美しい国と国士無双 [息抜き!?]
※ 今日は小説を書きました。
(以下,小説)
神戸市内繁華街の某所,4人が集まって,真剣に机に向かいつつ会話をしている。
髭をたくわえた男A(以下,「髭」) 「おぬし,なにか不穏な動きを…」
サラリーマン風スーツの男B(以下,「スーツ」) 「…」
イケメンC(以下,「イケメン」) 「ひょっとして,美しい国が出来つつあるんじゃ…」
眼光鋭い老人D(以下,「老人」) 「そりゃそうじゃろ。そのひょっとして,じゃ。」
スーツ (首を横に振りながら) 「いや,美しい国 だなんて,めっそうもございません!」
髭 「そんなこと言うても,隠し通せまい」
イケメン 「ダメだ!美しい国だけは阻止しなくっちゃあ…」
老人 「フフフ,美しい国て,そう上手くいくかのぅ…自らの首を絞めなければよいが。じゃが,わしらは用心用心じゃ,おお怖い怖い。」
スーツ 「いえいえ,そんな大それたことは考えておりません。私はただしっかりと…」
控え目な発言とは裏はらに,その後,スーツの男は時に鋭い声を発し,積極的な動きをとる。
髭 「いよいよだ。美しい国は完成に近づいている。どえらいことですぜ,だんながた!」
スーツの男は,時に悩ましい表情も浮かべるが,しかし,その口元には時折奇妙な笑みともとれる緩みが生じる。
イケメン 「怖いなぁ…。美しい国が出来る前に,店じまい店じまいっと。」
しばらくして,髭が机の上に何かを置いた。スーツの表情が一瞬こわばる。その後,スーツは苦渋の表情を浮かべつつ,何かにすがるような顔色をより一層強くする。髭はしたり顔で,スーツに向かって言う。
髭 「なぁここへ来て,美しくない奴らをどう放り出すんだい?総理よぉ!だが,初志貫徹だぜ,男は。美しい国を目指してドーンと来いよ。」
スーツ 「外的な情勢との調和の観点から,慎重に対応してまいりたい,と考えております。」(汗を拭いながら)
イケメン 「でも爺さん,えらい静かだよ。それに爺さんもちょっと変…」
髭 「え!?変だ。確かに変だ。おい,爺さん,爺さんも美しい国?いや,違う!これは…何で気づかなかったんだ。」
スーツ 「極めて危険な状態にある,という可能性も否定しきれない,と考えざるを得ません…」
(終)
この4人何をしていたでしょう?
お好きな方はすぐ分かりますよね。今日のタイトルにもありますが,「麻雀」です。
雀荘というのは楽しいところです。
政治などのキーフレーズに引っ掛けて,無責任に,アホなことを言いながら,知的遊戯に興じます。
1 スーツが作ろうとしていた「美しい国」は,「清一色」。
麻雀パイのなかで,「同じ模様をもったパイばかりで全部を染め上げる」という見るも鮮やか,美しい役である。得点も高い。これが完成したときの爽快感は捨てがたい。
しかし,「美しい国」を作る過程で,自分の目指す色と違うものを排除せざるをえないので,相手を勝たせてしまう「危険なパイ」を捨てる確率も上がる。つまり,美しくないとして自分が排除した者が自分の首を取りに反乱を起こす危険を秘めている。
ハイリスクハイリターンの戦いなのだ。
2 髭は,「リーチ」を宣言して,オーソドックスに戦ったようだ。
「美しい国」を作りたくてしょうがないスーツにプレッシャーをかけて優位に立った。
3 イケメンは,「美しい国」の動きが怖かったので,勝負を避け安全策をとった。巡り合わせが悪いとき,劣勢なときは,これも立派な作戦だ。
4 そして,老人は…。
「美しい国」以上の不穏な動きをしていた。他の者には「美しい国」への警戒を呼びかけ注意を自分から逸らし,着々と恐ろしい猛者たちを集めていた。
そう,「国士無双」。「役満」とよばれる,最強の役の一つだ。
これは極めて特殊な役で,普段は余り使えないので真っ先に捨てられることが多い「外れもの」「ならずもの」たちだけを結集させてできた,恐怖の凸凹集団である。
「外れもの」をオールスターで集めたら,それはそれで「最強」とされる,麻雀の奥深さを物語る役。ロマンと夢あふれる役である。
逆に言えば「マトモなもの」を捨てなければならないので,その捨て牌から他人に見破られることが多いはずが,そこを老人は,上手くカモフラージュして誤魔化している。タヌキである。
さて,結局誰が勝ったか。イケメンは勝負をおりているが,他の3人は誰が勝ったかは小説中では触れられていない。
野次馬根性あふれる私は,老人の陰謀が成就するのを願いたいが,実際は,誰が運を味方につけたかで決まることが多い。
小説中の終盤の情勢では,誰が勝ってもおかしくないだろう。
ともかく,麻雀という知的遊戯の中では,各自が個性を活かして色んな戦いがあり,そして,色んな在り方にはそれぞれの価値が定められているというとても奥深いものがある。
そういうルールを創り上げた人たちの,「楽しむ意欲」に敬服する。
そして,麻雀に興じている人たちの幸せは,
「美しい国を…」「総理!危険です。」などと言いつつ,しかし,政治思想やなんかは関係無しに,無責任な「もじり」一杯で,ただただその場に興じることに没頭できる
ということにある。案外その戯れ言の中に,無意識に,鋭い政治風刺が含まれていたりするのも面白い。
真面目に考えると
不謹慎な!ケシカラン!
かもしれないが,私は,これぞ立派な民衆の文化なのだとおもう。
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