私の司法試験1回目受験記③~論述試験へ [司法試験]
私が初めて司法試験を受けた時の話の続き。
「序章」はこちら http://h-m-d.blog.so-net.ne.jp/2017-02-22
「短答試験」はこちら http://h-m-d.blog.so-net.ne.jp/2017-02-23
5月短答式試験に合格した。
これは、競馬で言えば、後方から追い上げて直線で並び、綺麗に「差し」切ったという会心の展開ともいえた。
しかし、続く7月論述試験になると、ライバルとなる受験生のレベルは格段に上がる上に、さらに、科目・試験内容への対応、時間的余裕、その全てにおいて厳しい条件にさらされることになった。
論述試験は、
憲法
民法
刑法
商法
民事訴訟法、刑事訴訟法から1つ。
選択科目(選択しなかった「訴訟法」でもいいし、他の法律科目でもいい)
の6科目だ。
そして、この6科目のうちで1科目でも「悪い」科目があれば不合格だ。
もっといえば、6科目×2問=12問の論述問題のうち、「不合格」答案が一つでもあればほとんど望みはなくなる。
別に大ジャンプは要らないが、12個のハードルを1つも倒してはならないハードル走、というイメージの試験だ。
今年受ける以上は今年受かりたい。
そして、それが可能な選択は、短期間で準備可能な科目選択だ。
先輩の情報などを総合して、選択科目を、
刑事訴訟法
国際私法
に決めた。
国際私法というのは、国際間でトラブルが起こったとき(たとえば、日本企業とカリフォルニア州企業との間で、アフリカの土地をめぐってトラブルになったとき)、どこの法律(日本法、カリフォルニア州法、アフリカ法)を適用するか?を決める法律だ。
国際私法は、条文の数が少ない、そして、「理屈」で考えて答えを出す、つまり「暗記」よりも「論理」によって対応な科目だった。
これなら短期間で対応できる気がした。
短答式合格から論述式試験当日まで2か月弱。
ほとんどまだ見ぬ法律
商法
刑事訴訟法
国際私法
これをどう攻略するか。
私が入門講座を受講したLECの講師(伊藤真氏ではない講師)に相談してみた。
「ふーん、そうか。
今年から入門講座を受けて、短答式に受かっちゃった、と。
それでどうしましょう?と。
ともかく、その短期間で短答式に合格したということは、法律という分野にキミの頭の使い方がよく合っている、ということだろう。
たまにそういう人がいるよ。
向いているから、このまま努力を続ければきっと短期合格できるだろう。
あ、そうか。
今年合格したいんだったね。
そうすると、何といっても時間が限られている。
憲民刑は入門レベルとはいえ一通り勉強したわけだから、まったく歯が立たないわけではない。
しかし、商法・刑事訴訟法を知識ゼロでは当然歯が立たない。
とにかく、商法・刑事訴訟法についてLECの『論文基礎力講座』(註 略して『ロンキソ』と呼ばれていた)を受講するのがいい。
『国際私法』はよくわからない。自分で何か考えて乗り切ってね。
あ、そうそう、『ロンキソ』受講といっても、当然普通に受講する時間はないから、通信講座を申し込みなさい。全巻のテープがもらえるから、なんとか当日までになるべく全体をカバーできるようにがんばってみなさい。」
大変有益なアドバイスだ。
言われたとおり、商法・刑事訴訟法は、LECの講座テープで勉強することにした。
にしても、金がかかる…
言われた講座テープを買うのにH学園のバイト代全部つぎ込んだし、試験までもやっぱりバイトは休めない…
それと並行して、どこかの予備校(たぶん、上で書いた「辰巳」)の
「論文直前答練」(答練とは「答案練習会」の略で、昔の司法試験で、論述式試験の練習のことだ。模試のような感じで、採点者が点数をつけていた。また、優秀者の答案は見本として受講者に配布されるなどした。)
を受講した。
これはもう大苦戦だった。
商法・刑訴法知識ゼロからのスタート、憲法・民法・刑法とも「短答」までのレベル。
制限時間の中で、「試験用六法」の条文を引いて、そこから自分なりに解釈を考えてみるが、受験生ならだれでも知っている「判例」も知らないし、とにかく、気の遠くなるような力の差を感じるばかりだった。
また、このころは予備校の自習室で勉強する日が多かった。自習室の外の喫煙所なんかは特に、先輩受験生たちの何だか凄い雰囲気や貫禄を感じる場所だった。何が、と言葉で表現するのは難しい。いつ明けるとも知れぬ戦いの中に生きる人だけが持っている空気、みたいなものが煙とともに充満していた。
