業者「それならなおさらリフォームをしないと。」
M子さん「こんなボロ家,リフォームしても無駄ですわ。地震が来たら壊れるに決まってるし,私は覚悟してます。」
業者「いや,そんなことないですよリフォームしたらちゃんと地震にも耐えられますよ…」
M子さん「あんたねー。私そんなことまでして生き延びようなんて思ってないの。地震になんか耐えんでよろしいの。」
※ M子さんの対応は,当初から見ず知らずの自宅を訪問してくるような業者が顧客のためを思ってアドバイスしてくれているわけがない,ということを前提にして,業者が勧誘の基礎にしようとしている通常の価値観(災害に備えよう)の逆を敢えて言うことによって,「話にならないおばさん」「わけわからんおばさん」を演じ,撃退しています。
こんなM子さんはどっちにせよもともと勧誘になど引っ掛かるわけがないのですが,ポイントは上の下線部 見ず知らずの自宅を訪問してくるような業者が顧客のためを思ってアドバイスしてくれているわけがない という点ですね。
見ず知らずの自宅訪問勧誘の業者が「この家は危ない」と言ってきたとき,その場に専門家っぽい人がいるからと言って安易に「どこが危ないのか教えてもらおう。」とか「なんとかしてもらえるんじゃないか。」とか頼ってしまうことが悪質商法にひっかかる危険なことなのです。
2 儲け話勧誘(投資・投機サギ)の場合
Y子さん 60台女性。
電話勧誘で…
業者「投資をしてお金を増やしたいと思いませんか?いい話があるのですが。」
Y子さん「お金ですか。増やしたいとは思いません。」
業者「どうしてですか?老後資金とかお子さんの教育費とか色々いるでしょう。多い方が安心ではありませんか。」
Y子さん「いいえ。お金なんかあったらあったで大変です。変な相続争いの原因にもなるし,心配事も多くなるし,私お金なんか増やしたいと思っていません。」
業者「でも遊んでいるお金があれば有効に利用できますよ。今は金利も安いですから銀行に預金するよりも…」
Y子さん「遊んでいるお金なんかありません。だいたい,お金を増やす増やすって,そんなことばかり考えてみんなが行動するから,大資本家が労働者を搾取したりして非人間的なことがいっぱい起こるようになったのでしょう?全部お金が悪の根源じゃないですか。知ってます?それが戦争の原因にもなるんですよ。私,お金なんか大嫌いです。あなたもこんな世の中がおかしいと思いませんか?」
※ やりとりからして,Y子さんももともと悪質商法にひっかかるわけのないタイプの人です。
が,断り方のテクニックは参考になります。
上のU子さんとも共通しますが相手が言うことの「逆」を言います。Y子さんの場合,その「逆」というのがあながちむちゃくちゃでもなく一々真理を含んでいるのが大変味のあるところですが,そこまで味のあることをしなくても構いません。
特に価値観の部分における「逆」です。むちゃくちゃでもいいから,「お金はいらん」「老後の心配などない」という風に切り返してください。
「お金は要らない」「お金は嫌い」「お金は増やしたくない」と言われれば,勧誘員も足がかりをうしないます。
「じゃあ,おばさん,ぼくにお金ちょうだいよ!」と勧誘員も言いたくなるでしょうが,儲け話の勧誘をしているのでさすがに「物乞い」をするわけにもいきません。
勧誘されて迷惑だなと感じたときは,相手の言うことの「逆」ばかり言って,話をぐちゃぐちゃにしてください。
3 「税金を安くしませんか」勧誘に対して
Pさん。女性。30台。
電話勧誘です。
業者「お宅の税金を安くしませんか?プロのアドバイスで,税金が安くなりますよ。サラリーマン家庭でも,安くなった税金で海外旅行くらいいけますよ。」
Pさん「はあ?海外旅行ですかぁ?ウチの税金はそんなくらいじゃなんですよ。ごっついこと払ってるんですよ。ウチは,橋が一本できるくらい税金払っているんです。それに,海外旅行代を浮かすなんてチマチマしたことはやらないんです。そんなわけですみません,私忙しいので切ります。」
