埼玉県ふじみ野市大井武蔵野の市営ふじみ野市大井プールで、同県所沢市立小手指小2年、戸丸瑛梨香(えりか)ちゃん(7)が吸水口に吸い込まれて死亡した事故で、現場責任者(36)が県警捜査1課と東入間署の調べに「6月の契約後、吸水口のふたを固定していた(去年の)針金がさびていたので、取り換えた」などと供述していることが分かった。県警は、ボルトでふたを固定しないなどずさんな管理が常態化していた可能性があるとみて追及している。
県警やふじみ野市によると、現場責任者は、プールの管理運営を請け負ったビルメンテナンス会社「太陽管財」=さいたま市北区=から、市に無断で業務の丸投げを受けた「京明プランニング」=同市見沼区=の社員。(中略)
また、県警の調べで、吸水口の60センチ四方のステンレス製ふた計6枚のうち、四隅ともボルトで固定したものは1枚しかないことが分かった。(中略)
また、現場責任者は監視員に流水の仕組みなどを教えていなかったことが判明。県警は監視員の教育実態も追及する。
毎日新聞 2006年8月2日 15時00分(引用終わり)
この事故のニュースがあって,私は,以前自分が担当した事件の当時調べていた裁判例などを少し見直してみました。
私が参照していた裁判例の中だけの数字ですが,事故が起こったプールの種類としては,
学校プールを含めれば8割が,
学校を含まなくても7割が,
市営,町営などの公営のプールでした。
事故の種類としては,当時私は溺水を調べていましたが,それでも取水口,排水溝が原因になっているものは古い時代から存在しました。
もともと市営・町営プールは数が多いというのはもちろんありますが,公営ならではの,構造的な管理の甘さというものも,今回のニュースで浮き彫りになったと思います。
全国の多くの市営プールで,管理については,地元の古くから請け負い続けている地元企業が,その「馴染み」によって担当し続けていることが多いのではないでしょうか。
そして,市の職員も,委託した業者に任せきりで,何か事が起こらなければ,余り積極的な指導などはしていないのではないか,と思えます。
http://blog.livedoor.jp/mimbu_kayo/archives/50779782.html 民部佳代のふじみ野市だより
↑は同市の市議さんのブログ。「「見て見ない振りをするお宅ら市議が存在するから起きた事故だ」という議員としての責任を問うメールも届きました。見て見ない振りというより、見ていなかった、知らなかったというのが本当のところ。」と述べておられます。
市議さん自身としては,特別な問題意識をもっていなければ,どうもしようがなかったと思います。とにかく,早急に,市議会で,徹底して安全について議論して必要な立法を行って頂きたい,と思います。
が,問題は,市の担当課の職員ですら,「見ていなかった,知らなかった」という状態だったんではないか?という点だと思います。
というより,そもそも,実質的な意味で,「見るべき」「知るべき」職員が配置されていたのかどうか?
「太陽管財」から下請けへの丸投げも問題でしょうが,そもそも,市そのものだって,「委託契約書」「仕様書」等を作って,民間に委託したら,それでよし,という考えがあったとしたら,大問題です。
市民が信頼しているのは,「市がちゃんと管理しているはず」というところですから,それに正面から応えるのは市の義務でしょう。
管理会社を選ぶことや,具体的な指導をすることも,市が主体的に関わらなければ,安全は徹底できない,と思います。
そして,もう一つ言えば,こんな種類の事故を民間プールが起こせば,確実に廃業を余儀なくされます。賠償金は保険に入っていても,利用客が離れるからです。結果,プール造成にかかった莫大なお金は全て無駄になり,巨額の負債が残ります。
多くの民間のプール運営をしている企業には,常にそういう危機感があり,それゆえ,公営プールよりは,安全意識は高いはずだと思います。
でも,市営プールは,利用料金も安く,近くにあって,利便性は抜群です。なくなったら困りますよね…。
が,民間プールより安全性がいいかげんだとしたら,それはもっと困る…。
そういうときこそ,思い出したい。当たり前のことですが,市の主人公は市民。市民自身が安全を維持し発展させることを考え,声を上げ,実現させてゆくことは可能なはずです。
市民に言われないとしないのはおかしいじゃないか!というのは,私もそう思います。が,実際問題として,行政に100%の信頼をする,それも命を預ける気に,少なくとも私はなりません。それで,私たち市民は,市の「主権者」なんだから,安全管理の徹底を求める権利があり,それを主張しなければならない,と考えます。
私は常々,最低限のこととして,
文明や科学の発達度合いに見合った安全が確保されなければならない
と思っています。
プールが「流水」プールである必要がありますか?
必要はない。でも,「流水」の方が楽しいからそのほうがよい。そして,今の技術で十分可能だから。
じゃあ,それはよいとしましょう。ならば,絶対の「安全」は確保した上で,導入しましょう。ゆめそのことを忘れるな。
ということだと思います。それも安全確保の方法など,今の科学技術の水準で,何ら難しいことはなかった。クルマ社会で交通事故がゼロには成り得ないというのと全然違うのです。
今回の,被害者の方の余りに理不尽な死のニュースに,私は,悲しい,腹立たしい,やりきれない。怒りに堪えない。
そして,「以前からフタはゆるかった」等のインタビューを見るにつけ,やはり,私たち市民は,何につけても
「おかしいと思ったことはそのときに言わないといけない」という思いを強くしました。
排水溝のフタだけではありません。プールそのものが危険ですから,監視体制そのものに目を光らせなければなりません。全市町村が,早急に,足もとを点検し直さねばなりません。
そして,我が市の市営プールの管理をしているのは一体誰か?ほんとうにそこで大丈夫か?市民自身がチェックしてみる。ここは大きなポイントだと思います。