そうした中、まず私は「商法」の本格的な勉強を中心に行った。
そのとき気づくのだが、「商法」はとにかく範囲が広い。
条文も多い。
商行為など
会社法(会社にも色々… 当時でも株式会社、有限会社、合名会社、合資会社…)
手形・小切手法
また、「貸借対照表」「計算書類」云々…学生には馴染みのない言葉だらけ。
イメージも湧きにくい。
どんなに最速でやったとしても、「商法」は試験科目の中で一番時間がかかる。
論述に向けて「商法」の勉強を始めたときに、ここではじめて、絶望的な気持ちになった。
1ヶ月では無理だ。普通に考えて。
でも、残された時間は2ヶ月弱。
「商法」「刑事訴訟法」をあわせて1ヶ月と2週で無理矢理終える。
「国際私法」は最後の1~2週間で何とかする。
このペースは、今考えても無茶だ。
ただ、勝ち目を考えたとき、せっかく「論述」対策レベルまでやることになる(というか、「商法」「刑事訴訟法」は短答式がないので、本格的に勉強すれば「論述」対策になる)科目で、予備校のテキスト・講座テープが得られる2科目はなるべく丁寧に仕上げて、得点源にしたい、と思った。
「国際私法」は、法律の趣旨・理屈から「考える」科目だという先輩受験生の言葉を信じて、直前の追い込みと自分の「当日力」に全てを賭けることにした。
このような計画で勉強を進めた。
この論述試験のときに、私は人々の温かさをすごく感じることになる。
私が3回生での司法試験受験をしようとしたのは、
一番パワーのある20歳の今、アクセルを目一杯踏み込んでみたい
という気持ちだ。
だが、その気持ちとともに、
「多くの人が何年もかけて勉強しても合格が難しい司法試験に、俺はあえて1年以内で受かってみたい」
という、「自分の力を誇示したい」というような(関西弁で言う)「いちびった」動機がなかったとは言えない。
でも、そんな「いちびった」動機を少しでも抱いた自分が恥ずかしくなるほど、周りの人々が温かく私の挑戦を応援してくれた。
私は短答式合格発表までは、周りの数人を除いて司法試験を受けることを言わなかった。
H学園のバイト仲間に対してもそう。
「がりがり勉強している」姿なんてさらしたくないという変なプライドによるものだった(今思うとつまらないが)。
しかし、短答式合格したとき、H学園の職員さんやバイト仲間にも、
短答を合格して7月に司法試験論述式を受ける
ことを言った。
それは、もはや「プライド」や外見の問題ではなく、必要な時にはバイトを休まなければならないし、私が論述式を控えていることを知らずに仕事を振られても断らなければならないということから、ちゃんと皆さんに分かってもらった方が良い、と思ったからだ。
そうしたら、ほとんどの人が私を温かく応援してくれた。
授業への講師を配置する係の、H学園の事務員さんは、私に対して、京都エリア中心のシフトを組んでくれた。
他のバイト仲間は、私の担当授業の中で、司法試験直前期にそれをやるのはキツい部分について交替してくれた。逆に、比較的楽な授業(教室、学年、クラス)を私に譲ってくれて、私の収入が減らないように配慮してくれた。
他校で司法試験を目指すバイト仲間は、その学校で出回っている各種予備校の「直前予想問題」を私のためにコピーしてバッチリ用意してくれた。当時はコピーを取るのも1枚1枚。相当時間がかかるというのに。
みながこんなにも温かかったことに私は涙が出そうだった。
そんな周りの暖かさを受けてしまうと、「自分の力を誇示したい」ような「いちびった」気持ちは恥ずかしくて仕方なかった。
他人との比較なんてもう何の関係もない。
私は今やるべきことをやって、恩に報いる。
そしてみんなに良い報告と、御礼を言って回る。
ただそれだけ。
そして、いつか、私も人に受けたそんな「暖かさ」「恩」を返せる人間になろう…
「がんばっている」人が居たら、やっかんだりせず、素直に応援できる人間になろう…
さて、6月が終わり7月に入ったころ、商法・刑事訴訟法は比較的順調に勉強が進んだ。
どうしても1回目の勉強なので、詰めが甘い部分はたくさんあるものの、大枠は理解できたし、論述問題もある程度対応できるようになった。
しかし、7月に入っていよいよ、この戦いの無謀さが露呈する。
憲法・民法・刑法。
