(読売ニュースより引用)
急死直前に30分も“ぶつかりげいこ”、時津風親方は黙認
愛知県犬山市の大相撲時津風部屋の宿舎で今年6月、序ノ口力士、斉藤俊(たかし)さん(当時17歳)=しこ名・時太山(ときたいざん)=がけいこ中に急死した問題で、亡くなる直前の斉藤さんに対する長時間のぶつかりげいこを時津風親方(57)(元小結双津竜)が黙認、兄弟子らが斉藤さんをバットで殴るなどした暴行を制止しなかったことが27日、県警の調べで分かった。
県警は、親方が黙認したことで、暴行がエスカレートし、斉藤さんの死につながった可能性があるとみて捜査している。
調べによると、斉藤さんが死亡する直前の6月26日午前中に行われたぶつかりげいこは約30分に及んだ。この間、兄弟子らは、斉藤さんが倒れると、金属バットや木の棒で殴るなどの暴行を加えたという。斉藤さんはその後、体調不良を訴えて病院に運ばれ、死亡が確認された。
ぶつかりげいこは、兄弟子らの胸を借り、体当たりした後に投げられて受け身を取るもの。県警の事情聴取に対し、兄弟子らは「親方はけいこを見守っていたが、制止はしなかった」などと話しているという。
関係者によると、ぶつかりげいこは体力の消耗が激しく、通常は3分程度が限界。県警は、死亡前日に、親方がビール瓶で額を殴ったり、兄弟子らが殴るけるなどしたりした行為とともに、当日のぶつかりげいこが長時間に及んだ経緯などについて、さらに詳しく調べている。
(2007年9月27日14時32分 読売新聞) (引用終わり)
今、この力士死亡事件がマスコミでちゃんと取り上げられているのはもちろんいいことだ。だが、長い間、この事件をほっといて、朝青龍を追い回していたことはマスコミが、何が一番大切かを十分見極めずに、ただ興味本位で報道をしていたと非難されても仕方ないだろう。
はっきり言って、猛烈に反省していただきたいと思う。
それに引き換え、上で紹介した江川紹子さんの意見は、本物のジャーナリストの意見だと思った。この件で、江川さんを尊敬するようになった。
さて、相撲界でもそうだが、いまだに、学校の部活などでも、「しごき」「特訓」等と称して、リンチまがいのことや、また炎天下で水分補給もさせず連続ノックを受けさせるような非合理的なことが行われていることを聞くし、実際にたまたま少年野球の現場などで「これは科学的に見ていかがなものか」というような精神主義的な(また事故の危険があるような)練習風景を見ることがある。
ある種日本の悪い方の伝統かもしれないが、(科学的には不合理な)しごきに耐えることが「甘ったれた根性をなくす」のに必要だなどというわけのわからん理由で、あちこちで割りと正当化されてきたことなのかもしれない。
だが、私は、こんなおかしなことがまかり通ることは許せないと思う。
スポーツの鍛錬においては、(指導者が)ちゃんと頭を使って合理的科学的に上達が見込まれる方法を選択すること、また、指導者や先輩が感情をコントロールして紳士的な態度で弟子や後輩に接することこそが、最低限必要なことだと思う。
それすらできず、相手の健康状態を考えない危険なしごきをすることや、感情をコントロールできず指導と称して暴力を振るうような人間こそ、よっぽど甘ったれだとおもう。
スポーツは人の人生を豊かにしてくれる。私もスポーツができる喜びに日々浸って生きている。仕事への活力もくれる。
幸せになるためのスポーツで、こんな形で人が死に追いやられたことに対する怒りを禁じえない。
スポーツの原点、スポーツマンシップの基本について、さもわかった顔をしている指導者たちこそ、もう一度見つめなおすべきではないか。
そうして、この世の中で、スポーツの現場で、こんなひどい「しごき」「暴力」が一切なくなるようにと、強く、強く思う。