江川紹子さん「勇気ってなんだろう」(岩波ジュニア新書) [読書するなり!]
私が社会に出るとき、一番、何とかしたい、と思ったことは、まさに「勇気がほしい」でした。
特に、弁護士業の場合、机の前に座って何年にもわたって毎日何時間も勉強してきたとしても、また、毎日何時間も書面を作るために時間を費やしたとしても、
肝心の場面で言うべきことを言いそびれたら全てはオジャン(←思いっきり極端に言えばの話ですが)
になることもあり得ます。
自分のこととして考えたときに、他人と比べて勇気があるとかないとか言うことは余り問題ではありません。
しかし、自分が思うような仕事をする上で必要な勇気を自分が持ち合わせているか、社会人になるときには全然自信がなかったし、弁護士になって10年たった今は、さすがに10年前とは違う感覚ではあるものの、やっぱり、勇気というのは捉えどころがなく、その場、その時になってみないと分からない怖さがあります。
しかし、「勇気がほしい」と言っても、一体、「勇気」とは何なんでしょう。
江川さんのこの本、実に読みごたえがあります。
人によっては、この本を読んで、勇気というものに対する考え方が変わるかもしれません。
勇気をテーマにした本ですが、かえって、普段「私は勇気がないのではないか?」と悩む「勇気強迫症」の人も考えが楽になるかも知れません。
岩波「ジュニア」新書なので、中高生に読んでもらいたい本なわけですが、「シニア」が読んでも、十分に読み応えがあります。
江川さんが書くのだから当然といえば当然ですが、
単に、 無理でも勇気をもって突っ込もう!!気合いだーーーー!!
という本ではありません。
また、
勢いに乗って、(多数の人が喜びそうな)勇ましいことを言う
のを勇気と言っているのでもありません。
一番最初に出てくるのは、アルピニスト(登山家)の野口健さん。
勇気の実例として挙がっている話は、エベレスト登山ですが、
険しい山に勇気を出して登った
ということが主題ではなく、逆に、
(たくさんのスポンサーもつき、マスコミも取材し、最年少登頂記録の誕生を待ち望まれる中で)極端な悪天候という条件を野口さんが冷静に判断し、登頂を断念して、下山する(このときの辛い思いをも受け容れる勇気)
という話でした。
この例についていえば、野口さんは、
その場における「空気」 < 自分の命、アルピニストとしての命
という判断をし、この自分の判断を貫いたというのが勇気だったわけです。 野口さんは、このとき勇気を出して撤退し、命を守ったからこそ、のちに、エベレスト最年少登頂の偉業を果たすこともできたのでした。
その他にも、元衆院議員で後に秘書給与流用事件で服役した山本譲治さんや、北朝鮮拉致被害家族の蓮池透さん、その他あわせて9名の人の、それぞれの勇気を取材した本です。
本当の勇気とは、どのようなものか。(ノリからくる「勇ましい」発言・態度とどう違うか。)
若者もシニアも考えてみたいテーマです。
『義を見てせざるは勇なきなり』と昔の人はいったようです。本当は間違っていると思いながら、糺す勇気がないだけではないのか。『長い物には巻かれよ』とでもいうような、権力者の不正に甘い社会では、若者に何を信じて努力せよと言えるのか… 恥知らずな大人ばかりになってしまいました。
by 小父蔵 (2010-03-09 17:58)
勇気ていろいろあるようですが、大きな勇気だと
KYになっても流れに逆らう勇気
(レミングの群れ? http://life-ayu.blog.so-net.ne.jp/2009-05-08 )
(怒りの感情http://life-ayu.blog.so-net.ne.jp/2007-10-06)
まな板の上の鯉状態で周囲から危険なパッシングで存在が消されそうな人に、救いを差し伸べる勇気はすごぃです。
by ayu15 (2010-03-10 10:28)
小父蔵さん
ありがとうございます。
まさに、コメント頂いたような点では、仙波俊郎さんという、警察の裏金問題を告発した警官のエピソードが紹介されていました。
ayuさん
ありがとうございます。
ayuさんの視点、かなりこの本の著者の視点と重なるように思います。
by hm (2010-03-10 16:38)