2007年に改正された「貸金業法」が今年6月に完全施行されました。

 今年6月に施行された部分は、

・ 利息制限法の上限金利(20~15%)以上の利息を取ることは完全に出来なくなった。(いわゆる「みなし弁済」「グレーゾーン」と言われた金利の廃止)

・ 総借入残高が年収の3分の1をこえる貸付などを禁止すること

などです。

 詳しくは、

金融庁のHP
http://www.fsa.go.jp/policy/kashikin/qa.html#04

をご参照願います。

 
 「これからは借り入れられなくなるのが不便だ」という人も、中にはいらっしゃるかもしれません。
 しかし、例えば、「総借入残高が年収の3分の1をこえる」という状態は、中長期的に見れば、経済的破綻への道まっしぐらです。
 仮に18%の利息を想定しても

年収 300万円

借入 100万円

年利息 18万円

という状態であり、そもそも「借入」をしているということは、支出に収入が追いついていなかったわけですから、そこからさらに年間18万円も利息を取られたら、ますます収支バランスは苦しくなり、借金はどんどん雪だるま式に増えていきます。

 その後の生活はとても幸せなものではありません。何年もお金のことでそれまで以上に苦しみ続け、出口は見えず、最終的に、倒産(自己破産など)に至るのが普通です。

 それゆえ、この段階まででストップをかけるのが改正後の貸金業法の仕組です。 
 
 ここで、

「これ以上あなたは借りてはいけません」

といわれるようになった人は、その時点が、経済状態を考え直す機会です。
 仮に、収支バランスを整えて、借金を解消していく計画が立てられるならばそうすべきです。
 切り詰めても何をしても、それができないならば、弁護士に相談し、債務の整理を試みるべきです。

 
 ある意味、

「おせっかい」法律

です。

 従来の貸金業者からはもちろん、自由主義経済で的確な判断が出来ずに苦しむのは自己責任であるという考えの人からすれば、「余計なお世話」の法律など作らないで欲しい、ということになるでしょう。

 
 しかし、これは必要な「おせっかい」。


・ 純粋に貸付を行った際の利益(利息収入-経費)をシビアに計算できる業者



・ 苦境に陥っているため、上記の損得計算よりも、目先の生活(お金)についつい目がいってしまう貧しい人

とでは、「判断力」あるいは、「判断力を妨げる状況」に大きな違いがあります。
 それを野放しに放っておくと、

・ 弱者の足元を見て、強者がいくらでも利益をあげること

が可能になります。
 そのことによる社会の弊害ははかり知れません。借金を苦にした自殺、家庭内不和、借金返済の資金ほしさの犯罪、借金返済のために本来はやりたくない仕事に従事する、等。
 逆に、そのような「借金」による社会へのメリットは殆どありません。その人にとって「とりあえず、その場がしのげる」ということだけですが、社会からみれば、「いつか来るその人の経済的破綻」の時期が違うだけ。


 さて、この借り入れ規制によって、

「借りられなくなった人がヤミ金に流れる」

という懸念の声があります。

 「ヤミ金」は明確に犯罪です。しかも、貸金業者として登録しているか否かは明らかなことですから、立件も難しくないはずです。
 だから、改正貸金業法施行にともなって、それに乗じようとする「ヤミ金」は徹底的に検挙していただかなければなりません。
 そうでないと、改正貸金業法の趣旨(こころ)が実現出来ないからです。

 また、「ヤミ金に流れる」方法は、借り手にとって、明らかに最悪の選択です。
 得策は、「借りられない」「返せない」のであれば、弁護士会の相談窓口や弁護士に相談することです。
 今しなくてもいつかしなければなりません。今せずに「ヤミ金」などから金を借りれば、後々、もっとやっかいなことになります。

 痛む虫歯と同じです。心情的に「歯医者にいきたくない」気持ちはわかりますが、放っておくと、より大変になることは明白です。
 弁護士に相談すべきです。(弁護士は、ちゃんと話をきいてくれる弁護士であれば、出来るだけ近くの人がよいでしょう。)

 改正貸金業法の趣旨(こころ)は、多くの人に、人間的な、まともな在り方を出来るだけ守る、というところにあります。
 よい立法です。