（注）この記事は，依頼者の方の御承諾を得てブログ記事にさせていただいたものです。
最近解決した先物取引被害事件について，依頼者の方が，新聞投稿して下さいまし
た。
認知症であったことが推定される一人暮らしのおじいさんが，先物取引会社の勧誘
を受け，取引をすることになってしまい，約４０００万円のお金を失ってしまった事
件です。
発覚後，娘(依頼者のＹさん）たちから「どうしてこうなっちゃったの？」と聞かれても，おじいさん
は，お金を失った理由さえ分かっていなかったそうです。
２年前に私が受任して民事訴訟を起こし，去る２月に，「損害金全額をおじいさん
に返せ」という判決が出され，確定して，無事解決しました。
依頼者のＹさんは，そのような客のことを考えない営業が許せない，そのような被
害にあった人がいたら泣き寝入りせずに訴えることが出来ることを知って欲しい，と
いう思いから，新聞に投稿されたとのことです。
（引用はじめ）
平成１８年２月２４日 朝日新聞 読者投稿欄 会社員 Ｙさん（女性，神戸市）
一人暮らしの当時７６歳の父が，１年半足らずの間に，金などの先物取引で4000万円を無くしてしまった。５年程前のことである。時々電話で話をしていた私は驚いて父を訪ねた。
みると家は荒れ放題で，父には失禁もあり，認知症ではないかと初めて気付いた。３冊の預貯金通帳はすべて千円以下になっていた。なのに本人は，いつ誰にお金を渡したのか全く記憶になく，きょとんとしているだけであった。
検査入院を経て，父は翌年から介護老人保健施設にお世話になっている。
だが私は認知症の父を食い物にした先物取引会社がずっと許せなくて，悶々としていた。そして決心するまで２年余かかったが，弁護士会に相談に行き，裁判を起こすことにした。「あまりに悪質だ」と助言を受けたからだ。
裁判は２年かかったが，この２月半ば神戸地裁で，損害金を「全額返還するよう」判決が下りた。こんな反社会的な行為がまかり通るのかと憤りにかられていたのでホッとした思いだ。
以前の私と同じような思いをしている方は，たくさんおられると思う。みなさんどうぞ，あきらめないで下さい。泣き寝入りしないで下さい。
（引用終わり）
勝訴は，Ｙさん自身の御努力の賜物でした。
当時お父さんは一人暮らしでしたが，Ｙさんは，当時のお父さんに接していた人物を粘り強く訪ね歩かれて，「お父さんは認知症になっていた」ことの証言をしてもらえる人を複数見つけられました。
その他当時のお父さんの状況がわかる証拠書類をくまなく集めてこられました。
「お父さんの当時の生活状況が分かる資料があれば集めて下さい」という私からの指摘に関して，十分な努力をされました。
裁判の難しいことは弁護士に任せてもらえればいいですが，材料そのもの（証拠）については依頼者御本人でないと集められないものもあります。
そのことをよく理解され，勝ち取られた勝訴と思います。
先物取引にまつわる顧客被害については，私が属する
神戸先物取引被害研究会
http://www5f.biglobe.ne.jp/~sqkobe/link.html
先物取引被害問題研究会（全国）
http://futures.ferio.net/fc/
で，他の多くの弁護士が多年にわたって，訴訟等での救済方法を研究しているところです。
訴訟での戦い方においては，研究会の研究成果があってこその勝訴でした。
この事件は，Ｙさんの強い信念と，弁護士の訴訟活動がうまくかみ合い，良い結果が得られた，私にとっても忘れられない事件となることと思います。