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ヤミ金は元本も返さなくて良い~最高裁判決 [消費者事件]

 これぞ法の番人らしい判決!拍手!

 実は、「ヤミ金に対しては元本を返さなくて良い」だけではなくて、「もしお金をヤミ金に支払った場合には、支払った金全額について、ヤミ金に損害賠償を求められる(元本を差し引いた差額ではなく、ヤミ金に渡した金額全額がもどってくる)」というところに最高裁の新しい判断があります。

 ヤミ金からは元本(貸し付けられた金)ももらってしまってよい、ということなのです。

 客が得しているように思えるけど、これでいいんですか?

 いいんです!! 

 まずは、ニュースをどうぞ。そのあと簡単に解説します。↓

(朝日ニュースより抜粋)

「元金も返済不要 五菱会のヤミ金被害で最高裁初判断」 2008年6月11日3時6分

 山口組系・旧五菱会のヤミ金融事件の統括者に対して愛媛県内の借り手11人が損害賠償を求めた訴訟の判決で、最高裁第三小法廷(那須弘平裁判長)は10日、「著しく高い金利で違法な貸し付けをした業者からは、利息だけでなく元金も含めて借り手が支払った全額を損害として取り戻せる」との初めての判断を示した。

 そのうえで、「借り手がヤミ金に支払った総額から、元金分を差し引いた金額」しか損害として認めなかった二審・高松高裁の判決を破棄。損害額を確定させるため、審理を高裁に差し戻した。

 判決に従えば、今後はヤミ金から法外に高い金利で借金した債務者は返済する必要がなく、返済したとしても取り戻せることになる。ヤミ金の厳しい取り立てに苦しむ債務者の保護につながる画期的な判断といえそうだ。

 また投資詐欺などでも、被害者が配当金を受け取った場合に「一部の返済を受けた」とはみなされず、出資した全額を損害として投資先に要求できる可能性が出てきた。

 訴えられていたのは、「ヤミ金の帝王」とも呼ばれた梶山進受刑者(58)=組織的犯罪処罰法違反で有罪確定。原告の借り手11人は、年利数百~数万%の高利で借金と返済を繰り返した。返済した元金と利息に加え、脅迫的な取り立てを受けた慰謝料などを合わせ計約3500万円の損害賠償を求めた。

 第三小法廷は「元金は違法な利益を得るという反倫理的行為の手段であり、貸した時点で不法な給付に当たるので、返済する必要がない。返済した場合も、損害額から除くことは許されない」との判断を示した。

 二審判決は、「元本分を差し引いた金額」を損害額と認定したものの、別の訴訟で札幌高裁判決などが、「元金も含めた全額」を損害と認めており、最高裁の判断が注目されていた。(岩田清隆)
                                                  (以上抜粋終わり)

 なぜ、客が、ヤミ金から借りた金を返さず、もらっちゃっていいのか?

 条文はこれです。


 (不法原因給付)  民法第708条1項     不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない。


 ヤミ金融は、登録せずに金貸しをすることなので、違法なことです。そして犯罪です。

 ですから、「不法な原因」にあたります。そのための「給付」つまり、客に金を貸したら、「返還を請求することができない」のです。

 だから、借りた金はもらっちゃってよい、のです。

 なぜなら、この民法708条のこころは、
「手の汚れた者を司法は助けない」(クリーンハンズの原則)であるから、なのです。
 ヤミ金業者のような「手の汚れた」者は、返還請求訴訟を起こしても、司法は助けませんよ、と言っているわけです。
 「お前が支払えと言える立場か!」ということです。

 さらに、この最高裁の判断によれば、ヤミ金の過酷な取り立てに怯えてこわごわ言われる金額を支払ってしまったとしても、支払ってしまった金額全額を取り戻せることになります。

 この点については、今までの裁判では、ヤミ金側が「そんなこと言っても、俺が貸した金は懐に入っているから、その分得してるやん。貸した金=元本の部分は差し引いて、それ以外を返すことでいいだろ!」と言っていてそれが認められることもあったのですが、「民法708条によれば、元本は元々返さなくて良いのだから、その『差し引き』も必要ない。つまりやっぱりもらっちゃっていい。」としたものです。
 そして、犯罪行為をする者(ヤミ金業者)に「お前が『元本を渡した分、自分が支払う金額から差し引いてくれ』なんて主張できる立場か!元本を渡す行為も、違法な犯罪の一環じゃないか!」ときっぱり言い放ったものです。

 これぞ法の番人!だとおもいましたし、また、改めて、民法は使える、そのこころ(趣旨、といいます)をちゃんと理解して使えば、力を振りかざす悪人から弱き人を助けられる、そんな風に感じました。
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コメント 4

shira

 すばらしい!やればできるじゃないか、最高裁。見直しましたゼ。
by shira (2008-06-11 20:17) 

hm

shiraさん ありがとうございます。
 最高裁、ときどきこういう良い判決をなさいます。
 
by hm (2008-06-16 15:51) 

sachat06

貴重な情報ありがとうございます。新聞よく読まないことが多いので知りませんでした。「手の汚れた者を司法は助けない」(クリーンハンズの原則)というのも初めて知りましたが、なるほど、です。賭博なんかもこれに当てはまるのですね。
一見自分に関係がないことでも、知っておくのは大切ですね。
by sachat06 (2008-06-21 22:53) 

hm

sachat06さん

 ナイスとコメントありがとうございます。
 そのとおりです。賭博などもそれにあたります。
 
 法の細かい条文はともかく、こういう法原則というのは、それぞれが一つの重要なものの考え方を示していて、眺めてみるだけでも興味深いものがあると思います。
by hm (2008-06-23 13:19) 

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