憲法は「理念」の法だ。「骨太」な理解があれば論述式もある程度は対応できる。
一方、民法・刑法は「論述式」合格に求められるレベルが高い。
短答式レベルでは全く太刀打ちできない。
だが、「論述式」対策を行う時間は全く残されていなかった。
民法・刑法は、各予備校の「直前答練」「直前予想問題」で出題されたテーマだけを勉強することになった。
そして、そのテーマも、もはや基本書や基本的なテキストに立ち返って、ちゃんとした理解をする勉強をやる時間的余裕は残されていなかった。
ひたすら「模範答案」を見て、その論理構成や言い回しを覚えることがせいぜいだった。
実は、これは「邪道」だ。
私が「中編」で述べた、「基礎」「基本」の徹底、「腹に落ちる」感覚、「条文」「法の趣旨」からの論理的思考を心掛けるという「正しい道」ではない。
常識的な時間があれば、「正しい道」が実は最短距離だ。だが、その最短の時間さえもない今、「邪道」でもなんでも乗り切るしかなかった。
そして、「邪道」を使っても、私はそれに「飲まれない」と思っていた。
「邪道」の力は借りるが、本番では、ちゃんと私は、自分の信じる正しい道を信じて戦える、と思っていた。
だが、これが最後の最後、とんでもないしっぺ返しとなって私に返ってくることになる…
「国際私法」については、予備校の「まとめテキスト」を使って2週間で勉強した。
しかし、こちらは2週間といえども、また「まとめテキスト」といえども、この法律分野の「考え方」は比較的シンプルで理解しやすかった。
2週間ほど詰めてやれば、過去問を見ても解けそうな感じになった。
そして、ついに、7月20日過ぎ、論述試験本番を迎える。
仕上がり具合は、
商法・刑事訴訟法 何とかなる
国際私法 自信あり
憲法 憲法と私は相性が良い、何とかなる
民法・刑法 ハッキリ言って爆弾だ、とにかく「しのぐ」、集中力・思考力と「要領」
といった状態だ。
弱い科目が2科目もあればもう大変だが、ここまできたら気合いだ。
(続く)↓
http://h-m-d.blog.so-net.ne.jp/2017-03-01
神戸シーサイド法律事務所 弁護士 村上英樹
「序章」はこちら http://h-m-d.blog.so-net.ne.jp/2017-02-22
「短答試験」はこちら http://h-m-d.blog.so-net.ne.jp/2017-02-23
5月短答式試験に合格した。
これは、競馬で言えば、後方から追い上げて直線で並び、綺麗に「差し」切ったという会心の展開ともいえた。
しかし、続く7月論述試験になると、ライバルとなる受験生のレベルは格段に上がる上に、さらに、科目・試験内容への対応、時間的余裕、その全てにおいて厳しい条件にさらされることになった。
論述試験は、
憲法
民法
刑法
商法
民事訴訟法、刑事訴訟法から1つ。
選択科目(選択しなかった「訴訟法」でもいいし、他の法律科目でもいい)
の6科目だ。
そして、この6科目のうちで1科目でも「悪い」科目があれば不合格だ。
もっといえば、6科目×2問=12問の論述問題のうち、「不合格」答案が一つでもあればほとんど望みはなくなる。
別に大ジャンプは要らないが、12個のハードルを1つも倒してはならないハードル走、というイメージの試験だ。
今年受ける以上は今年受かりたい。
そして、それが可能な選択は、短期間で準備可能な科目選択だ。
先輩の情報などを総合して、選択科目を、
刑事訴訟法
国際私法
に決めた。
国際私法というのは、国際間でトラブルが起こったとき(たとえば、日本企業とカリフォルニア州企業との間で、アフリカの土地をめぐってトラブルになったとき)、どこの法律(日本法、カリフォルニア州法、アフリカ法)を適用するか?を決める法律だ。
国際私法は、条文の数が少ない、そして、「理屈」で考えて答えを出す、つまり「暗記」よりも「論理」によって対応な科目だった。
これなら短期間で対応できる気がした。
短答式合格から論述式試験当日まで2か月弱。
ほとんどまだ見ぬ法律
商法
刑事訴訟法
国際私法
これをどう攻略するか。
私が入門講座を受講したLECの講師(伊藤真氏ではない講師)に相談してみた。
「ふーん、そうか。
今年から入門講座を受けて、短答式に受かっちゃった、と。
それでどうしましょう?と。
ともかく、その短期間で短答式に合格したということは、法律という分野にキミの頭の使い方がよく合っている、ということだろう。
