最近読んでいる本はこれです。
親鸞上人(浄土真宗の始祖)の生涯がテーマです。
歴史小説としてとても面白いのですが、とても読み応えがあります。
親鸞は、高貴な存在として山の上にいる、というのではなくて、世の中のありとあらゆる人と関わります。
貧しい人、罪人、業を負う仕事をする人…
「清い」などという在り方からは程遠い人でも、懸命に生きているし、救いを求めていることを肌身で感じ、何をすべきか考え、行動する波瀾万丈の生涯。
また、五木寛之さんが描く親鸞像は、とても人間らしい部分が生き生きと描かれており、人が人を救わんとすることは、言うは易くとも、実際行うとなると捨て身で、ドロドロになりながらなのだ、と教えられます。
話は変わって、中学生などとお話しすると
「なぜ弁護士は悪い人を弁護するのか?」
という質問をいつも頂きます。
この問いと答えに通じるものを小説「親鸞」に感じました。
確かに、中学生の時は、「悪いことをして捕まったら終わり!」という感覚だったと思います。
私は刑事弁護がメインでないので、それほどの経験がありませんが、私の接した多くの人は、
罪を犯したくて罪を犯したわけではない(できれば罪を犯さず生きていたい)
し、また、
その人にとって、刑事裁判が終わりではなく、その後、如何に良く生きるべきかという課題が残っている
のです。
弁護士もそうですが、それだけでなく世の中全体が、「自分の意に反して、理想の状態から外れてしまった。」という人(罪を犯した人もそうですし、その他、社会的に弱い立場に立つことになったあらゆる人)に対して、排除するなどという態度ではなく、「その人がこれから如何に良く生きることができるか」という視点で関われるようになっていけば、と思わせられました。
ま、深く考えずとも、単純に、親鸞上人の「波瀾万丈伝」として捉えても大変面白い(史実との関係は詳しくは私には分かりませんが…)ので、あらゆる年齢層の方にこの小説はオススメです。
弁護士 村上英樹(神戸シーサイド法律事務所)