最近は、このブログの記事の中で、

私の灘中受験記 http://h-m-d.blog.so-net.ne.jp/2013-04-30

はたくさんアクセスを頂いています。(灘中合格の秘訣を知りたくて検索して行き当たった人には何の参考にもならず申し訳ない限りです。)

 ただ、まだ、1日のアクセス数でも、

調停委員が相手の肩ばかり持つ http://h-m-d.blog.so-net.ne.jp/2012-03-15

が、灘中受験記を上回っています。えっへん!弁護士ブログですから!(でも差は僅か。)

 
 さてさて、私が、恥をさらして「灘中受験記」を書いたわけはここにあります。

 今、子育てしている親の周りには、

「英語の耳は○歳までに作らなければ育たない」

とか、

「受験は、小学校低学年から準備しないと間に合わない」

とか、

「天才児は、○歳までに」

とか、要するに、

「早く(お金かけて教育)しなければ手遅れになってしまいますよ!」

という宣伝が溢れており、それに振り回されやすい環境があるからです。私も「騙されるもんか」と思いつつも気になりますから。
 最近に始まったことではないのですが、どんどんどんどん低年齢化しています。

 子育て(教育?)雑誌などを読んでも、

「成功体験が大切」
「早く勝ち組に」

という風に書かれているのですが、私は「それだけでもないだろう」と思うので、あえて、灘中受験(失敗)記を書いたのです。

 私にとって灘中受験失敗はとても貴重な体験であった、と。
 
 私の塾講師としての経験でも、受験に失敗した子へのフォローというのは大きな仕事の1つでした。
 塾講師は子どもに「成功」ばかりを求めている(強いている)ように思われますけど、不合格になって泣いている子に対して、声を掛け、話せるなら「よくがんばったじゃないか。これまでの努力そのものはそのまま君の力になっているよ。この経験だってプラスに変えていける。」というようなことをその子の状態や性格にあわせて徐々に話していく、そして、(後日には)再び力強い表情を見せてくれる、という部分は、塾講師の仕事の中でかなり重要な部分でした。もう殆ど記憶が薄れていますが、そうだった気がします。

 私が高校受験をするとき、中3時に通った塾では、中学受験失敗組が殆どでした。しかし、その中には、なぜ中学受験で不合格になったのか想像もつかない、恐るべき頭脳の持ち主がいました(模試でもトップクラス、高校受験でもトップクラスの成績で合格、のちに国公立にトップクラスの成績で合格、大学に入ってからもバリバリ研究…でした。今もどこかでバリバリ研究しているでしょう。)。
 その「恐るべき頭脳の持ち主」は、私と違って、ちゃんと受験塾に通っていても中学受験で不合格になったのです。でも「恐るべき頭脳の持ち主」なのです。
 よく言う、早熟型と晩成型というのもあると思いますし、どこでスイッチが入るかは人それぞれというところがあります。

 
 そもそも、「成功体験」が大切と言っても、たとえば、「少年野球」を例にとれば、

勝ち の数だけ 負け がある。

 これは当たり前です。

 「負け」が嫌なら、楽勝できる相手とだけ試合をするか?ということになりますが、これでは、野球の醍醐味を味わえないでしょうし、技術の向上も望めません。

 というわけで、何が言いたいかといえば、子どもにとって、「成功体験」も大事だが、

チャレンジすることそのもの

特に、

勝つか負けるか分からない勝負にでも、失敗を恐れずチャレンジすること

こそ大切なのではないか、ということです。

 確かに、たとえば、子どもの少年野球であっても、剣道の試合であっても、親としては、自分の子どもが負けた瞬間に居合わせると、

きゅっと心臓が収縮した感覚

を覚え、大変辛いです。自分の負け以上に辛いです。

 ですが、その辛さを「安全策」で避けようとせず、

強い相手にも思い切りぶつかってこい

負けても良いから思い切り闘ってこい

と言って送り出し、案の定負けてきたら、「何で負けたの?」とは決して言わず(言いそうになるのをぐっとこらえて)、(低学年なら)あめちゃんを差し出す、(高学年なら)「飯いこ、飯」という、のが親の役割ではないか、と思っています。

 
 というわけで、灘中受験記に話を戻すと、ともかく自分の親には感謝しています。
 中学受験だと、まだ子どもはあどけないでしょう。
 子どもの不合格はつらいはずです。
 どんな形であれ、「合格」して喜んでいる息子の顔の方を見る方が、その時はハッピーだったはずです。
 でも、敢えて、圧倒的不利を承知で(もしかしてうちの親は承知じゃなかったのか?)、「チャレンジする気があれば、灘を受験しろ」と言ってくれた親に心から感謝しています。
 
 
 というわけで、受験で言えば、中学、高校、大学、資格試験何であっても、また、勉強以外スポーツでも何でも、目標に向かっている全ての人(とその親)が、

「失敗したらどうしよう」

というネガティブな気持ちなく、

「チャレンジすることそのものがプラス」

という明るい気持ちで臨めたらいいのになあ、そして、明るく、持てる力を発揮できればなあ、と願ってやみません。
 逆説的ですが、良い意味で開き直って、その人自身の力を根っこに近い部分から伸ばすことに集中すれば成功の確率も上がるかも、とも思います。


                                     村上英樹(弁護士、神戸シーサイド法律事務所