たまにそういう人がいるよ。
向いているから、このまま努力を続ければきっと短期合格できるだろう。
あ、そうか。
今年合格したいんだったね。
そうすると、何といっても時間が限られている。
憲民刑は入門レベルとはいえ一通り勉強したわけだから、まったく歯が立たないわけではない。
しかし、商法・刑事訴訟法を知識ゼロでは当然歯が立たない。
とにかく、商法・刑事訴訟法についてLECの『論文基礎力講座』(註 略して『ロンキソ』と呼ばれていた)を受講するのがいい。
『国際私法』はよくわからない。自分で何か考えて乗り切ってね。
あ、そうそう、『ロンキソ』受講といっても、当然普通に受講する時間はないから、通信講座を申し込みなさい。全巻のテープがもらえるから、なんとか当日までになるべく全体をカバーできるようにがんばってみなさい。」
大変有益なアドバイスだ。
言われたとおり、商法・刑事訴訟法は、LECの講座テープで勉強することにした。
にしても、金がかかる…
言われた講座テープを買うのにH学園のバイト代全部つぎ込んだし、試験までもやっぱりバイトは休めない…
それと並行して、どこかの予備校(たぶん、上で書いた「辰巳」)の
「論文直前答練」(答練とは「答案練習会」の略で、昔の司法試験で、論述式試験の練習のことだ。模試のような感じで、採点者が点数をつけていた。また、優秀者の答案は見本として受講者に配布されるなどした。)
を受講した。
これはもう大苦戦だった。
商法・刑訴法知識ゼロからのスタート、憲法・民法・刑法とも「短答」までのレベル。
制限時間の中で、「試験用六法」の条文を引いて、そこから自分なりに解釈を考えてみるが、受験生ならだれでも知っている「判例」も知らないし、とにかく、気の遠くなるような力の差を感じるばかりだった。
また、このころは予備校の自習室で勉強する日が多かった。自習室の外の喫煙所なんかは特に、先輩受験生たちの何だか凄い雰囲気や貫禄を感じる場所だった。何が、と言葉で表現するのは難しい。いつ明けるとも知れぬ戦いの中に生きる人だけが持っている空気、みたいなものが煙とともに充満していた。
そうした中、まず私は「商法」の本格的な勉強を中心に行った。
そのとき気づくのだが、「商法」はとにかく範囲が広い。
条文も多い。
商行為など
会社法(会社にも色々… 当時でも株式会社、有限会社、合名会社、合資会社…)
手形・小切手法
また、「貸借対照表」「計算書類」云々…学生には馴染みのない言葉だらけ。
イメージも湧きにくい。
どんなに最速でやったとしても、「商法」は試験科目の中で一番時間がかかる。
論述に向けて「商法」の勉強を始めたときに、ここではじめて、絶望的な気持ちになった。
1ヶ月では無理だ。普通に考えて。
でも、残された時間は2ヶ月弱。
「商法」「刑事訴訟法」をあわせて1ヶ月と2週で無理矢理終える。
「国際私法」は最後の1~2週間で何とかする。
このペースは、今考えても無茶だ。
ただ、勝ち目を考えたとき、せっかく「論述」対策レベルまでやることになる(というか、「商法」「刑事訴訟法」は短答式がないので、本格的に勉強すれば「論述」対策になる)科目で、予備校のテキスト・講座テープが得られる2科目はなるべく丁寧に仕上げて、得点源にしたい、と思った。
「国際私法」は、法律の趣旨・理屈から「考える」科目だという先輩受験生の言葉を信じて、直前の追い込みと自分の「当日力」に全てを賭けることにした。
このような計画で勉強を進めた。
この論述試験のときに、私は人々の温かさをすごく感じることになる。
私が3回生での司法試験受験をしようとしたのは、
一番パワーのある20歳の今、アクセルを目一杯踏み込んでみたい
という気持ちだ。
だが、その気持ちとともに、
「多くの人が何年もかけて勉強しても合格が難しい司法試験に、俺はあえて1年以内で受かってみたい」
という、「自分の力を誇示したい」というような(関西弁で言う)「いちびった」動機がなかったとは言えない。
でも、そんな「いちびった」動機を少しでも抱いた自分が恥ずかしくなるほど、周りの人々が温かく私の挑戦を応援してくれた。
私は短答式合格発表までは、周りの数人を除いて司法試験を受けることを言わなかった。
H学園のバイト仲間に対してもそう。
「がりがり勉強している」姿なんてさらしたくないという変なプライドによるものだった(今思うとつまらないが)。
