親鸞(上) (講談社文庫)

  • 作者: 五木 寛之
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2011/10/14
  • メディア: 文庫



 最近読んでいる本はこれです。

 親鸞上人(浄土真宗の始祖)の生涯がテーマです。

 歴史小説としてとても面白いのですが、とても読み応えがあります。

 親鸞は、高貴な存在として山の上にいる、というのではなくて、世の中のありとあらゆる人と関わります。

 貧しい人、罪人、業を負う仕事をする人… 
 「清い」などという在り方からは程遠い人でも、懸命に生きているし、救いを求めていることを肌身で感じ、何をすべきか考え、行動する波瀾万丈の生涯。

 また、五木寛之さんが描く親鸞像は、とても人間らしい部分が生き生きと描かれており、人が人を救わんとすることは、言うは易くとも、実際行うとなると捨て身で、ドロドロになりながらなのだ、と教えられます。

 
 話は変わって、中学生などとお話しすると

「なぜ弁護士は悪い人を弁護するのか?」

という質問をいつも頂きます。
 この問いと答えに通じるものを小説「親鸞」に感じました。

 確かに、中学生の時は、「悪いことをして捕まったら終わり!」という感覚だったと思います。
 
 私は刑事弁護がメインでないので、それほどの経験がありませんが、私の接した多くの人は、

罪を犯したくて罪を犯したわけではない(できれば罪を犯さず生きていたい)

し、また、

その人にとって、刑事裁判が終わりではなく、その後、如何に良く生きるべきかという課題が残っている

のです。
  
 
 弁護士もそうですが、それだけでなく世の中全体が、「自分の意に反して、理想の状態から外れてしまった。」という人(罪を犯した人もそうですし、その他、社会的に弱い立場に立つことになったあらゆる人)に対して、排除するなどという態度ではなく、「その人がこれから如何に良く生きることができるか」という視点で関われるようになっていけば、と思わせられました。

 ま、深く考えずとも、単純に、親鸞上人の「波瀾万丈伝」として捉えても大変面白い(史実との関係は詳しくは私には分かりませんが…)ので、あらゆる年齢層の方にこの小説はオススメです。

                                          弁護士 村上英樹(神戸シーサイド法律事務所