業者「あ,あ…まって」
ガチャーン。
※ Pさんの対応は,1のM子さんよりも2のU子さんよりも,初心者レベルですが,一番セーフティで安全確実な対応です。(人生の先輩M子さん,Y子さんは,なみの悪質商法勧誘員以上のツワモノだと思われるので,彼女らの対応は上級編でしょう。)
基本は単純です。
「わけわからんことをしゃべるだけしゃべって即切る!」
Pさん,一般家庭の主婦です。橋をかける税金ってどんなんでしょう?意味不明としかいいようがありません 笑
でもこれでいいのです。
別のオススメ切り返し法としては,税金ならば,
「税金を安くするって?何言うとるんですか?私は,日本の国家のために尽くしたいんですよ。一円でも多く収めて,お国の役に立ちたいのに,税金を安くするって,あなた何考えてるの?」という,謎の愛国者を装うのもよい。
以上の3名の主婦のかたは,みな,絶対に悪質勧誘にひっかからないでしょう。
見習っていただくといいのは,
・相手のペースに乗らない
ということです。
60歳代のM子さんY子さんは,逆に自分のペースにしてしまって,相手をおちょくった上で勧誘を撃退しているようにも見えます。これはこれで結構です。彼女らはツワモノのようですから,相手と会話をしても,ビクつくこともないし,十分おちょくりながら撃退できます。
しかし,一般の消費者のかたの中には,もっと性格が良く,正直で,人と会話をするとついつい話を合わせてしまうし,気まずくなるのがイヤで,電話を切れなくなって,ついつい会うことになって…というふうに悪質商法被害の危険にさらされるひとがたくさんいらっしゃると思います。(そういう人たちは,多分,普段は,その性格のお陰で,人にも好かれ,心豊かな生活を送っていらっしゃると思います。)
最後の30歳代Pさんは,60歳代のツワモノに比べると,まだ正直で「いい人」な部分が残っているように思えます。なので,相手と長く会話してしまうのは怖い,という意識をもっているようです。だからこそ,このPさんの対応は,だれでも真似できます。
「うちは橋架けるくらい税金はらってるねんぞー。海外旅行代なんてケチなこといわへんぞー。」とにかくむちゃくちゃです。テンパっててもいいです。口から出まかせ,ムチャクチャ言って下さい(こんなムチャクチャ言える場面なんて滅多にないチャンスと思ってムチャクチャなことを言って下さい)。できるだけ息継ぎする間もなく言えるだけ言って下さい。
そして,ネタが尽きたら,大事な一言,
「すみません,忙しいので切ります」
これを言っちゃえば,心理的にラクに切れます。これをいち早く言っちゃうことです。
で相手が「あ,あ…」とか言っている間に切っちゃう!これです。
基本,大事なことは,
見ず知らずの不躾な電話を架けてくる,訪問してくる輩に,礼儀正しくしなくてもよい(もともと相手自体が無礼なんだから)
です。
上の3名の撃退法を読んで,「ああ,こんな対応してもいいんだなあ。」と多くのかたが思ってくだされば,悪質商法被害は減るかも,と思います。
むしろ,普段,電話をがちゃんと切ることができないくらい礼儀正しいタイプの人なら「自分のペースでムチャクチャなことを息継ぎせず口走る」「相手が『あ,あ,』とか言ってるのに電話を切る」なんて,普段の自分では出来ないことをやっちゃうだけで「蜜の味のごとき背徳のスリル」が味わえる,と発想を転換していただければと思います。こういうときこそ,「自分を壊す」という快感の世界に是非飛び出していただきたい,と思います。
あ,でも,もし,既にうっかり契約してしまった等のときは,各都市の消費生活センターhttp://www.kokusen.go.jp/map/ncac_map28.htmlか弁護士に御相談下さいね。(解約が出来る場合もありますし,クレジットの支払を止めることなどが可能な場合もあります。)