しかし、短答式合格したとき、H学園の職員さんやバイト仲間にも、
短答を合格して7月に司法試験論述式を受ける
ことを言った。
それは、もはや「プライド」や外見の問題ではなく、必要な時にはバイトを休まなければならないし、私が論述式を控えていることを知らずに仕事を振られても断らなければならないということから、ちゃんと皆さんに分かってもらった方が良い、と思ったからだ。
そうしたら、ほとんどの人が私を温かく応援してくれた。
授業への講師を配置する係の、H学園の事務員さんは、私に対して、京都エリア中心のシフトを組んでくれた。
他のバイト仲間は、私の担当授業の中で、司法試験直前期にそれをやるのはキツい部分について交替してくれた。逆に、比較的楽な授業(教室、学年、クラス)を私に譲ってくれて、私の収入が減らないように配慮してくれた。
他校で司法試験を目指すバイト仲間は、その学校で出回っている各種予備校の「直前予想問題」を私のためにコピーしてバッチリ用意してくれた。当時はコピーを取るのも1枚1枚。相当時間がかかるというのに。
みながこんなにも温かかったことに私は涙が出そうだった。
そんな周りの暖かさを受けてしまうと、「自分の力を誇示したい」ような「いちびった」気持ちは恥ずかしくて仕方なかった。
他人との比較なんてもう何の関係もない。
私は今やるべきことをやって、恩に報いる。
そしてみんなに良い報告と、御礼を言って回る。
ただそれだけ。
そして、いつか、私も人に受けたそんな「暖かさ」「恩」を返せる人間になろう…
「がんばっている」人が居たら、やっかんだりせず、素直に応援できる人間になろう…
さて、6月が終わり7月に入ったころ、商法・刑事訴訟法は比較的順調に勉強が進んだ。
どうしても1回目の勉強なので、詰めが甘い部分はたくさんあるものの、大枠は理解できたし、論述問題もある程度対応できるようになった。
しかし、7月に入っていよいよ、この戦いの無謀さが露呈する。
憲法・民法・刑法。
憲法は「理念」の法だ。「骨太」な理解があれば論述式もある程度は対応できる。
一方、民法・刑法は「論述式」合格に求められるレベルが高い。
短答式レベルでは全く太刀打ちできない。
だが、「論述式」対策を行う時間は全く残されていなかった。
民法・刑法は、各予備校の「直前答練」「直前予想問題」で出題されたテーマだけを勉強することになった。
そして、そのテーマも、もはや基本書や基本的なテキストに立ち返って、ちゃんとした理解をする勉強をやる時間的余裕は残されていなかった。
ひたすら「模範答案」を見て、その論理構成や言い回しを覚えることがせいぜいだった。
実は、これは「邪道」だ。
私が「中編」で述べた、「基礎」「基本」の徹底、「腹に落ちる」感覚、「条文」「法の趣旨」からの論理的思考を心掛けるという「正しい道」ではない。
常識的な時間があれば、「正しい道」が実は最短距離だ。だが、その最短の時間さえもない今、「邪道」でもなんでも乗り切るしかなかった。
そして、「邪道」を使っても、私はそれに「飲まれない」と思っていた。
「邪道」の力は借りるが、本番では、ちゃんと私は、自分の信じる正しい道を信じて戦える、と思っていた。
だが、これが最後の最後、とんでもないしっぺ返しとなって私に返ってくることになる…
「国際私法」については、予備校の「まとめテキスト」を使って2週間で勉強した。
しかし、こちらは2週間といえども、また「まとめテキスト」といえども、この法律分野の「考え方」は比較的シンプルで理解しやすかった。
2週間ほど詰めてやれば、過去問を見ても解けそうな感じになった。
そして、ついに、7月20日過ぎ、論述試験本番を迎える。
仕上がり具合は、
商法・刑事訴訟法 何とかなる
国際私法 自信あり
憲法 憲法と私は相性が良い、何とかなる
民法・刑法 ハッキリ言って爆弾だ、とにかく「しのぐ」、集中力・思考力と「要領」
といった状態だ。
弱い科目が2科目もあればもう大変だが、ここまできたら気合いだ。
(続く)↓
http://h-m-d.blog.so-net.ne.jp/2017-03-01
神戸シーサイド法律事務所 弁護士 村上英樹
2017-02-28 20:01
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