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読書録~「非ユークリッド幾何の世界」(講談社) [読書するなり!]


非ユークリッド幾何の世界 新装版 (ブルーバックス)

非ユークリッド幾何の世界 新装版 (ブルーバックス)

  • 作者: 寺阪 英孝
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/08/21
  • メディア: 新書



 私は、高校受験を一生懸命やったので、幾何についてはかなりやりこみました。
 
 中学生がやる

「幾何の証明」

などです。

 合同や相似、三平方の定理などを使って、また、定理と定理を組み合わせて、一見複雑な問題を解くというパズルのような世界です。
 一種のパズルみたいなものなので、数学の分野としては比較的楽しい分野です。

 ここでいう「幾何」というのが、いわゆる

ユークリッド幾何

ですが、この本で扱うのは、「非」ユークリッド幾何、また別物の「幾何」なのです。

 ユークリッドというのは人の名前ですが、すごい偉い人なんだなあ、と思います。なんといっても、「非ユークリッド幾何」なんていうものが存在する位ですから。「ユークリッド対その他もろもろ」という感じです。
 ですので、私も精進して、「非ムラカミ○○学」が生まれるくらいに何かを極められたら、と思います。
 
 さて、冗談はさておき。

 ユークリッド幾何と違った「非ユークリッド幾何」というものがあるということは前から知っていて何となく気にはなっていたのですが、特に、数学を専攻するような機会もなかったので、気になったまま放って置いたところに、本屋でこの本を見つけて買ってみたというところです。

 簡単に言うと、

平行線は交わらない というのがユークリッド幾何 

なのです。

 ですが、

平行線が交わる という幾何があったら?

というのが「非ユークリッド幾何」の話と思えば、大体合っています。

 ドラえもんの「もしもボックス」の世界のような感じです。

 そんな世界が、「老先生」と「生徒」の対談方式で、「非ユークリッド幾何」発見の数学者の歴史を交えて、物語感覚で読めるように工夫された本です。

 なので、理系の人でなくても読めます。

 ただし、ちゃんと理解しようとすれば、紙とペンを持ちながら読まないといけない。私はそれをせず流して読んだので、何となくの雰囲気が分かった、というにとどまります。

 で、

平行線が交わる という幾何があったら?

などというのが、中学数学を勉強した者にとっては、

「非常識」
「そんなことあるはずがない」
「そんなことを考えても意味が無い」

と思いがちなところですが、「あながちそうでもないよ」ということが老先生と生徒の対談によって明らかにされてきます。

 たとえば、

「この世界で、平行な2本のレールをレールの間に立って見たら、遠くで交わっているように見えるでしょ」(シベリアの平原のイメージで)

ということについて、説明できる幾何があったら、といえば、少し違ってくるのではないでしょうか。

 それを翻ってみれば、

私たちが中学で習った「幾何」(ユークリッド幾何)も虚構に満ちているのでは?

ということになったりするのです。

 虚構というか、現実世界であり得ない仮定で成り立っているわけです。

・ 「直線」には端が無いというのも

・ 「点」は長さを持たないというのも

・ 「線」には幅が無いというのも

 これも、あくまで「頭の中」のものだ、ということです。

 だから、数学の教科書に書いてある「図」はどれも正確ではない。
 教科書に書いてある「点」は正しくは「円を黒く塗りつぶしたもの」だし、「線」も「細長い長方形を塗りつぶしたもの」。(それは当然、本来の意味での「点」「線」は書くことすらできない。)

 もちろん、「ユークリッド幾何」で考えたことが、現実にモノを作るときなどに大いに役立つので、幾何の勉強は有用なことなのです。

 ですが、私たちの知っている「ユークリッド幾何」が唯一絶対のものではなく、一つの思考モデルである、と位置づけることで、その外の世界に考えが広がる、というわけです。

 実際、かなり非常識に思われた「非ユークリッド幾何」というのは相対性理論の発見とともに有用性が認められるようになっていった、というのが歴史のようです。

 ということで、自分の現時点での「常識」の幅を広げてくれた本、でした。

                       弁護士 村上英樹(神戸シーサイド法律事務所
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shira

 むかし自分のブログに書いた四次元の話を思い出しました。
by shira (2014-09-10 22:32) 

シルベーヌ

数学に不合理なことがあるなんて不思議だな、と思います。
by シルベーヌ (2014-09-10 23:11) 

hm

shiraさん
 ナイス・コメントありがとうございます。
 そうでした、四次元劇場のときにも、同じような興味関心を抱いたのでした。
 ややこしいことは分からないけど、「常識」の外にも世界が広がっているという認識を時々確認するのは、ストレッチみたいなもので、一種の快感なのでしょうねえ。

シルベーヌさん
 数学も、人が説明する理屈、ということで完璧というのは難しいということでしょうかね。
by hm (2014-09-11 09:13) 

hm

ganputunnerさん、心如さん

 ナイス有り難うございます。
by hm (2014-09-18 20:27) 

ayu15

これはおもしろいです。

ある意味線も点も人が作り出した概念で、どう定義するのかも人が決めたような??


極端な長方形と線と・・。最近PCで長方形作りうんと幅を細くし、長くしていくと線にみえること見つけました。
by ayu15 (2014-12-05 09:46) 

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