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ノーベル賞に心躍らせる秋 [だから,今日より明日(教育)]

 日本人4人がノーベル賞受賞のニュース。
 本当にいいニュースです。
 嬉しいです。わくわくします。

 私がノーベル賞というものを知ったのは、ゲームだったか本だったか、何かにひょこっと「ノーベル賞」という言葉が出てきたのがきっかけです。
 子どもの時の私は、背はクラスで二番目に低く、今以上にひょろひょろで、スポーツはマラソン以外中の下で、ケンカは弱小キャラで、勉強が出来たのと、お茶目なことが取り柄でした。
 いくらテストで百点を連発しても、結局は、クラスの女子の人気はスポーツ万能の子に奪われてしまうのが、とても悔しく、「ガリ勉」系は何か報われないなあ、と思いつつ暮らしていました。
 そんなときに、ノーベル賞とは何か、ということを教えてくれた大人(親だったか親戚のおっちゃんか先生か忘れましたが)は、
「ひできくんなら、将来ノーベル賞を取るかも知れないね。そう、昔ノーベル賞とった人も『ひでき』って名前だったんだよ(湯川秀樹教授のこと)。」
と言ってくれました。
 そう、「ガリ勉」系の子にも希望がある、夢がある、脚光を浴びるチャンスがある、モテるチャンスがあるということを知り、とても嬉しかったのです。
 それが私にとってのノーベル賞との出会いでした。
 
 ただし、私の子どもの時思っていた「将来ノーベル賞を取った物理学者の私」像は、今回受賞された南部教授らのような成熟されたお姿ではなくて、ドラマ「ガリレオ」の湯川教授(福山雅治)みたいな感じで、そのへんが受賞年齢等からしてアリエナイことなのですが。

 しかししかし、時は経ち、自分のことがもう少し分かってくると、
「自分は、地味なことをひたすらコツコツと何十年も続けられるタイプというより、『出たがり』『目立ちたがり』である。」
ということで、とりあえず、ノーベル物理学賞、化学賞というような道からは随分それてしまいました。

 でもまだあきらめてはいませんよー
 日本人の過去受賞が新聞に載っていましたが、

ノーベル平和賞  佐藤栄作
ノーベル文学賞  大江健三郎

 こんなのがあるじゃないか!と。
 いやいや、しかし、両名とも大変なことをなさった方でしょうから、易々と、私も取れちゃう、とは言えませんが、世の中何があるか分かりませんからねー


ノーベル賞 忘れた頃に やってくる     字余り??
  

 さてさて、今回は、物理化学で4人も受賞ということですごいなあ、と思うのですが、日本には今「科学立国」プロジェクトみたいなのがあるらしいです。
 今までよりももっとたくさんノーベル賞受賞者を輩出しよう、というプラン。
 良いことだと思いますが、その作戦について私の意見は次の通りです。


1 「小数のエリートを囲い込んでにんじんぶら下げてシリをたたくより、裾野を広げて自然と天才が生まれてくる環境をつくったほうがいいんじゃないか?」
 
 教育に対する国の役割、学問に対する国の役割は「環境整備」です。
 国は、下村先生(化学賞)のような方が思う存分自由に研究できる環境を整備する裏方でよいのです。いや、裏方に徹することがよいはずだ、と思います。
 無理にエリートだけ集めて「やらせても」、めざましい成果があがるかは疑問です。ちょっとやそっと勉強が出来る子を囲い込んで研究させても、そこそこの成果はでても、ノーベル賞まではなかなかいきません。だって、もし私が「ちょっと成績がいい」くらいの理由で、たとえ高給を保証されて「クラゲのタンパク質研究」を毎日やれ、と言われても、下村先生のような情熱をもって続けられるわけありませんもん。
 やっぱり、人から見ると変なことでも、やりたいと思ってやり続ける情熱が内部から湧いてくる人でなければ、ノーベル賞は無理です。
 「裾野を広げる」というのは、端的に言って、ドラマ「ガリレオ」。たくさんの子どもたちが、科学って面白いなあ、いや、「実に面白い」(福山風)に思えるきっかけ、チャンスに溢れるようにするというのがいいなあ、ということです。
 そしたら世の中に天才はどっかに埋もれているものですから、将来の湯川秀樹先生、下村先生、白川先生、南部先生が生まれる可能性が高くなるわけです。
 要するに、ノーベル賞受賞者の方を見ていると、すごいのは内なるパワーがすごいんだな、と思うわけです。


