先が危険性を心配して商品やサービスの購入・取引を回避する不安心理に起因する損害という意味で使われることもあるが、少なくとも本件事故においては、必ずしも科学的に明確でない放射性物質による汚染の危険を回避するための市場の拒絶反応による損害と考えるべきである。
この場合、風評被害は、ある種の実害という側面を持つものであり、合理性が認められる限り、広く損害賠償の対象として救済されるべきである。
(引用終り)
という考え方から、平均的・一般的な人を基準として、このような事情があれば野菜であれば他の品目についても危険性を懸念し、敬遠したくなるのが無理のないことかどうか、という基準で判断し、
Q77の場合も、買い控え等により被った営業損害、就労不能等に伴う損害、検査費用について賠償請求が可能である
という回答をしています。
「風評被害」という言葉が適切か?についてそもそも問題があるのだけれど、政府の中間指針でもこの言葉が使われているので無視は出来ない。
でも、その被害の本体は「実害」という面をちゃんと持っているのだ、ということを押さえた上での解説がなされています。
執筆者の方がここをきっちり押さえられて記述されていることは、実に行き届いたことだと感じます。
この本が、役に立つことは間違いない。
賠償を行う側(東京電力など)の方々にも是非熟読して頂き、肝心の所をよく分かって頂いた上で、どうか今回ばかりは「支払う側、受け取る側」の利害対立ということにとらわれずに、相手の立場への十分な配慮に基づいて、賠償実務に望んで頂きたい、と思いました。
昨日、注文していたタイトルの本が届きました。
神戸市に事務所がある私のところに、原発事故賠償の相談があるかどうかは分かりませんが、ともかくも、重要な、大変な問題です。
ぱらぱらと読んでいるのですが、内容が濃いようです。
「マニュアル」というタイトルがついていますが、単なる「マニュアル」ではなく、政府の指針をカバーしつつも、それを杓子定規に適用して答えを出すだけではなく、さらにぐっと踏み込んだ考え方まで解説されています。
可能な限り被害の実態に寄り添い、万全の賠償を得られるように役立つように、というスタンスで書かれています。
たとえば、野菜のいわゆる「風評被害」について、次のような問題について。
(引用)
Q77 A県産のホウレン草から暫定基準値を超える放射性物質が検出されたために、A県産の他の野菜(トマトなども)も売れなくなった。トマトからは暫定規制値を超える放射性物質は検出されていないが、損害賠償請求は可能か。
(引用終り)
ここでいわゆる「風評被害」について問題となるわけですが、この本の解説は次の通り、
(引用)
中間指針において指摘されるとおり、いわゆる風評被害という表現は、放射性物質等による危険がないのに消費者や取引先が危険性を心配して商品やサービスの購入・取引を回避する不安心理に起因する損害という意味で使われることもあるが、少なくとも本件事故においては、必ずしも科学的に明確でない放射性物質による汚染の危険を回避するための市場の拒絶反応による損害と考えるべきである。
この場合、風評被害は、ある種の実害という側面を持つものであり、合理性が認められる限り、広く損害賠償の対象として救済されるべきである。
(引用終り)
という考え方から、平均的・一般的な人を基準として、このような事情があれば野菜であれば他の品目についても危険性を懸念し、敬遠したくなるのが無理のないことかどうか、という基準で判断し、
Q77の場合も、買い控え等により被った営業損害、就労不能等に伴う損害、検査費用について賠償請求が可能である
という回答をしています。
「風評被害」という言葉が適切か?についてそもそも問題があるのだけれど、政府の中間指針でもこの言葉が使われているので無視は出来ない。
でも、その被害の本体は「実害」という面をちゃんと持っているのだ、ということを押さえた上での解説がなされています。
執筆者の方がここをきっちり押さえられて記述されていることは、実に行き届いたことだと感じます。
この本が、役に立つことは間違いない。
賠償を行う側(東京電力など)の方々にも是非熟読して頂き、肝心の所をよく分かって頂いた上で、どうか今回ばかりは「支払う側、受け取る側」の利害対立ということにとらわれずに、相手の立場への十分な配慮に基づいて、賠償実務に望んで頂きたい、と思いました。
2011-09-30 16:37
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よさそうですね。
送り火で風評被害と叩かれたのでうちも風評被害はとりあげています。
これによると「風評被害」も損害賠償の対象なんですよね。
でもまさか請求先が買わなかった人たちなんてことないですよね?
by ayu15 (2011-11-07 13:37)