いやー,こんなものを聴いてノスタルジーに浸っているという時点で,相当私も年をとったなあ,と思う。
まいった。
そのなかで名曲 「moon」。「昔ママがまだ若くて小さなアタシを抱いていた 月がもっと遠くにあったころ…」からはじまるあの曲。
この曲の「アタシ」はその時点で既に,大きな娘さんになっているという設定の歌だから,ママはもう若くない。 というのが,その時代,私が中高生のころの話で。
それをそのまま時間をスライドさせると,確実にママはおばあちゃん。アタシはだいたい私と同年代か,少し上(40近い)のおばちゃん(失礼!「おねえさん」)になっている,という風に,今聴いて想像する。
この曲の中にある,お母さんの娘への訴え,
「壊してしまうのは 一瞬で出来るから 大切に生きてと 彼女は泣いた」
は,きっと私の同時代人ならば,多くの人の印象に強く残っているフレーズではないか。
実際,レベッカファンのサイトで,「好きなフレーズ」コーナーを見ると,ここの部分がたくさんあがっていた。
中高生だから,多くの子が,不良や不良っぽい在り方にあこがれ,そんな行動をする。私も例外でなく,ありきたりに,(背伸びして)ちょいワルな行動を取っていた。
でも,そんなときでも,このフレーズが頭のどこかにあって,
なんぼワルやってても,取り返しのつかへんことしたらあかんな。親も悲しむやろうしな。
という気持ちになって,なんとかまあ,更生可能な範囲の「かわいい不良」にとどまった当時の中高生は多いのではないか,と思う。それが今は30歳を超えた大人達,お父さん・お母さんになっている人も多いというわけだ。
その「かわいい不良」たちは,大概,今は見る影もなく,落ち着いたおじさん,おばさんになっていっているのではないだろうか。あるいは,何割かは,いま流行りの「チョイワル」にスライドしているのだろうか。
ボーカルのNOKKOは,自身がHPで,「口づけを交わした日はママの顔さえも見れなかった,という歌詞を作るほど,私はママっ子だった」というくらいだから,「大切に生きて」と泣いた「彼女」についても自分の母親のことを思い浮かべた歌詞に違いない。
きっと上の曲「moon」の,「大切に生きて」と泣いてくれた「彼女」によって,救われた,私の同世代人はたくさんいるだろうな,と思う。
レベッカやボウイの時代は,まだ,バンド=不良のような目で見られる時代だった。けれど,その中に,「壊してしまうのは一瞬で出来るから大切に生きて」という親の子を思う愛に溢れたメッセージが埋め込まれていた。
そして,今,親の世代になって,(自分の子どもだけでなく)子どもたちに対してまじめに思うのは,
中高生になって多少ワルいことやってても,取り返しのつかないことをせず,健康で,じっくりと成長してくれたらいいな
という気持ちだ。(そういえば,教育社会学者の広田照幸教授も,現代社会においては,一人前の大人になるのにはかなりの年数がかかるものだ,そういう目で子どもや若者を見るほうがいい,焦ってもしょうがない,という意味のことを言っておられたが,私も実際そうだと思う。)
そりゃ,一直線に「良い子」で大人になれば何の心配もなくて良いだろう。だが,そんな風に問屋が卸すものか。
現代社会で大きくなるうちには色々あるさ。
だからこそ,moonのこの歌詞「壊してしまうのは一瞬で出来るから大切に生きて」というこれだけを,「これはあんたたちのおばあちゃんが私に言ってくれたメッセージだよ」と。そういうことを次世代に伝えたいものだ,と思った。
そんな気持ちで,次世代を見守り,その育ちを支えてゆく大人でありたい。そう思う。
そして,この名曲「moon」は何らかの形でリメイクして,私の次の世代にプレゼントしてはどうか?と(音楽業界にもたくさんいるだろう)私の同世代人たちに提案したい。 などと思った。