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本筋・俗筋(囲碁)  と  法律にまつわる本説・俗説  [法律案内]

 みなさん、昨日、囲碁の新名人、それも関西初の名人、それも20歳という最年少の名人が誕生したのをご存じですか?
 
 (ゴルフ界における石川遼選手のような存在である)井山裕太8段が、張ウ名人を破り、新名人になりました。

 実は、私も今年の4月から囲碁をはじめて半年になります。
  
 今年、私の所属する神戸シーサイド事務所に入った新人弁護士のTさんは、囲碁の有段者です。
 「4月からNHK囲碁講座で石倉昇九段の分かりやすい入門講座が始まるので、村上センセも、囲碁をはじめられてはどうですか?」と勧めてくれたので、33の手習いで、囲碁をはじめることにしました。

 私の囲碁・将棋等については、おそらくお世辞で「さぞやお強いのでしょう」と言ってくださる方が多いのですが、囲碁は当分は級位者レベル(将棋は「あやしい初段」)です。

 なかなか難しいもので、たまに、囲碁の打ち方の本を読んでみたりします。例えば、↓のような本。



ひと目でわかる「本筋・俗筋」対照表 (マイコミ囲碁文庫シリーズ)

ひと目でわかる「本筋・俗筋」対照表 (マイコミ囲碁文庫シリーズ)

  • 作者: 月刊碁学
  • 出版社/メーカー: 毎日コミュニケーションズ
  • 発売日: 2008/07/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



 こういう本を読むと、「私だったらきっとこう打つな~」という手が、ことごとく、

俗筋=初級者が陥りやすい悪手

として紹介されています。「俺だって、それなりに考えてるのに~ぷんぷん」と思いながら、「本筋」はどういうものかを謙虚に勉強しよう、という私の囲碁ライフです。


 さて、さて、囲碁や将棋に、「俗筋」があるように、法律問題にまつわる「俗説」もたくさんあります。
 
 一般には、法律問題は難しい、ややこしい、怖い?というイメージがあるので、かえって「俗説」がたくさん生まれたりするようです。

 今日は、そのうち2例を紹介して、「本説」を解説したいと思います。(囲碁では「俗筋」とばっかり言われてしまうので、その分、本職のほうで偉そうに「俗筋」「本筋」を解説している、という見方をされる読者の方いらっしゃると思います。全くその通りです。)



法律にまわわる俗説1   「離婚は言い出したほうが不利」


 これは、本当によく言われます。
 なぜこういう説が流れるのか、と思いますが、何も知らずにそう言われるとそうなのか、と思ってしまうので怖いものです。

【本説】
 
 離婚原因は民法で決まっています。不貞行為とか色々のほか「婚姻を継続しがたい重大な事由」があるとき、ということなので、離婚理由があって、どうしても離婚したい、と思えば、

「離婚したい」

と言い出すことは法律上も認められているし、何も不利になるようなことはありません。

 もちろん、婚姻はお互いの協力・努力によって維持するのが「本筋」ですので、はっきりした理由もなく「離婚したい」などと言い出すべきものではありませんが、それとて、本心から離婚したいと思うのならば、そう思っていることを相手に告げることは別に不利でも何でもありません。 
 
 また、離婚時の慰謝料についても、「先に離婚を言い出した」という理由だけで慰謝料が発生するということは考えにくいです。



法律にまつわる俗説2   「交渉で、金額を出したら恐喝になる」

 これも頻繁に聞きます。
 たとえば、AさんがBさんを怪我させたという事故?事件?があったとして、AさんがBさんに賠償すべき金額を交渉する場合。
 BさんがAさんに損害賠償請求します。
 ところが、このとき、いくら
「Bさん、あなたは、何円賠償して欲しいのですか?」
と聞いても、答えないBさんがいるのです。
 なぜ金額を言わないか?
 「金額を言わない=言わせる作戦」のこともあります。
 それだったらわかりますが、どっこい、作戦ではなくて、Bさんの心中=「交渉で、金額を出したら恐喝になる」であることがしばしばあります。

【本説】
 損害賠償請求にせよ、何にせよ、まず請求する側が具体的な請求内容(つまり金額)をいうべきものです。
 そうしなければはじまりません。
 請求側(B)の請求額が100万円であったとして、Aさんの考えが0円か50万円かということによって、やっと、紛争がどういう内容と幅を持ったものであるかが決まります。
 そのあとに、その幅の中で、何円と決めるのが妥当かを話し合ったり、場合によっては訴訟で調べて決めたりすることになるのです。
 請求するときに具体的金額を提示するのは当たり前で、それが理由で恐喝になることはありません。



 他にも色々「俗説」があって、惑わされている方が多いです。

 法律問題の場合、本当に困るのは、専門家ではなくて、「何となく法律に詳しいと自称している人」が「俗説」に代表される間違ったアドバイス・不正確な情報を教えてしまい、トラブルに困っている人を余計混乱させてしまったりすることです。

 「法学部出身で詳しい」とか「昔、司法試験の勉強をしていたので詳しい」とか言う人の中に、本当にちゃんとした知識があって詳しい人も居ますが、一方、知ったかぶりで、不正確な知識をトラブルの渦中にある人に注入したりすることがあって、不必要に困ったことを招いてしまうケースは残念ながら多いです。 「法律」については「教えたがり」の人が本当に多いです。


 なので、何か法律がからむようなトラブルに見舞われたとき、友人・知人に相談するのもいいですが、専門知識については余り鵜呑みにせずに、自分で調べるか、弁護士に早期に相談されることをお勧めします。
 
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ayu15

 囲碁の話、新聞に載ってました。余談ですが本因坊発祥の地?という碑が京都にあります。
 
離婚て相手がいかに悪いかをののしりあう自己中?にならざるを得ないどろ試合?という印象です。

そうならないように努力したいです。でも社会的にもそれを支援でくる寛容であたたかい社会だといいですね。落語ならご隠居さんがでてきて一件落着なんですが。
by ayu15 (2009-10-17 09:07) 

hm

>ayu15さん

 離婚訴訟は当事者にとっても負担の大きいものです、確かに。

 囲碁のニュースでは珍しく、井山名人の話は、神戸新聞でも「ひと」欄に載るなど大きく取り上げられていました。
 
 
by hm (2009-10-20 16:29) 

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