2 「産学連携もいいけど、実用性ばっかり追い求めたらノーベル賞は遠のくのじゃないか?だから、マニアックなオタク的研究者を大切にしよう!」

 実用にすぐ役立つ産学連携。それもいいでしょう。でも、そっちばっかり追い求めるのは危険。
 でも、研究の成果というのは、すぐに役立つものばかりじゃない。
「クラゲの緑色発光のタンパク質なんて、何の使い道もない。」
という話だったらしいです。当初は。
 ところが、今は、ガン細胞の変化などを色づけするマーカーのようなすごい役割を果たすというのですから!
 学問ってのは、「実用に役立つ」のがメインではなく、あくまで、「真理の探求」であって、それでよいのだ、と今回改めて思いました。
「うっわー。マニアックやなあ。何の役に立つのそれ?」
という研究を、やりたい人が思う存分出来る、大学はそんな場であってよい、と私は思います。


3 「教育現場をもっとおおらかにしよう!テストで競争しても、天才を生まないよ!」
 
 今回のノーベル賞を取った先生たちを想像してみましょう。
 もちろん学校に通っていて試験もあっただろうけど、どんな子どもだったでしょうか?
 テストの点が第一でいつもカリカリしていた子ども?
 絶対違うでしょうよ。
 目の前のテストの1点、2点よりも、もっと自分の内なる心に目を向けて、本当にやりたいことを全力でやる、それだから人生は楽しい、みたいな子どもだったんじゃないでしょうか?
 全国一斉学力テストの公表云々が問題になっています。行政情報だから公開せよ、という「知る権利」の意味では、公表する方向での理由もあるのはあります。
 ただ、「点数公表して自治体で競う」という発想は嫌いです。
 現場がギスギスします。先生が、子どもを見て、(その子のためじゃなくて、学校や市町村の成績のため)「点を取らせよう」と思うように仕向けるなんて、私は嫌いです。競走馬じゃあるまいし。そんな環境では、隠れた天才も、いじけて、科学に対する純粋な興味を喪失してしまうかも。そしたらその子にとっても社会にとっても大きなマイナスです。
 そんな風ではなく、子どもたちの色んな「心の底から湧き上がってくるもの」に働きかける、それを大切にする、認めてあげるような教育現場であれば、と思います。


 ノーベル賞じゃなくても、何でもいい、ホームラン王でもいい、いやそんな陽の当たる成果じゃなくてもいいですが、出来るだけ、その人ひとりひとりが自分の持っているものを活かして、人生楽しめるような世界だったら素敵だなあ~と思うのです。
 「自己実現」ってやつ。
 そういう風な世界が実現していけば、自然、なかにノーベル賞受賞者が生まれてきたりするんだろう、と思います。
 この国から別にノーベル賞受賞者が出なくってもいいんだけど、あれ、出ちゃった、みたいな感じで。
 そんな夢のある世界に暮らしたいなあ、と思います。
 私の仕事の一つ一つも、(間接的に、であっても、顧客の皆様の憂いを軽減するなどのことによって)そんな世界を作る一助になればなあ、と思います。
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shira

 1〜3の提言は大賛成です。今、日本の大学はみんな悲鳴上げてますよ。小泉政権下に導入された大学の競争でもって、基礎研究がまるで弱体化したと。今回の受賞だって、みんなかなり昔の研究ですもんね。
 しかし、スウェーデンって国もなかなかしたたかですね。世界的には小国の部類なのに、ノーベル賞の権威は絶対に落とさないし、平和賞で国際政治への影響力もしっかりと発揮してみせるんですから。これだからヨーロッパは侮れないです。

by shira (2008-10-10 22:09) 

hm

shiraさん

 ナイス、コメントありがとうございます。
 本当に、「学び」「究め」の本質とは何か、それを外したら、いくら国際競争に勝とうったって的外れな努力になりますよねえ。
 
by hm (2008-10-13 20:55) 

ayu15

この際、国籍非公開で名前だけ公表とか。個人情報保護でかってに何人か報道したらいけないとか?
(笑い)
半分冗談です。

by ayu15 (2008-10-17 09:59) 

hm

ayuさん

 おっしゃるとおり、理念的には、国籍の垣根を越えて、素晴らしい業績をたたえるのがノーベル賞ですものね。ayuさんおっしゃるのも一つの正論かと思います。
by hm (2008-10-21 10:57) 

mai

shiraさんと同じく1〜3まで大賛成です。ノーベル賞も金メダルも、「この国から別に(ノーベル賞)受賞者が出なくってもいいんだけど、あれ、出ちゃった、みたいな感じ」って素敵です。

賞は目的ではなく結果。好きなことをしていたら後からついてきた・・・というような余裕のある社会がいいですね。

基本として「学ぶことは競争ではない」と思います。
by mai (2008-10-24 17:02) 

hm

maiさん
 ありがとうございます。
 うまくすれば、人の力が内から湧いてくる、ってのを妨げずサポートする、というのが21世紀の学び育ての潮流になってゆくんじゃないか、と思います。
 そういう風になるように、私も少しでも力を尽くしていきたいです。

 
 
 
by hm (2008-10-27 18:21) 

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